自由主義経済体制ではバーゲンセールの規制はほとんど不可能に近い
2021年8月3日 お買い得品 1
もう何年も前からバーゲンセールの日程や割引率についての論争が喧しい。
三越伊勢丹の大西洋・元社長が「バーゲンセール後倒し」を提案した際、業界人には賛同と喝采が多かったことを記憶している。
しかし、当方は現実的には不可能だろうと見ていた。それは何度もこのブログで書いている。
理由は、冬と夏のバーゲンセールが1月の終わりから2月の終わり、8月中頃だった時代からすでに20年以上が経過している。現在の20代・30代前半はその時代のことなど全く知らない。知識としてはあるかもしれないが、体感としてない。
人間の記憶なんて曖昧なもので、たった数年経験しないだけですぐさま忘れ去られる。
横道に逸れるが、江戸幕府の元禄時代、赤穂浪士事件があったが、あの頃にはすでに戦国時代の戦作法は忘れ去られていたという。忘れ去られていたので「〇〇流軍学」が林立し、それらしい架空の作法が編み出されたわけである。
戦が仕事である武士でさえ、数十年経過すると戦作法すら忘れ去ってしまうということである。
例え現代であっても、アーカイブで昔の事例の知識を得ることはできても体感を得ることはできない。
20年以上が経過した時点で、いきなり「セール日程を後倒ししよう」と言ったところで、消費者の賛同は到底得られない。
さらにいえば、ユニクロやZARA、GAP、アダストリアなどの大手SPAブランドが大衆客を得てからすでにこれも20年くらいが過ぎている。
SPAブランドの特徴は、これまでの夏冬の年2回のバーゲンセールとは異なり、不良在庫を毎月値引きして販売するところにある。
もう毎月その都度値引きされることに大衆は慣れてしまっている。これを今更、覆せるはずもない。
また他の施設やブランドも、別にこれに賛同する必要もなく、先駆けて値下げすればその分売上高は稼げる可能性が強いから、行動を共にするはずもなかった。
結果的に立ち消えになったのは極めて当然だろう。
さて、このバーゲンセールの話題になると、いつもヨーロッパ、とくにフランスやイタリアのことが業界人から提示され、仏伊に比べて我が国日本は・・・・という謎の自虐日本サゲが始まる。
仏伊は、バーゲン開始日程と割引率の上限が法で決められており、それが順守されており、秩序あるバーゲンだというのが主な論である。
しかし、当方はそれを訝しく感じていた。
なぜなら、何国人であっても、値下げ販売に関しては売る側も買う側も同じだと考えられるからだ。
売る側からすれば、大幅値下げしてでも売り切って現金化したいし、買う側からすれば安くなればなるほど買いやすい。
日本人だけがガツガツしていて、仏伊人は高尚に秩序を順守するなんてことは到底考えられない。
だからこの言説はフィクションとは言わないが、かなり昔のことで、現在は状況や行動が異なっているのではないかと思っていた。
実際、セール日程後倒し論争の際、ネット通販にはその法律は適応されないから、早期値引き天国になっているという指摘もあった。
さて、今回、繊研新聞にこんな興味深い記事が掲載された。
フランス夏のセール 期待外れに終わる | 繊研新聞 (senken.co.jp)
6月末から4週間にわたりフランス全土で開催された公式セールは、ファッション小売店にとって期待外れな結果だった。パリ商工会議所(CCI)が300店を対象に実施した対面式調査によると、セール期間中の売り上げが例年を上回ったのは35%、ほぼ同じが20%、全体の55%が満足できない数字だったと答えた。
まあ、日本よりも酷いコロナ禍と長期間のロックダウンでフランスの消費も低迷しているということである。
さらに興味深いのが次以降である。
また同連盟は、セールは廃れた習慣になったと強調した。
とあるが、その理由はまとめである。
政府が決めた会期外でもセールとうたわなければ、プロモーション(販売促進企画)で割引販売できるのが現実だ。CCIの同調査では65%の小売店が5月の都市封鎖明けから、独自の企画でセールの前倒しを続けたことがわかった。小売りの現状、消費の変化も踏まえ、政府に対しセールの改革を求める声はさらに強まっている。
とのことである。
「セール」と謳わずに「プロモーション」といえば割引販売ができるのなら、そんな法律はザルである。在っても意味がない。
結局、日本であろうが、フランスであろうが、売れ残った不良在庫の服は値下げして叩き売って現金化しないと、店やメーカーは倒産してしまう。また消費者だって高い商品より安くなった方が買いやすい。
さらに言うなら、フランスだとZARAやH&Mなどの店舗が多いはずだから、大手SPAのその都度値下げにも消費者は慣れているだろうから、守旧的な夏冬のバーゲンまで待とうという気持ちなどさらさらないだろう。
そう考えると、法律によるバーゲンセール規制なんていうのは、最早形骸化しており、形骸化するのは当然に結果といえる。
これも含めてこれまでの「欧米ガー」という主張は、日本人の多くが欧米社会を体感していないことを良いことにして、随分と各識者がポジショントークをくりひろげてきたのではないかとさえ感じてしまう。
法律や業界同盟でバーゲンセールの開始日程や値下げ幅を規制するのは、実際不可能である。それをしたくないなら、値下げせずとも売り切れるようなブランド政策、商品開発、供給量を見極めてその精度を高めるほかない。
法規制とか業界同盟とか、消費者の自発的道徳心とか、そんな安易なものに期待するのは全くの無意味であるといえる。
大阪南港にあった基地みたいなアパレルメーカーは
ファミリーセールで少しでも現金化して ボーナスの足しにしたとか
このセールの時に がんばらなかった社員を社長は厳しくみていて
後の扱いに影響があったとも聞きました このアパレルあるのかな?
いずれにせよ 現金化するための理由があるので
バーゲンの後ろ倒しは不可能だったでしょうね
そもそも バーゲンのなったから買おう!って気分の世の中でもないですしね