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南充浩 オフィシャルブログ

無印良品の男女兼用服を増やす試みはビッグサイズトレンド無しでは成り立ちにくい

2021年7月20日 商品比較 1

ちょっと依頼があって記事を書くために、久しぶりに無印良品でTシャツを2枚買った。

正確に言うと、Tシャツが1枚、半袖セーターが1枚だが、半袖セーターにはまたしても「ニットTシャツ」と書かれてある。

通常のTシャツに使われている生地は大きく分けて3種類。天竺、フライス、スムースだが、3つとも編み生地である。英語でいうとknitである。

Tシャツを含むカットソーはもとよりknitである。

と売り場で心の中で声を大にしてつぶやいておいた。

 

多分、無印良品で買い物をしたのは半年ぶりくらいではないかと思う。

いや、それ以上だろうか。もしかすると、昨年の夏に値下がりした商品を買ったっきりだろうか。それならほぼ1年ぶりである。

2年くらい前からその兆候はあったが、今回さらにその傾向が強まったのが、サイズ表記の区分がゆるいTシャツ類の品番が増えたことである。

今回の売り場で見た限りにおいては XS~S、S~M、L~XLという3区分サイズ表記のTシャツ類の品番が昨年、一昨年と比べて増えたと感じる。

たしか、少し前に無印良品は男女兼用アイテムを今後増やすという報道があったがそれの一環だろう。

 

無印良品が男女兼用のアパレルアイテム数を拡大 22年春夏には全体の50%へ (fashionsnap.com)

 

ぶっちゃけ全体構成比の50%も男女兼用サイズにするのは非常に危険ではないかと思っている。

左旋回したメディアは「ジェンダーがー」と説明していて、それは理由の一つだろうとは思うが、決して全てではない。そんなイデオロギーのみの視点で商品企画をするような大手企業はあり得ない。零細・ニッチブランドはまた別だが。

 

まず、考えられるのは、先の記事でも触れられているように

サイズリスクを減らす

ことだろう。

これが最も大きいのではないか。

サイズピッチが最もきつい商売は靴である。最近では1サイズとか無印良品の一部のTシャツのようにaboutな表記の商品もあるが、原則は5㎜刻みのサイズピッチである。

フィット感を求めれば求めるほど、サイズピッチは細かくなる。これは靴に限らず服も同様である。

靴が顕著だが、いくらよくできた商品でも、お買い得感がある商品でも5㎜小さい靴は履けないから売れない。ビジネスシューズやパンプスなどは5㎜大きくても売れない。

aboutサイズの履物というと、真面目に作るとするなら、サンダル系にならざるを得ない。

洋服とて同じで、洋服はよほどの往年のジュリアナ東京のような過度のボディコン以外は、5㎜の大小では着用できないということはない。しかし、通常のサイズ感であれば、3センチ変われば1サイズ変わってしまうから、フィット感を求められるとその3センチ差で売れなくなる。

about表記にすると、この売れ残る率が理論上は大きく減ることになる。

 

で、今回検証用に買ったのが

1、鹿の子編みビッグシルエットTシャツ(1490円に値下げ 定価1990円)

 

 

 

2、UVカット強撚ニットTシャツ (←ニットTシャツorz)(1990円で定価のまま)

 

 

 

 

 

である。

材質について述べておこう。鹿の子編みビッグ云々は綿100%の鹿の子編みだが、細番手の糸を使っているのか定番ポロシャツより生地は薄めでハリコシがある。あと、表面が通常鹿の子より滑らかに感じるので、コンパクトスピンかMVS糸を使ったのか、シルケット加工を施したのか、ではないかと思う。

次に問題の(笑)ニットTシャツだが、はっきりいうと、ポリエステル100%の半袖セーターである。ポリエステルをわざわざ強撚する必要があるのか?と疑問で仕方がないが、これ以上は当方ごときクソ素人には無理なので、いつもの山本晴邦氏に解析をお願いしてみた。

 

山本晴邦氏の解説によると

「ニット向けの糸は通常、撚りが甘いものが多いので『ニット向けフィラメントにしては強撚』であるという意味ではないか」

とのことだった。

正直な感想を言うと、生地の触感はそこまでシャリシャリでも硬くもないから、どこが強撚なのかと疑問だった。

もし、買いたいと思われる方がおられるなら、中肉より少し薄めの生地感の柔らかめの合繊半袖セーターを想像してもらうのが最も適切だと申し上げたい。

 

 

さてこの商品は両方とも例のaboutサイズである。当方はS~Mを買った。サイズスペックを見てみよう。

サイズスペックだけでシルエットや着心地を論じるのは愚の骨頂だが、大きさの参考程度にはなる。

 

鹿の子編みT S~M 肩幅53センチ 胸囲112センチ 胴囲112センチ

ニットT(笑)S~M 肩幅60センチ 胸囲122センチ 裾回り118センチ

 

という具合で、ニットT(笑)はかなりのビッグサイズである。鹿の子編みでさえ、当方がS~Mサイズで着られたのだが、ニットTはさらにそれよりも大きい。

さて、今回も長々と書いてきたが、何が言いたいのかというと、来春からの男女兼用アイテム増というのは、ビッグサイズ流行が前提でないと成り立たないのではないかということである。

男性と女性では平均身長、平均体重、平均体格が大きく異なる。これを兼用にするためには、基本的に「大は小を兼ねる」から「ダボダボ」でないと成立しない。

ということは現在のビッグサイズトレンドが長期間続く必要があるということになる。

しかし、トレンドというのは短ければ数年、長くても20~30年で変化する。長くても10年後、20年後には以前のようなジャストサイズトレンド、ピチピチトレンドが戻ってくる可能性がある。その時には「男女兼用服」なんていうのは一部の商材を除いては到底不可能である。

たしかに、女性服を着るくらい細い男性もいるし、男性服を着るくらい体格の良い女性や男性服を好む女性もいるが、無印良品がターゲットとすべきマス層ではない。

今回の男女兼用を増やす試み、aboutサイズ表記、というのは、ビッグサイズトレンドだからこそできるものだろう。

 

ジャストサイズトレンド、タイトサイズトレンドになると、マス向け衣料品ではこの企画は成り立ちにくい。

果たしてこのビッグサイズトレンドがいつまで続くのだろうか。それとも男女兼用が標準となり、ビッグサイズが半永久的に定番化するのか、そのあたりを興味深く見てみたい。

 

 

 comment
  • BOCONON より: 2021/07/20(火) 3:02 PM

    僕には「無印良品は服が(少なくとも紳士服は)さっぱり売れないので,デザイナーも何をどうデザインしたら良いのやら分からず困っている 」「迷走気味」という風にしか見えません。
    それも無理はなくて,もともとフツーの人は「ユニクロと大した違いはないのに高い」としか思わないようなたぐいの “ブランド” ですからね。何だか今回の記事の商品も無理やり違いを出して「似ているようでもユニクロなんかと一緒にするな」と主張しているかのようです。
    今季の商品だと「セットアップだけど素材が麻」とか「ビッグシルエット気味の麻のバンドカラー/スタンドカラーのシャツ」なんてのはまだ良い方ですが,こんなものを着たがる親中派がどこにいるんだか。
            ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/4550344325568

    こんな騒動も起こしているのだから尚更。
            ↓
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC13ADF0T10C21A4000000/

    男女兼用の服なんてものも,存在意義の分からない事上記と似たようなもの。どこに「男女兼用の服をぜひ着たい」なんて人間がいるのやら。しかも商品の半分をそっちに持って行こうだなんてあんまり正気の沙汰とは思えません。

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