
エドウインが直営国内4工場を閉鎖へ
2021年5月31日 ジーンズ 2
週末に、国内最大手のジーンズメーカー、エドウインが子会社のジーンズ縫製工場である秋田ホーセなど秋田県内の4工場閉鎖を発表した。
秋田ホーセ、秋田の4工場閉鎖へ エドウイン子会社: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ジーンズ国内最大手のエドウイン(東京・品川)の全額出資子会社、秋田ホーセ(秋田県五城目町)は秋田県内の4工場を閉鎖する。新型コロナウイルス禍などの影響で国産ジーンズ需要が落ち込み、今後も回復を見通せないと判断。生産体制の見直しを決めた。
閉鎖するのは五城目町の本社工場と大川工場、県北部の大館市の秋北工場、小坂町の小坂工場。受注に合わせて当面は操業するが、7月から9月中旬までに順次閉鎖する。
この日経新聞の記事では従業員208人は「希望退職を募り」と書かれてあるが、別の紙面ではハッキリと「解雇」と書かれてある。
当面は希望退職だろうが、9月中旬以降は自動的に解雇となるだろうから、そこでソフトに表現しても何の意味もない。
で、エドウインの国内生産はどうなるのか?という疑問が湧くが、完全撤退というわけではなく、1社は残すようである。
エドウインの国産ジーンズの主な生産拠点は秋田県と青森県にある。今後は青森県の子会社、みちのくジーンズ(弘前市)に国内生産を集約する。
とのことである。
だが、このみちのくジーンズの規模はそれほど大きくない。実は2018年にはこのみちのくジーンズも1工場を閉鎖している。
つがる・みちのくジーンズ相野工場が5月末閉鎖 by 陸奥新報 (mutusinpou.co.jp)
つがる市にあるジーンズメーカー「エドウイン」(本社東京都)の子会社、みちのくジーンズ相野工場が、5月末で閉鎖されることが19日までに分かった。市内には同青森工場もあり、両工場で99人の従業員がいるが、40人の希望退職者を募るという。
とのことで、現在のみちのくジーンズの従業員数は50~60人規模だと推測できる。理由はこの時点で99人の従業員でそのうち40人の希望退職者を募るので残りは59人ということになる。
他のサイトだと従業員数56人と表示してあるところもある。だから、50人前後~最大でも60人くらいだと考えられる。
経営破綻したエドウインは2014年に伊藤忠の子会社となって存続した。
その時点では13あった国内工場が、順次閉鎖されていき、ついには今年でみちのくジーンズ1つ(5工場)になるということである。
もちろん、直営工場以外にも国内に契約工場、協力工場が長年あるが、そちらの方に対しても発注量は2014年以降、年々減少し続けていると某協力工場の社長はいう。
中には「発注量は減り続けるのに、工賃は抑えられる。長年にわたるエドウインとの取引も見直さなくてはならない」と話す協力工場の社長も実はいる。
エドウインの企業規模は発表によると売上高220億円規模だとされている。国内のジーンズメーカーとしてはいまだに最大手である。
再建後も続くエドウインの苦境の理由はいろいろと考えられるが、その中の一つには、大規模メーカーが直営工場を多数所有したことが挙げられるだろう。
直営縫製工場の所有にはメリットもあればデメリットもある。
工場というのは、毎日生産し続けることが仕事である。「暇なときには工場の生産ラインを止める」というのは、家族や親戚数人でやっている工場にしかやれない離れ業である。
従業員として他人を雇用している工場は、原則として毎日稼働して毎日物を作り続けなくてはならない。「暇なときはお休み、忙しい時だけ働きに来てね」というのでは従業員の生活は安定しないし、従業員を確保し続けることはできない。
チェーン小売店が売れなくても毎日店を開けているのと同じ理屈である。
直営店主体のいわゆるSPA型ブランドであれば、自社の裁量で店頭にテコ入れを行い(値引きセールなど)、不良在庫を減らして、直営工場で生産された製品を店頭に投入することができるが、エドウインは残念ながら卸売りがメインである。
そうなると、納品後は小売店任せということになり、小売店の売れ行きが芳しくなくてもエドウインとしてはテコ入れすることは難しい。そうすると納品は進まないのに、毎日工場で製品は作られ続けるということになる。
さらに昨年のコロナ禍で店舗休業や営業時短が頻発しており、小売店店頭の消化は鈍る。
ファッションテック系やイシキタカイ系は「ネット通販がある」とすぐにいうが、衣料品のネット通販の売上高は実店舗を越えていない。多少の補完にはなるが、実店舗の代わりにはならないのが現状である。
このところ、エドウインも「エドウイン」「LEE」で直営店を増やしてきており、アウトレットを含めて全国に58店舗ある。このうちアウトレットが約半数の28店舗ということで、正規店は30店舗しかない。
ネットショップを含めても、直営店売上高の比率は卸売りに比べて圧倒的に低いだろうから、コロナ禍による納品先小売店の苦戦は痛手になったことだろう。
直営工場を多数所有することのデメリットが顕在化したといえる。
ファッションテック系や新興系の中には「直営工場を持つことが強み」と考える人も出てきているが、そんな安易なものではないということが理解できるだろう。
閉鎖が決まった秋田ホーセだが、今後はどうするのだろうか?工場には3つの選択肢がある。
1、このまま廃業
2、独立経営に移行して継続する
3、声をかけてくれた他社の傘下に入る
である。
実際に、10何年前にジーンズメーカーから廃止を言い渡された直営工場が、従業員全員で株式を買い取り、独立経営に移行した事例がある。
また、数年前にエドウインから外された縫製工場を、国内の洗い加工場が声をかけて傘下に収めたケースもある。
しかし、声をかけても「工場経営者がもう事業は終わりにします」ということもあるらしく、この辺りはどれが正解とも軽々しくはいえない。
工場関係者は自分達でベストだと思われる選択をするほかない。
読者からのご指摘で赤字部分を加筆修正しました。(6月1日)
そんなエドウインのジーンズをどうぞ~
comment
-
-
通りすがり より: 2021/05/31(月) 2:48 PM
みちのくジーンズ傘下の5工場が継続します。
ブラピを使用した503のCM
NYまで商品パンフ制作のために
古い写真のポジを探しにいきましたよ…
勤務先の大きなスポンサーでした
今では めるると粗品がストレッチデニムのCMですから
隔世の感がございます
生デニムってどうなってるのかしら