計画未達だった今夏のユニクロとジーユーから学べる事跡
2021年7月19日 ユニクロ 3
言うまでもなく、当方はオッサンなので、あまりレディース服売り場をしげしげとは見ない。
まかり間違ってレディース服ブランドから仕事の依頼があればしげしげと見る。何せ業界紙記者時代はレディース下着の担当も2年くらいやっていたくらいである。
しかし、今はそんな仕事の依頼もなく、リサーチと趣味を兼ねて、売り場をざっと見渡したあとは、自分が着用できるメンズ服売り場で物色をする。
そういうスタンスのオッサンからすると、今春夏のユニクロとジーユーのメンズ服売り場はあまり良いとは言えなかった。
ユニクロのメンズ服は全く目新しい商品がない。
コラボもいつものユニクロUとアンダーソン、それから+Jである。レディースもそこにイネスが加わるだけで、新コラボとしてはレディースでは「マメ クロゴウチ」があったくらいである。
一方のジーユーだが、たしかに当方は590円に値下がりしたTシャツを買いまくったので、当方としては利用価値は高かった。
またコラボはミハラヤスヒロ、アンダーカバーというすごいものがあったが、メンズの春夏物、特に夏物はTシャツ一辺倒である上に、本体ラインのTシャツの品番数・型数が多すぎてカオスな状態となっており、どの品番もが中途半端に売れ残り(コラボラインは除外する)、結果として多くの品番が590円に値引きされるという悲劇を招いている。
これが当方の感想である。
そして、購買行動はというと、ユニクロではほとんど買わず、ジーユーでは590円に値下げされたTシャツ類を多数買うという動きになった。
ここまでユニクロを買わなかったシーズンは10年前までくらいだろう。
当方の感想はメンズ服のみだが、実際の商況にもそれは反映されたといえる。
ファストリ減速 国内・中国ユニクロ3〜5月が計画未達 | WWDJAPAN
ファーストリテイリングの2020年9月〜21年5月期連結業績(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比9.9%増の1兆6980億円、営業利益は同72.1%増の2278億円だった。前年春に多数の店舗を休業・営業時間短縮していた反動で大幅な増収増益となったが、3〜5月に限るとユニクロの国内・中国事業ともに計画未達。ジーユー事業も同様で、コロナ禍以降の絶好調からやや変調をきたしている。
とある。昨年の3月・4月のコロナ休業、5月前半の時短営業などの要因で、増収増益となっているが、計画には未達だった。また好調だったジーユーも同様である。
大苦戦、絶不調というわけではないが、期待されたほどの売れ行き、利益率ではなかったということになる。その原因なのだが、ほぼ当方の感想と同じである。
3〜5月の国内ユニクロ事業の既存店売上高は同31.1%増。昨年の反動で3〜4月は大きく伸ばしたが、5月は前年同月比0.6%減と12カ月ぶりに前年割れ。続く6月も同19.2%減と、大きく落とした。「商品の新しさやニュース性が不足していたことが要因。前年は緊急事態宣言明けにワンマイルウエアや“エアリズムマスク”などが売れたが、今年もその実績に引っ張られてしまい、お客さまから見て新しさが感じられない商品構成だった」
また
商品政策が不振だった点はジーユー事業もユニクロと同じ。ジーユーは「さまざまなトレンドを取り入れ過ぎて品番数が増えると共に、売れ残ってしまって値引きが必要となった」。これを受け、21年秋以降は改めてマストレンドに照準を絞り、品番を減らす。
とある。
ユニクロのメンズは昨年夏物とほとんど同じで、破損したから買い替える、同一商品をもう一枚買い足す以外の需要が見当たらないというのは同様である。
例えば、ズボンでいうと、スマートアンクルパンツ一辺倒で、すでに当方は5本くらい持っていて、買う必要がない。
黒、紺、グレー、オリーブグリーンあたりは持っていて、また穿かないけれど990円に値下がりしたベージュも持っている。となると、今年わざわざ買い足す物が見当たらない。
ポロシャツしかり、Tシャツしかり、である。
ジーユーはたしかにコラボはすごかった。入荷後3週間で大幅値引きをしてほぼ売り切ったが、これは販売としては「見せ球」ということになり、本来は、本体ラインを買ってもらいたかったのだろうと思う。
たしかにマストレンドのビッグシルエットアイテムは豊富にそろっているが、先にも述べたようにメンズはほとんどがTシャツばかりで、しかもそのTシャツの品番数がやたらと多い。
袖が短めの半袖Tシャツ、キーネック半袖Tシャツ、ルーズフィットTシャツ、5分袖Tシャツ、ドライ系Tシャツ数型、ドライダブルフェイスTシャツ、とこんなに半袖Tシャツばかりが必要なのだろうかと思うし、消費者も選択肢が多すぎてどれを選んでよいのかわからない。
また、こだわらない消費者なら、「黒の半袖Tシャツなら何でもいいねん」ということで、どの品番にでも黒はあるから、急いで定価で買う必要がない。
そうすると、定番の黒でさえ、売れ残るから990円に値下がりし、少し待つと翌週には790円、590円に値下がりしてしまってそこで買えばいいということになる。
今回のユニクロの結果から考えなくてはならないのは、
「定番を増やせば、複数年売れるから大丈夫」
という論調が正しいのかどうか?ということである。ユニクロのこの作戦は失敗したとは言えないが、成功したとも言えない。個人的には、今夏ほど定番ばかり作れば、買う物がないと思われるのは当然で、それは他のブランドでも同じである。何割かは新しい品番がないと、飽きられてしまうと考えるべきだと思う。
ジーユーの結果から考えられることは、
「同じアイテムで品番数を増やしすぎると選択肢が広がって喜ばれると考えがちだが、実はどの品番も売り切れることがなくてすべてを値下げする羽目になる」
ということである。
定番ガーの人々にも、品番数を増やしたがる人々にも、わかりやすい事例が示されたといえるだろう。
comment
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BOCONON より: 2021/07/19(月) 9:19 PM
単にダサいから売れなかっただけじゃありませんか? たとえばユニクロのTシャツのデザイン,今年はひどかった。こんなもの,ちゃんと見た上で OK 出したのなら,村上春樹ももうおしまいですね。
↓
https://www.uniqlo.com/jp/ja/spl/ut-graphic-tees/haruki-murakami-murakami-radio/men数年前のエレキギターメーカー Fender のTシャツは出来が良くて僕も数枚買いましたが,今年の Gibson Tシャツはどれも実につまらないデザインのものばかりでガッカリ。
ルーヴル美術館Tシャツも要らんデザインするからダサくなってしまうのだ…と自分で気がつかないのか知らん。
毎年好評だった(僕も買っていた)浮世絵Tシャツも,今年は余計な英文字など入れたせいで何だか中学生好きのする見た目になってしまって買うものなしでした。
GU のコラボTシャツに至っては,こんな人たちにさえバカにされる始末で。
↓
http://apasoku.doorblog.jp/archives/58260367.html南さんはたぶん無地のものを買ったのでしょう(と思いたい)から,まあよろしかろうと存じますが。
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くぼちhkb より: 2021/07/21(水) 5:49 PM
こむつかしいことを考えていない消費者も、なるほど、という一文でしたよ。だから今年は買わなかったのだなと、納得出来ました。今日もドットエスティから半額だ、2000円以下だと流れてきていて楽しんでいます。
今日の記事を読んで思い出したのが、このブログ記事でした。
https://sibu2.com/choice-three/
自分は、ものは少ないけどガチの人ほどではない…ミニマリストに片足突っ込んでるような人間です。
そんな考え方がミニマリストに近い自分が言うのもどうかと思いますが、選択肢が多すぎるのはむしろデメリットだ、と思ってます。
これ以外の例でいうと、プレゼンの基礎でよく「ポイントは3つに絞れ」という話があったり、昔ソフトバンクが広告で「A案か?B案か?」みたいなの出してたのも、似たような理由だと思います。
結局、多すぎると人は選ぶのを躊躇するようになってしまうということですよね。
今シーズンのユニクロは自分も見てましたが、自分の場合は「こういうものが欲しい」という明確に基準があったので、買う買わないの決断は早かったです。
※JW ANDERSONのステッチ入りポケットTとユニクロUのハーフパンツだけ買いました
でも、今日の記事を読んで「基準がない人は買うのに迷うし、結局買わないってこともありそうだな」と感じました。