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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズは数あるカジュアルパンツの中の1種類という位置づけになったという話

2021年8月6日 ジーンズ 1

またジーンズの話でもしようと思う。

今年51歳の中老の若い頃、20代・30代頃というのは、メンズのカジュアルパンツといえばジーンズくらいしかなかった。

チノパンもあったが、正直なところベージュのチノパンが似合っているという男性は少なく、当時のドラマや映画、漫画などの登場人物でもベージュのチノパンを穿いているキャラクターはあまりカッコよくないのが多かった。

またベージュのズボンというのは、よほどに容貌・容姿・体型・雰囲気に恵まれた男性でないと似合わないと今でも思っている。

そんなわけで大学卒業後の20代~40歳くらいまでほとんどジーンズを穿いて過ごしてきたのだが、スキニージーンズブームが終わる2015年ころから徐々に着用回数が減ってきた。目に見えて着用回数が減ったのは2017年以降である。

正直20数年間もジーンズを穿いてきて「飽きた」というところもあるが、それよりも、ジーンズ以上に穿いていて快適なカジュアルパンツが増えたという理由もある。そして、当方の加齢もあって快適さを好むようになったことも大きい。

ストレッチ混のスキニーやスリムストレートはまだしも、綿100%のレギュラーストレートジーンズを穿くのは今の当方にとっては耐え難い苦痛である。

綿100%デニム生地ならワイドかワイドテイパードでないと穿く気がしない。

さらにいえば、夏の酷暑にデニム生地を穿くのは不快なので、夏にジーンズを穿くことはなくなった。

春・秋・冬にはジーンズを今でも穿くが、他の様々なカジュアルパンツの中の1種類として着用する感じになった。恐らく、ほとんどの成人男性がジーンズ=カジュアルパンツの中の1種類という着用法なのではないかと思う。

 

そして、OEM・ODMの業界インフラが過剰に整っているため、どんなド素人ブランドでもそれなりのジーンズを企画製造できるようになったため、2000年頃までのように大手ジーンズ専業メーカーとそれ以外のブランドの商品格差もほとんど無くなってしまった。

例えば、某大手国内洗い加工場では、大手専業メーカーの仕事は激減したが、レディースブランドや他のSPAブランドなどからの受注で売上高自体は変わっていないという。

洗い加工という点だけで切り取ってみても、かつての専業メーカーと同じ工場でレディースブランドやSPAブランドも加工を施されるようになっているわけだから、見映えも変わらない。

となると、消費者は何も専業メーカーの商品だけを買う必要はないということになる。

これらのことを総合的に考えると、2000年代中頃までのように、大手専業ジーンズメーカーがジーンズという商品市場を独占することは難しいし、ジーンズという商品がかつてほどに着用者数を回復させることも難しいだろうと思う。

 

先日、興味深いインタビュー記事が掲載された。

 

取材拒否のブランド「シオタ」に聞く、成功のヒント | WWDJAPAN

 

正直なところ、この見出しは個人的には好みではない。クリック数・PV数稼ぎの「煽り」に見えるからだ。

それはさておき。

 

荒澤:はき心地の良さに尽きる。僕はビンテージ「リーバイス(LEVI’S)」のコレクターでもあるのだが、35歳ぐらいからごわごわしたジーンズをはくのがつらくなった。それはユーザーも同じだと思う。

 

という箇所があり、興味深かった。

 

いわゆるオリジナルジーンズを企画製造するようなジーンズコレクターでさえ、35歳ぐらいからジーンズを穿くのがつらくなってきたと語っており、まったく当方の感じていたことと同じである。

現在、かつての大手専業メーカーで規模感を何とか維持できているのは、エドウインとリーバイスくらいだが、この2社が今後どれほど起死回生の妙手を思いついたところで、「ジーンズ」を主体とする限りにおいては、かつての売り上げ規模を取り戻すことは、上記のような様々な理由からあり得ないだろうと思う。

 

この記事で触れられているブランドは、いわゆる高価格帯だと思う(もっと高い服を買っているお金持ちの感覚は知らないが)が、低価格帯ではないジーンズを企画製造販売して達成できる売り上げ規模というのは数十億円が限界ではないかと当方は思っている。

 

荒澤:「シオタ」の売り上げは小売価格で7億円を突破し、黒字化もできている。当面、20億円を目標とするが、それ以上だと僕の目の届かない商品が増えてしまい、それは「シオタ」の目指すものではない。

 

と語っており、当方も20億円、極大化しても50億円くらいがこの手のブランドの到達点だと思う。

 

そして、2万円とか3万円という服を企画製造販売するブランドの国内市場規模はジーンズに限らず同様だと思っている。

現在の日本の環境を考えると20億~50億円という売り上げ規模が限界到達点だろう。これを越えるにはよほどの資金力やプロモーション力が必要となり、それはまた衣料品のデザインや品質の良さなどとは別次元の要素となる。厳しくいえば、20億円への到達ですら、商品の出来栄えの良し悪し以外の要素が強く必要とされる。この「シオタ」ですら7億円である。

また、価格帯や商品は全く異なるが、クラウドファンディングで1敗くらいしかしておらず、あれほど手広くカジュアル・ワーキング・バイクと手広くやっているBMCでさえ4億円とか5億円くらいの売り上げ規模しかない。

恐らく10億円を突破するのでさえ、今の国内環境では、商品の出来栄えの良し悪し以外の要素が多分に求められていると考えた方が賢明だろう。

 

現在、SNS上でも様々な人々が新しい衣料品ブランドを立ち上げて挑戦しておられるさまが見えるが、衣料品ビジネスというのはそれほどに規模拡大しにくいものであると認識して取り組まれる必要がある、と思って当方は外野から眺めている。

 

サイズによっては値下がりしている501をどうぞ~

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 comment
  • hitonotameni より: 2021/11/14(日) 5:52 AM

    ユニクロのEZストレッチパンツの履き心地を知って以降、
    ジーンズを履かなくなりました。クールヴィズ普及のお陰で
    ユニクロのパンツは会社でも履ける職場もありますが、
    ジーンズはクールヴィズ対象外で履けないことが多いのです。
    オンでもオフでも着れる服と、オフしか着れないジーンズでは
    ジーンズが不利なのは必然ですよね。

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