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南充浩 オフィシャルブログ

「日本製生地の良さって何?」という難問

2021年6月8日 産地 0

先日、久しぶりにClubhouseという音声SNSを使って山本晴邦さんと話をした。

自分が使うのは1ヶ月半ぶりくらいだろうか。今年春先の異様なブームのときに試しにインストールしてみたが、4月以降はほとんど使わなくなった。

理由は、喋る相手がそれほどいないからだ。また他人の話を毎日聞くほど他人に興味がない。

短かったブームの頃には「次世代SNS」とか散々に持ち上げていたお調子者が多く見られたが、いつの間にか雲散霧消してしまっている。ZOZOSUITを発表した当初「ZOZOが世界を制覇する」とか「既製服は死んだ」とか言っていた輩と同じ連中だろうと思う。

 

「文字から音声・動画へ」と言われるが果たして本当にそうだろうか?あくまでも自分ベースで考えるとそうは思えない。もちろん自分がマスとズレている可能性はある。

自分ベースで考えると、自由度でいうと「文字を読む>音声>動画」という順番である。動画がわかりやすいということに異論はないが、動画がめんどくさいのは「最初から終わりまで目が離せない」という点である。

少しも余所見ができない。戻せばいいじゃないかという意見もあるだろうが、戻してもう一度見るのはそれこそ時間の無駄遣いだと感じられてならない。

音声の場合は、聞きながら家事などの作業がしやすい。

そして、文章を読む方が、自分の必要とする箇所だけを読むことができ、例えばあいさつ文なんていうのは完全に飛ばして読むことができる。

だから当方はあまりYouTubeを始めとする動画に入れ込まない。アホ生産機のテレビ番組よりはYouTube番組の方を多く見ているが、愛好しているのは「聞く」タイプのトークチャンネルである。動作を見ていないといけない番組はほとんど見ない。

 

それはさておき。

 

今回、山本さんにお話し相手になってもらったのは、「海外に向けての日本の生地の良い点」という原稿の題材で悩んでいたからである。

編地専門とはいえ、海外とのビジネス経験もある山本さんに何かヒントがもらえないかと思ったからだ。

 

話しているといろいろと良い点は出てくる。

例えば、「高品質」「小ロット生産」「短納期」などなど。

 

しかし、話せば話すほど、そのどれもの要因が工場ごと会社ごと生地ごとによって差異が生じて一括りにはできない。

例えば「高品質」と言ったところで何を持って「高品質」というのか。恐らく共通化できるのはB反の少なさくらいだろうか?

だが、それ以外の「高品質」というのは共通化しにくい。

 

例えばデニム生地でいうと、90年代半ばのビンテージジーンズブームでデニム生地における「高品質」の尺度が変わった。

太さが均一ではないスラブ糸を使い、表面に凹凸感のある厚手のデニム生地が「昔ながらの」「本物の」として重宝されるようになったが、ビンテージジーンズブーム以前のデニム生地は、液体アンモニア加工が隆盛を極めたことからもわかるように、滑らかでしなやかで色落ちしにくいデニム生地が「高品質」とされていた。その延長線上に90年代前半のレーヨンジーンズブームはあるのではないかと思っている。

また、80年代には大量生産がより追求されたことから、製造が簡易な空紡糸で織られたデニム生地が量産化されたが、ビンテージブームのころにはこの「空紡糸デニム」は安物の象徴になってほとんど国内では作られなくなった。

2015年頃からスキニージーンズブームが一服し、ワイドパンツも復活を遂げ、この辺りから古着人気がクローズアップされるようになった。

古着人気と言ってもビンテージブームのころからあるが、ビンテージブームのころは50年代~70年代古着が人気で、80年代・90年代古着は見向きもされなかったが、2015年当時ではすでに50年代~70年代古着は市場から消えていたため、80年代・90年代回帰の風潮も手伝ってこのころの古着に価値があるとされた。

当然、デニム生地でいえば安物とされた「空紡糸デニム」が使われており、ここでまた80年代テイストを再現するために再び「空紡糸デニム生地」への需要が復活した。

日本のデニム生地工場は、「高品質」なビンテージ調デニム生地を作ることには定評があったが、その「高品質」ですら、時代とトレンドに応じて評価軸が変わってきており、一概に何を持って「高品質」というのかは、定義できない。

 

小ロット生産・短納期化はほぼすべての国内生地工場に当てはまるだろう。

何せ、今更補助金以外での設備投資なんてしている(できる)生地工場なんてゼロではないが、ほとんど存在しない。必然的に生産のロットは小さくなり、少量生産するから短納期になる。

 

山本さんのイギリス人の友達や、アメリカ・インド生活20年くらいになるというぜんぜん知らない日本人の方によると、「日本製品への高イメージ」が最大の武器ではないかということに落ち着いた。

しかし、80年代以降の日本企業(生地・アパレル以外も含む)の海外進出が一部を除いてほとんど上手く行かなかったのは、「日本製への高イメージ」にあぐらをかいて、現地でのマーケティングリサーチを著しく欠如させたからだという話になった。

たしかに高イメージは抱いてくれているが、かといって、何を売っても買ってくれるわけではない。

それぞれの国の文化・風習・国民性は異なっており、当然、消費者ニーズも異なっている。そこを細かくすくい上げる必要があり、それがないままに「日本製と言うだけ」では決して売れないという結論だった。

 

各国での高イメージというのは短期間に醸成することはできないから、これは大きなアドバンテージだといえるが、それのみにあぐらをかいてしまうと、決して売れない。

自分が得た結論としては「物」だけではなく、「売り方」「売り先」「販促」などの工夫も不可欠であり、生地以外の他分野の製品と同じであるということだった。

 

 

とりあえず国産タオルをどうぞ~

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