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南充浩 オフィシャルブログ

利便性・快適性を体感すれば高機能商品を手放せなくなる

2021年6月7日 トレンド 0

先日、シキボウが新内外綿を完全子会社化した。

その是非や事業プランに触れたいのではなく、発表用リリースに興味深い一節があったので紹介したい。

00.pdf (eir-parts.net)

 

綿繊維の需要が伸び悩んでいるのと同調し苦戦を強いられています。綿本来の特徴である「肌触りが良い、清涼感がある」といったメリットが受け入れられず、合繊の特徴である「丈夫でシワになりづらい、高い機能性がある」という面が消費者に好まれています。

 

とのことである。

これは自分自身にも同様の体感がある。機能性が高い衣料品や服飾雑貨の方が使う頻度が高い。逆に機能性が低い衣料品や服飾雑貨を最近はほとんど買っていない。

やはり、そういう消費行動は紡績にも跳ね返っているようだ。

 

たとえば、先日発表された青山商事のハンドアイロンシャツなんていうのは、それの典型だろう。

 

20210603_handironshirts.pdf (y-aoyama.jp)

 

“手でなでるだけ”でシワが取れるビジネスシャツ「ハンドアイロンシャツ」を開発し、6 月 4 日(金)から全国の「洋服の青山」および公式オンラインストアで販売します。

 

とのことで、材質はポリエステル100%である。

昔、会社勤めをしていたとき、若かった当方はイキってポリエステル混の形態安定加工シャツを買わずに綿100%シャツを買っていた。

綿100%シャツはたしかに良かったが、アイロンをかけるのがめんどくさかった。毎朝、着るシャツを選んでから襟と袖口、正面部分にアイロンをかけて出かけていたが、死ぬほどめんどくさいと感じていた。

実物を見ていないのでなんとも言えないが、もし、このハンドアイロンシャツのパッと見が綿100%シャツっぽかったなら、今の自分なら間違いなくこちらに乗り換えるという自信がある。

 

すっかり暑くなって、5月下旬から今年も半袖生活に突入しているが、正直なところ綿100%Tシャツにこだわる気が全くなくなった。ポリエステル100%のTシャツを着ようとは思わないが、綿70%とか80%でポリエステルが20~30%くらい含まれているTシャツやポロシャツの方が洗濯をしたり、汗をかいたりしたときに乾きやすいから、そちらを重宝するようになった。

昔、25年くらい前にポリエステル100%の黄色いピカピカ光るシャツを買った。ポリエステルという糸は本来吸水性が全くない。このシャツはまさに「本来のポリエステル」だったのだろう。春先に五分間着るだけで肌の表面に水分がたまってくる。あまりに不快ですぐさま捨ててしまった。

今のポリエステル、特に吸水速乾性を謳う物は、毛細管現象を利用して吸水というか排水機能がある。

また汗をかいて濡れても綿100%天竺や綿100%ブロードのように肌に貼りつくことがなく、肌離れが良い。そうでなければサッカーやバスケットボールのユニフォームにポリエステル100%生地は採用されない。

ポリエステル100%の肌着は、綿100%にはない「独特のモワっと感」があるが、それを補って余りあるのが速乾性と肌離れの良さだと感じる。

 

先日、たまたま街角で立っている坊主がいた。

ちょっと時間があったので10分くらい観察するとはなしに見ていた。何となく、足元を見てちょっと驚いた。

遠目から見ると、白い足袋に茶色い草鞋?草履?のように見えていたのだが、近くに寄ってよくよく見てみると、白いアッパーに茶色いソールの足袋型スニーカーだったのである。おまけにかかとにはエアクッションを内蔵している。

 

 

いわゆる、エアクッション内蔵型のハイテクスニーカーだったわけである。

これにはちょっと驚かされた。

こんな商品があるんだとびっくりした。

SNSで「エアージョグ足袋」という商品名だと教えられて、サイトを検索してみると、たくさんの商品が表示される。

たとえば、Yahoo!ショッピングでも数多く表示される。

見た感じでいうと、リーディングブランドは存在せず、だいたい4000円台~5000円台で様々なワーキングメーカーが展開しているようである。

昔の地下足袋の代わりとして、作業現場や祭りで神輿を担ぐ際に着用されているようである。

 

当方の実家の近所でも毎年秋に太鼓を乗せた神輿を担ぐのだが、当方はこれが嫌でたまらない。

なるべく担がないようにしているが、亡父はなぜか神輿を担ぐのが好きだった。アル中になって老衰するまでは、地下足袋を履いて参加していた。

で、何度か地下足袋というのは、履いていて足が楽なのか?と尋ねたことがあったが、「底が薄いから足が痛い」という答えが返ってきた。

足が痛いのになぜわざわざ履いているのか疑問で仕方がなかったが、当時はエアージョグはなかったのだろう。エアージョグは見ているだけで昔の地下足袋と比べると格段にクッション性が高そうで、足が疲れにくいのだろうと思う。

坊さんたちの足元も近い将来、ほぼ全員がエアージョグに変わるのだろうと思うし、神輿を担ぐ人も全員がエアージョグに変わるのだろうと思う。

 

一度、高機能性商品の便利さ快適さを体験してしまえば、そちらを重宝するようになるということである。

「綿本来の風合いの良さ」とか、「伝統の〇〇」とか「本物の〇〇」とか言ったところで、利便性の高い代替品が生まれていれば、マス層の需要はそちらに奪われてしまう。

もちろん、「本物の〇〇」を好む層もおり、需要は決してゼロにはならないだろうが、いわゆるマニア層の需要ということになり、量は出ない。

そういうマニア層を狙うというのも一つのビジネス戦略だが、明らかにマニア向け商材となり果てている「本物の〇〇」をもう一度マス層に買わせようとするのは無駄な努力に終わる。

これは繊維・衣料品に限らずそうで、今更全自動洗濯機をやめてしまうことはできないし、お掃除ロボットを捨ててしまうこともできないだろう。

今後もマス向けの衣料品や服飾雑貨系はますます高機能商品が需要を伸ばすことになるだろう。

 

 

そんなエアージョグをどうぞ~

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