MENU

南充浩 オフィシャルブログ

ファーストリテイリングへの大逆風が吹き始めたと感じているという話

2021年7月29日 ユニクロ 0

財務内容とか、決算分析とかは別として、久しぶりにファーストリテイリングに対してかなり強い逆風が吹き始めたと感じる。

ちょうど20年前の2000年ごろにもフリースブームの反動からくる大幅減な減収があったが、あの時に近いくらいの悪いムードを感じる。

もちろんあの当時とは財務内容とか商況とかは全く異なるし、「ムードを感じる」というくらいなのだから、当方の個人的な感想に過ぎないことは言うまでもない。だから、「そうではない」と感じる人がいても当然である。

今回はそんな個人的な感想である。

 

ユニクロとジーユーという国内市場において無敵の2Topを擁するファーストリテイリングの株価が11万500円という最高値を付けたのは今年3月2日のことだった。

昔から「亢龍悔いあり」と言われるように、頂点を極めるとあとは下がるのみである。

ちなみに当方がこの言葉を覚えたのは、かの名作「聖闘士星矢」のおかげである。ドラゴン紫龍の隠し奥義がその名も「廬山亢龍覇」だった。亢龍というのは天の頂点に達してしまった龍のことで、後は落ちるのみなので「悔いあり」というわけである。

漫画もいろいろと役に立つものである。

さて、これ以降、ファーストリテイリングの株価は下落し続けている。

もちろん、日によっては少し上がることもあるが、全体的には下がり基調が現在まで続いている。実に4カ月以上下がり続け、7月28日には年初来最安値を更新し73670円まで下がった。29日は少し上げているが、それでも74000円台をうろうろしている。

下落率でいえば4カ月強で約34%ほどということになる。

 

個人的には、最高値まで戻ることはほぼあり得ないと思って毎日チャートを眺めているし、戻るとしても相当時間がかかるだろうと思う。

この点が今までのファーストリテイリングに対する逆風とはだいぶと状況が異なっていると感じている。

 

とは言っても、資本力としてはまだまだ余力たっぷりだし、すぐさまどうこうなるということはないということを蛇足ながら付け加えておくが、暗転の始まりではないかと思っている。

 

次に大きいのが、ウイグル人虐待に端を発した新疆綿問題である。

インタビューを聞くと、ファーストリテイリング、良品計画、ニトリともトップは米中問題を甘く見ているように感じる。

米はそういうけど、14億人の市場(実際は貧困な農民戸籍が何億人もいるから14億ではないが)は魅力的で捨てられないでしょ?

と思っているのではないかと個人的には感じる。

 

しかし、以前の良品計画の売上高3兆円目標でも書いたように、欧米の中国潰しは本気だと底辺にいる当方からは見える。これまでのような甘さはない。

現に、オランダの半導体製造装置メーカーにも米国は中国との取引中止を求めている。

ファーストリテイリングの大黒柱であるユニクロの店舗数は、日本と中国が同じくらいか中国の方が多いくらいにまでなっている。だから、今更中国市場は捨てられない。これは良品計画とて同じだ。ユニクロも決して米国市場は順調ではないし、良品計画に至っては米国市場は一度手放している。

会社の売り上げ構成で言えば、米国市場は手放してもほとんど問題ないが、両社とも中国市場を今手放せば大打撃となる。

だが、米欧は中国への経済制裁の第二・第三の矢を放つだろうし、両社とも新疆綿問題(ウイグル人虐待問題)を放置したままでは欧米から何らかの制裁があると考えられ、うやむやに済ませることはほぼ不可能な状態にある。

ここもファーストリテイリングに不利な点である。

 

そして三つ目が、全国ニュースでも報道された自動レジの特許無効敗訴である。

この裁判はまだすべてが終わったわけではなく、相当長期化するとも伝えられているが、世間からの心象は良くない。カネなんて山ほどあるんだから気持ちよくアスタリスクに対して特許使用料を払えば良いと思うのだが。

 

四つ目が創業会長である柳井正氏の老齢化である。

彼は現在72歳である。平均寿命(男性80歳)から考えても、平均的な健康寿命から考えても先はそう長くない。もちろん平均を大きく越えて元気な人もいるが、例えば当方の父方の祖母は身体の大病はなく94歳まで生きたが、70歳くらいからボケて実生活においては使い物にならなかった。こういうことも起きうる。

また人間の寿命なんて、70歳を越えればいつ終わっても不思議ではないし、身体・頭脳の変調なんていつおかしくなっても不思議ではないから、そんな不確実な丁半博打みたいなものに立脚するのは論外である。

これほどの実力のある人も近いうちに必ず衰えるか死ぬかするから、引退すればその際、社内には多かれ少なかれ混乱は起きるだろうし、引退しなかったとしても老害化して混乱を引き起こす可能性も過去の事例から鑑みると低くはない。

2000年頃に危機を迎えた際、彼はまだ50代前半だった。50代前半と70代前半では、平均寿命から考えると手持ちの残り時間が大きく異なるから、その時と同じようなやり方、同じようなペースで立て直せることは不可能である。

 

このような点から、今回の暗転ムードは20年前とは比べ物にならないほどに大きいが、すぐさま潰れたり、分裂したり買収されたりということは絶対にあり得ないだろう。しかし、巨大帝国の「終わりの始まり」になりかねないと思っているという、極めて個人的な感想である。

 

 

名著「ローマ人の物語 終わりの始まり」をどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ