「オーガニックコットン使用というだけ」では高く売れなくなる未来
2021年8月30日 トレンド 0
どんな商品を開発しようとも、必ず後発企業から「他社より安く売る」という手法が持ち込まれる。
これは防ぎようがない。
逆に同業者同士で最低価格を決めてみてはどうか?という意見を目にすることがあるが、これを「談合」という。
ゼネコンの「談合」については怒りをあらわにする方も多いが、衣料品や繊維なら「談合」はOKだ、というのもダブルスタンダードでしかない。
建設の談合は悪で、衣料品は善だというのはどういう理屈だろうか。
これこそまさに
他人がやれば不倫だが、自分がやるとロマンス
でしかない。
衣料品の場合でいうと、原料とか仕様とかで差別化を図り、粗利益額を増やそうという試みがある。またそこに「エコ(めんどくさいのでサステナ、エシカルも含む)の看板で値打ちを出そう」という試みも数多くある。逆に数多くありすぎて、当方は目にするのも飽き飽きしてきた。
そんな打ち出しの一つに「オーガニックコットン」がある。
無農薬・化学肥料無しで栽培された綿花のことである。通常の解釈では、綿花に限らず農作物は、無農薬・化学肥料無しで栽培するのは非常な手間となるため、コストが高くなり、その分売価も高くなってしまう。
当然、綿花も手間暇がかかるので高額になりやすいと考えられている。
そのため、高イメージ・高単価のブランドが使用する傾向が多い。
その一方で、比較的低価格ゾーンにある無印良品がこれまで990~2990円くらいの価格帯でオーガニックコットンを使い続けてきた。
これについては、綿花栽培を趣味的にやっている国内業界人(本職は紡績や生地ではない人たち)から反発もあったが、今のところはあまり大勢に影響はない。
近年「エコ」を旗印に掲げて、ドンドンと訳の分からない新ブランドが生まれている。新ブランドがドンドン生まれることはある意味で業界の活性化につながる部分もあるので、一概に否定はしないが、「エコ」「エコ」言いながら、売れるか売れないかわからない新ブランドをドンドン生み出すことが果たして「エコ」なのかという疑問は残る。
で、これら「エコ」ブランドの中には、オーガニックコットン使用というものも多い。
希少性のあるオーガニックコットンを使用しているから、高単価にならざるを得ないのだという理論で成り立っている。
無印良品はあるものの、まあ、そこは何となく客層が違うようにも感じられるので無問題なのだろう。
しかし、もうそろそろ「オーガニックコットン」というだけでは高価格は望めなくなるかもしれない。
とっくにご存知の方も多いと思うが、ジーユーがオーガニックコットン100%のTシャツを定価690円(税込み)で発売している。何が言いたいのかというと、ジーユーに限らず、低価格品を開発するのは当然であるということと、もうそろそろ「オーガニックコットンというだけ」では高価格の理由にはならなくなるということである。
GU公式 | スタイルオーガニックコットンT(半袖) | ファッション通販サイト (gu-global.com)
過去にも「〇〇製生地だから高価格」とか「〇〇産の〇〇だから高価格」という売り方が国内ではいくつもあったが、生地や糸、仕様の希少性だけでは高価格は維持しにくい。いずれ、必ずそれを使った低価格品が大手から発売されるからである。
糸や生地、仕様だけに頼るのではなく、ブランド政策というものが必要とされる。逆にブランド政策に成功すれば極言すると、塩化ビニールのバッグでも十万円で売れるようになる。
まあ、でもオーガニックコットンをどうやればこんなに安くできるのか?という疑問はあるだろう。
それゆえに「陰謀論」的な疑問を呈する人がいる。
オーガニックコットン使用を値打ちとする某ブランドの売り文句である。
綿花の総量が2700万トンだとしており、オーガニックコットンはそのうちの0・9%としている。そうするとオーガニックコットンの総量は24万3000トンということになる。
ここで、いつもの山本晴邦氏からの指摘があった。まことにありがたい。
山本氏によると、Tシャツ1枚あたり250グラムのオーガニックコットンを使用すると仮定すると、6億枚のTシャツが作れる計算になる。
計算式は「24万3000トン÷250グラム」である。
もちろん、実際は24万3000トンすべてをTシャツにするわけではないから、Tシャツに使用できる量はもっと少ない。しかし、大手資本なら10万枚とか100万枚は作れるだろう。
となると、ジーユーが690円で販売することも可能だということになる。
また、以前にもこのブログでご紹介したが、インドでオーガニックコットン認証の大規模な不正があった。米国産オーガニックコットンは、ブランドと契約を結んでいるので高値でそのブランドと取引がなされるが、インド産は契約を結ばず栽培されている「野良」状態のものが多いという。当然、野良なら、安くでも売ろうとするし、安く買おうとする業者もいる。おまけに、これまで見逃されていた不正認証されたオーガニックコットンは当然、安く売られただろうと考えられる。
そうなると、理論上、低価格でオーガニックコットンTシャツを製造・販売することは可能だということになる。
ジーユーの690円はさすがに難しいとしても無印良品の1990円とか2990円なら可能になるだろう。
「オーガニックコットン使用」という打ち出しはあっても構わないが、それだけで高価格で売れることは今後難しくなるだろう。また、ジーユーのような超低価格品も珍しくなくなるだろう。
低価格品と差別化して売りたければ、「オーガニックコットン使用」だけにとどまらない「ブランド政策」が今後は必要不可欠になることは間違いない。
またオーガニックコットン以外の「希少素材」もいずれはコモディティ化してしまうだろうから、同様である。
いやはや、モノを売るというのは何とも難しいことである。
西川のオーガニックコットンタオルをどうぞ~