物を売るには「営業担当者」と「見せ方」が重要
2021年6月9日 企業研究 2
良い物を作れば必ず売れる。
そう考えている日本人はまだまだ多い。
漫画やドラマ、映画のように、名もない会社が素晴らしい新製品を開発し、それを縁もゆかりもない大手企行が見つけて即採用し、バカ売れする。
そんなことは現実ではほぼ起こり得ない。
特に繊維・衣料品業界ではほとんどそんな事例を見かけたことがない。ゼロではないが、それは宝くじに当たる程度の低確率だと考えておくべきである。
先日、東洋経済オンラインでこんな記事を読んだ。
ダイワ「釣りベスト」が新宿伊勢丹で即日完売の訳 | ファッション・トレンド | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)
東洋経済オンラインのアパレル記事にしては、かなり良質だったといえる。
どこが良かったのかというと、釣り具メーカーのダイワがアパレルブランド「ダイワ ピア39」を展開したが、それが売れた理由が「高品質な物作り」以外でちゃんと記されていた点である。
そんななか新ブランド「ダイワ ピア39」がスタートした。冒頭の行列もECでの売れ行きも、ある黒子の存在が大きく影響を与えている。セレクトショップ「BEAMS」を展開する、ビームスがデザインや宣伝を担当しているのだ。
実は今、ビームスは服を売るだけではなく、BtoB事業にも力を入れている。セレクトショップ運営で得た企画力を生かし、企業や自治体の商品開発から宣伝までを請け負っているのだ。
とある。
単に「良い物」を作って営業したところで、なかなか売れない。
理由はダイワという釣り具メーカーの商品だからだ。商品の製造元やバックボーンなどを気にせず、商品そのものだけの良し悪しを的確に判断できるような本阿弥光悦や千利休のような人間は世の中にほとんど存在しない。
かならず、製造元やバックボーン、販売価格などによって評価が左右される。
アパレルも同様だ。
ダイワがいくら「良い物」を作っても自社で営業活動をしたのなら、表題にあるように「伊勢丹新宿店」などのような人気売り場に入り込むことは初見ではまず無理である。
何年も活動し続ければようやく「じゃあ一度やってみましょうか」という感じになるのが、精一杯である。
ところが、ファッション業界での知名度が高いビームスが営業すれば「ビームスさんが勧めるのなら」という感じで取引が決まる。
プロジェクトを統括したビームスの日高正幸氏は「フィッシング会社のアパレルの存在を、ファッション好きのトレンドリーダーにどうやって知ってもらうかが鍵だった」と振り返る。どれだけかっこいい服を作っても戦略がなければ売れないというわけだ。
まさにこれである。
服作りと並行して「見せ方」の策も練った。ブランドを立ち上げるときに鍵になるのが、セレクトショップや百貨店のバイヤーらを招く展示受注会だ。店頭に置いてもらうためには、展示会の会場でブランドの世界観や洋服をどう見せるかが大事になってくる。
実際の見せ方のそれが良かったのか悪かったのかは正直わからない。評価基準は多分に主観しかない。だが「ビームスがディレクションした見せ方です」といえば「良いじゃないですか」という人は業界に掃いて捨てるほどいる。ちょうど、高い食材なら何でも「美味しい」という人が多いのと同じである。
老舗メーカーや工場系のブランドが最も足りていないのがこの部分である。ビームスに依頼するのが必ずしも正解ではないし、それ以外の依頼先でも全く構わないが、営業戦略、見せ方が重要であるという認識は持っておくべきである。
例えば、これは生地の展示会でも国内外問わず同様のことがいえる。
どれほど「高品質な生地」なのか知らないが、知名度が低かったり、イメージが低い生地工場がブースを構えたところでさほどの取引額にはならない。
最近は、ブースの見せ方にも気を使う生地工場が増えたが、営業窓口の優劣は如実にある。
仮に無名の訳の分からない営業マンに任せたとしたら、その営業マンだとあまり取引先を増やすことはできないだろう。一方、ビームスではないが、そういう業界内でも評価の高い営業マンに任せたら、ある程度の取引額は稼げる場合が多い。
服と同様に「その物だけ」を見て判断できるような目利きはこの世にはほとんどいない。
これは海外展示会でも同様で、どれだけ優秀な現地のエージェントと契約できるかに売れ行きは大きく左右される。決して物の良し悪しだけではない。
この手の機能性服の分野でいうと、ワークマンやユニクロの一部商品のような低価格大手ブランドが存在する。しかし、それでは嫌だという消費者もマスではないが存在する。
ゴアテックスを使った高価格ブランドである「ダイワ ピア39」がワークマンのような1000億円ブランドに、国内ユニクロのような8000億円ブランドになることは絶対にない。
しかし、20億円とか30億円、100億円程度なら成立は可能だろう。
それこそ、エドウインもこの路線を目指す方が成功する確率が高い。8000円台~10000円のジーンズをマスに売るというのは、最早実現不可能な理想である。
悩んでいる老舗メーカーや工場系ブランドにとっては得るところの大きい記事だったのではないかと思う。
そんなダイワのスピニングリールをどうぞ~
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磯伝説けろっぴ より: 2021/06/14(月) 8:21 PM
釣りファンです。ダイワは10年前くらいにブランドを刷新して、佐藤可士和にプロデュースさせたり。 するとこれまでの釣り服にありがちなやぼったさが抜けて垢抜けて。機能性も高いので釣りをはじめたてのビギナー、若い人が好むデザインになったようです。
ダイワはまさに釣り業界のアパレル会社?みたいなものだと思ってましたが、頷ける記事です。
アパレルとは無関係ですが、うちの金属加工工場でもエセコンサルタント(私を名誉毀損で訴えてきて220万払えと言ってるクズ)に「自社製品作らにゃダメだよチミ~」とそそのかされて、販路も何も無いのに自社製品開発(企業向けBtoB商品)して大失敗してますわ~w
うちのバカ社長には「工具売ってる大手通販サイトとかに出すとかしたらどうっすか?」と提案しても「金が掛かるからダメだ」とニベもなく却下されましたが、聞いたこともない会社が作ったウン万円~100万超えの製品なんて、自社サイトで宣伝して営業マン一人が売り込んだって、買う会社はほとんど無くて、第三段で出したものは一個も売れてませんw
ホント、中小企業の経営者はアホばっかっすw