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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品業界とマス層の感覚の違い

2021年7月6日 トレンド 6

着こなしがオシャレかどうかというのは、非常に難しいと感じる。

モデルさんやタレントさんの着用画像に惹かれて、試着してみたのはいいが、全く似合っていないということが皆さんもよくあるのではないかと思う。もちろん、当方はそんなことの連続である。

あれ?着用画像はもっとカッコいいんだけどなあ?

と疑問に思うが、よくよく考えてみると、自分自身がカッコヨクなかったという事実に行き当たる。(笑)

 

着こなしにある程度の法則性は当てはまると思うが、すべての人に対して必ず当てはまるものでもない。この辺りは顔立ち、体格、体型、雰囲気などに大きく左右されるため、極めて属人的要素が強い。

あと、大きい部分にファッション業界の「業界標準」とマス層の感覚はけっこうかけ離れているということが挙げられる。

業界にいると、隣近所全てそういう感覚で服を着ているから、慣れてしまう。これが「業界標準」である。

それは悪いことでは決してないが、業界外のマスにその感覚は理解されにくいことがほとんどといえる。

 

今から5年くらい前だろうか。

今のようにビッグシルエットはほとんど出ておらず、まだディオールオムのタイトシルエット全盛の名残があったころである。

同年配の繊維業の社長さんがいた。超美男子ではないし、中肉中背だが決してモデル体型ではない。しかし、イタリアンテイストの服装が良く似合っており、一目で業界人だとわかる方だった。使い古された言葉でいうなら「おしゃれ」な人だった。

当方の場合、だいたいがユニクロの値下げ品かライトオンの値下げ品が当時多かったのだが、この社長さんはちゃんとしたブランドの物を着用されていた。

ある日、シャツにピンク色のスラックスを合わせて登場されたことがあった。

その時の画像はわざわざ撮影していないので、それっぽいイメージ画像をお借りすると、こんな感じである。

 

https://kurumani.com/?p=4564

 

このコーディネイトはどうだろうか。あくまでも5年くらい前だと当方は非常にオシャレだと思うし、社長さんも上手く着こなしておられた。

もちろん、顔立ちがもっと竹野内豊みたいで、身長が180センチくらいあれば言うことはないが、しかし、そんな人は少数派だから望むべくもない。一般人としては相当に上手く着こなしておられるようにしか見えなかった。

ところが、話してみると、自宅では非常に不評なのだという。

地元は大阪府南部なのだが、このスラックスを穿くと奥様から

 

「そんなおかしな服装で近所を歩かないでほしい。近所で恥ずかしい」

 

とまで言われるとのことだった。

ついでに言うと、この奥様にも何度かお目にかかったことがあり、コンサバテイストだが非常にオシャレな方である。

そんな奥様でさえ、ピンク色のスラックスにはここまで厳しいことをおっしゃるというのが、当方には驚きだった。

地元が大阪市内や東京23区内ではなく、大阪府南部という地方・郊外だったということもあるのかもしれないが、業界人の感覚と一般大衆層の感覚はここまで違うのかと驚かされた。

 

ネット内でもそうだが「業界標準」のコーディネイトが理解されず、茶化されることは多々ある。

先に挙げたピンク色のメンズスラックスと同様に、業界標準と一般層では感覚が違うので仕方がない。これを根絶させることは不可能である。

 

業界標準の着こなしを取り入れることは難しい、と当方でも感じる。

例えば、スーツやテイラードジャケット+野球帽である。

モデルやタレントだと似合っているが、当方も含めてそこらへんのオッサンがこれをやると、幼い頃に運動会を見に来ていた祖父世代が思い出されてならない。

オッサン臭い鼠色のテイラードジャケットに野球帽を被った祖父世代がたくさんいた。また日曜日の競馬場でもこんなオッサンは多くいた。

 

オンワード/OMO型新業態「ONWARD CROSSET STORE」の挑戦 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

 

 

記事の内容とはまったく関係ないが、画像をお借りすると、この着こなしは「業界標準」で当方はあまり驚かないが、取り入れるのはかなり難しく、下手に取り入れると運動会に来た祖父のようになってしまう。

https://www.ryutsuu.biz/column/n07001saizen.html

 

 

 

このコーディネイトを見えている部分だけで解説してみると、

麻(もしくは麻っぽい素材)のテイラードジャケットを丸首ニットの上から羽織り、首元にスカーフを巻くことで、トレーズ閣下よろしくエレガントさを表現したのだと思う。色味は生成、茶色、深緑という茶系・ナチュラル系に統一し、野球帽で「ハズし」た。野球帽も生成にして統一感を持たせてみた。

というところではないかと思う。

が、やっぱり、テイラードジャケット+スカーフに野球帽は合わせることが難しい。特に着慣れていない人からすると難しい。当方は間違っても真似をしない。

恐らくは、都心は別として少し郊外だと間違いなく、先のピンク色のスラックス同様に訝しく思われるだろう。

 

同様に難しいと思うのが、メンズの半ズボンスタイルである。

2011年の節電以来、成人男性の夏の半ズボンスタイルは随分と市民権を得たと感じるが、多くの一般人からするとやっぱり「オッサンの休日スタイル」ととられる割合が高い。

よほど容姿や体型が優れていないと、夏の日曜日に自宅でくつろぐオッサンにしか見えない。半ズボンはどう頑張ってもカジュアル感・リラックス感が前面に出てしまう。

おまけに小太り・ビール腹の人なら途端に日曜日の初老臭しか漂わなくなる。

 

また容姿が優れている人でもTシャツ・半ズボン・リュックサックの3点セットで、途端に、夏休みに公園に蝉を取りに来た小学生のごとく見えてしまう。

成人女性にも、成人男性の休日以外での半ズボンスタイルを好まない人も相当数存在するから、やはり茶化されてしまっても仕方がない。

 

洋服のコーディネイトというのは、似合う似合わないについて極めて属人性が高い上に、見る側の好みも千差万別である。そして、業界人の思う「標準」「おしゃれ」という感覚と、業界外の人の思う「おしゃれ」はけっこうかけ離れている場合が多く、業界が提案するコーディネイトがマスに広がりにくいのはそれが原因の一つでもある。

とはいえ、業界としてはスタイルを提案する必要もあるし、啓蒙活動も必要になるのは当然のことだが、自分たちのオシャレは一般層の思う「おしゃれ」とはかけ離れている場合が多いということは認識しておく必要がある。それができないスタイリングやコーディネイト提案が広く支持されることはないだろう。

 

 

 

読売ジャイアンツの野球帽をどうぞ~

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 comment
  • 河部 より: 2021/07/07(水) 8:25 AM

    前にとあるスタイリストさんが主催している、ファッションコーディネート塾みたいなものに参加したことがあります。

    それぞれ違うワンピースを重ね着して違う服みたいに着られる!とか、重ね着をさらに重ねて、というコーディネートを提案する癖のある先生でした。

    その先生は自信満々なのですが、うーん、どうなんだろう???よく分かんないなと思いました。元々の服を違う服みたいに着ることが意味のあるものだとは思えない。

    ファッション雑誌とかでよく着回し特集やってますが、着回しってなんで必要なんでしょうね。着回しとかじゃなくて、一番良く見えるコーディネート一つを何回も着るのが普通の人ではないでしょうか。

    あと、有名なファッションブロガーさんも春にはニュアンスカラーがオススメって言ってたのに、秋冬になったら、原色の組み合わせが新鮮。ニュアンスカラーがまだ流行ってるのは日本だけって言ってました。

    ファッションの好みってそんなにコロコロ変わるものでしょうか?Kiroroが好きな人がいきなりヘビメタを聴くでしょうか?

    コロコロ考えが変わるってあまり良い印象ではないですよね。

  • BOCONON より: 2021/07/09(金) 7:57 PM

    失礼ながら,今回の記事読むと南さんご自身もかなり業界の悪弊(と敢えて申しましょう)に染まっているような。

    > そんな奥様でさえ、ピンク色のスラックスにはここまで厳しいことをおっしゃるというのが、当方には驚きだった。
      いや,驚く方が不思議だと思いますが。
      女性からすれば「なんで私や家族を差し置いて自分だけ悪目立ちするような格好するわけ?」ですね。
      一時期販売員の間で流行った紺ブレザーにラヴェンダー色や黄緑色のパンツなんてのも同様。
      業界人の好きなツンツルテンのズボンとか「なんで馬鹿に見えるようなカッコすんの?」だし,素足に革靴も「石田純一かよw」だ。
      ウソだと思ったらネットで検索してみては如何。まったくイタリア人のする事なら何でも真似するんだから困ったもんだw

    > スーツやテイラードジャケット+野球帽

      オジサンがやっても「ハゲ隠し?」と思われるのがせいぜいでオシャレに見せるのはほとんど無理(経験済み)。
      野球帽も浅くてつばが小さめなものを選ぶとか,おしゃれテク(笑)が要りますからね。
      話は変わりますが女性は一般にアクセサリーの類をつけた男を嫌うものです。  
      画像の人の格好も芸能人の衣装みたいなもので,僕ならシロウトにはスカーフなんて決してオススメはしませんね。
      僕自身は巻き物は結構好きで自己満足でやってますが,御婦人方には大体あまりいい顔はされませんしね。

    • とおりすがりのオッサン より: 2021/07/12(月) 1:05 PM

      >ツンツルテンのズボン 素足に革靴

      アレ、なんでみんなやってるんでしょう?
      カジュアルな服ならまだしも、スーツでも足首だして「ヌケ感が~」とか言ってたりするのは、「日本人バカね」とかイタリア人に言われていそうw

      • BOCONON より: 2021/07/15(木) 8:42 AM

        イタリア在住の山崎マリさんによれば,たとえば《LEON》のイタリア街角スナップ特集号みたいなものをイタリア人に見せると驚かれたり呆れられたりするそうです。異口同音に「こんな男は見た事がないよ」だそうで。
        「日本で流行り出した時にはもう発祥の地では時代遅れ」というのはままありがちな事ではある。例えばアイビー/アメリカントラッドなど典型的であります。東部上層階級のスタイルですが,日本で広まった頃にはそういう階層出身の大統領なんてもう出なくなっていた,と云った具合。
        「イタリアものがお洒落」なんてのは流行遅れですらなくて,お手本はイタリアのアパレル業界人がイキった格好なのだからひどい話もあったものだ。日本在住のイタリア人からも「”ちょい悪オヤジ” なんて冗談じゃない。イタリア男が大事にするのは家族」などと苦情言われる始末で。
        それゆえ折角お金はあるだろうにピンクのスラックスなんてものを着てオシャレなつもりの日本人なんて悲喜劇としか言いようもない。フツーの日本人男がそんな格好したがる訳もないから,日本の業界人は自分で自分の首を絞めているようなものです・・・それとも「もう金持ちしか相手にしたくない」ってことか? 何にしても馬鹿々々しい話なのに変わりははありませんが。

        • とおりすがりのオッサン より: 2021/07/15(木) 11:18 AM

          「”ちょい悪オヤジ” なんて冗談じゃない。イタリア男が大事にするのは家族」
          日本人がみんな侍と忍者と思ってるようなものですかねw
          お金持ちは奇抜な格好が好きな人も多そうだから、そういうニッチな層を相手にして商売していくのはアリなんでしょうね。Tシャツ一枚一万円とか普通にあるから怖いっすw

  • BOCONON より: 2021/07/09(金) 8:20 PM

    > 容姿が優れている人でもTシャツ・半ズボン・リュックサックの3点セットで、途端に、夏休みに公園に蝉を取りに来た小学生のごとく見えてしまう。

      確かにw 以下のように思っている女性は少なくない気がします。
     「30歳過ぎた男がTシャツに半ズボンで外出はちょっと ...せいぜい近所のコンビニくらいにしてほしいわ」。
      実際のところ,日本人の黄色っぽい肌に黒いすね毛丸出しというのは正直かなりきたない感じがする。
      よほど日焼けしていれば別ですが。業界の推している膝上ハーフパンツなんてのもイヤだな。
      Tシャツもねえ・・・「年齢は首筋に表れる」という横山ノックの言は正しい。
      それゆえおじさんオジイサンのTシャツ姿なんてこれまた正直見たくもないものです。
      まして乳首が透けてたりしたらもうね ...
      僕自身もTシャツに短パンなんて格好は基本家にいる時だけですね。

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