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南充浩 オフィシャルブログ

目新しい要素がないと洋服は売れにくいという話

2021年8月4日 ユニクロ 0

我が国日本だけに限らず、成熟社会となれば、バブル期や高度経済成長期のように洋服がドンドン売れるということはなくなる。

何せ、来月着る服がないなんてことはよほどの特殊事例を除くとあり得ないからだ。昨年買った服を着れば過ごせるという人がほとんどだろう。

そうなると、「五適(適品・適量・適時・適価・適所)」の精度を高めたマーチャンダイジングが必要になり、それを立案・実行できるマーチャンダイザーが求められることとなる。

一方、自分も含めて、メディアで何かしらの記事を書いている人間に、マーチャンダイザーとしての勤務経験のある人間は少ない。特に「世間的に」著名なコンサルタントやアドバイザーには当方の知っている範囲内では、皆無だといえる。

もちろん、当方はマーチャンダイジングに関してはド素人であることは言うまでもない。

 

にもかかわらず、「世間的に有名な」コンサルタントやアドバイザー氏がマーチャンダイジングに関して発信することがこの5年間で急増しているように感じられる。(めんどくさいので統計は取っていない)

理由は高精度なマーチャンダイジングこそが、不良在庫を作り出さない現在の最適解であり、そこにカネのニオイが漂っているからだろうと思う。

 

さて、そんな「世間的に有名な」識者の論説の一つに

 

定番品を増やせば、越年しても売れるから値下げ比率が下がる

 

というものがある。

もちろん、定番品が単年ではなく、複数年で売れることについては異論がない。

だが「増やせばええねん」というのはあまりにも乱暴にすぎるし、そんな単純な問題ならとっくに解決できているだろうと思う。

個々のブランドによって比率は異なるが、一定比率の定番品は確かに必要である。

「去年買ったあれを再度買いたい」という人はどのブランドの顧客にも何割かは確実に存在する。

だが、定番品をやみくもに増やしても結局は売れ残りが増えるだけになるため、各ブランドは自ブランドのテイストや規模感、顧客層を徹底的に分析し、必要な定番品の比率を算出すべきである。

ブランドによっては1割で十分かもしれないし、他のブランドなら3割必要かもしれない。ここに「一律の正解値」は存在しない。

 

 

今春夏の国内ユニクロが今一つ伸び悩んでいる理由の一つに「目新しさがない」ことが挙げられる。

それは以前のブログでもご紹介したが、7月度の月次速報でも再び言及されていたようだ。

 

ユニクロ7月度は3カ月ぶりに前年並みに回復 気温上昇に助けられるも内容には課題 | WWDJAPAN

 

「(単価の高い外出着などで)目玉となるような売れ筋がない」という課題は続いている。

 

と記事内にはある。

結局のところ、「売れ筋は“ワイヤレスブラ”などのインナーやラウンジウエア、カットソートップス類」 という状況にあり、これはすなわち女性の肌着類といった日用品だけが売れている、ということになる。

恐らくはメンズでも同様に、肌着・靴下・ルームウェア(もしくはそれに流用できる物)が売れているという状況は同じだろうと、売り場を見ていて思う。

当方には、女性の外衣に仕事以外で興味を持つ趣味はないので、利用者目線でメンズのユニクロ衣料に限定して話を続けさせていただく。

 

以前にも書いたように今夏のユニクロのメンズ衣料には、目新しさは微塵も感じられない。

もともと、メンズの衣料は業界的に選択肢が少ない上に、夏用となるとさらに選択肢は狭まる。いや、提案しようと思えばできるが、提案したところで、日本の夏の暑さがネックになって売れないという可能性が高いから、安全パイと思われる衣料品の提案は、ユニクロに限らず増えてしまう。

例えば、欧州ブランドで提案されているような半袖サマーセーター。あんなものは気温35度前後にまで上昇する日本の真夏には暑くて着用できない。夏用ブルゾンとて同様だろう。よほどの高地とか、寒冷地でないと需要がない。

しかし、その前提を差し引いても、今夏のユニクロメンズ衣料は新提案が少ない。当方にはほとんど見えない。

そうなると、「わざわざ」買いたいとは思わない。

 

当方は基本的に衣装持ちである。たまに昨年と同じ物を買い替える・買い足すことはあるが、そんな物は2,3枚で済む。

Tシャツもポロシャツも捨てるほど持っている。ズボンもたくさん持っている。スキニーからワイドパンツまで豊富に持っているし、アンクル丈パンツも何本も持っている。

そうなると、なんらかの目新しい商品がなければユニクロで買う理由がない。

そしてこれはユニクロに限らず他のブランドでも同じである。

リーバイスの501だって3本くらい持っていたら、4本目は破れるとか縮んで穿けなくなったとかの理由以外では大概の人は買わない。

だから、新商品の投入が必要なのであり、やみくもに定番品を増やしたところで、その増やした分だけ定番品が不良在庫化してしまうだけに過ぎない。そしてその不良在庫化した定番品を何年もかけて売り減らすこととなる。

そして、旧ジーンズ専業大手メーカーやジーンズチェーン店の商況が悪化し、経営が破綻した理由はこれである。

 

定番品はどのブランドにとっても必要不可欠というのは前提だが、これを単に「増やせばええねん」というのは暴論に過ぎない。

国内ではほぼ無敵のユニクロだからこそ、目新しさがなくてもこの程度の伸び悩みで済んでいるのかもしれないが、他のブランドならさらに商況は悪化している可能性がある。

「定番品を増やせば不良在庫問題は解決する」というような言説に業界関係者が引っかからないことを切に願う。

 

 

夏用の目新しい服といえば電動ファン付き服しか思いつかない

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