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南充浩 オフィシャルブログ

生地の廃棄は必ず発生する

2021年5月26日 製造加工業 1

衣料品が過不足なく適量を生産しても、生地は廃棄ゼロにはならない。

それについてはこのブログで説明されている。

 

意識高いアパレル業界人はBBQで高級肉を食べる説 | ファッションビジネス ・リテールMDアドバイス ・マサ佐藤 (msmd.jp)

 

ここでは、ジーンズの生産で仮定しており、1反50メートルで、ジーンズの用尺は2メートルくらいなので25本作れるという考え方で進めている。実際のところきっちり25本ではないのだが、わかりやすくするためにそのまま進める。

 

でも、製造においてロスと言うものが絶対にあります。

(ジーンズ生産)
*受注数:100本
*生産数:105本
*ロス(売れないもの):5本

この5本のロスは、受注数100本を満たす為には必要なロスです。
アパレル業界で製造に携わってるとこのロス5本は仕方ないものです。
この5本は、発注元に引き取ってもらうか、廃棄するしかありません!

加えて、経済ロットってのが製造には必ずあります。

 

また生地も基本的には1反50メートルというのが単位となっているが、実際の生地は「50メートル前後」で、少し短い場合もあれば少し長い場合もある。「乱50メートル」と書かれてある生地は50メートル前後という意味である。

で、52メートルある生地だったら、この2メートルは廃棄するか、端切れ屋に二束三文で売り飛ばすかしかない。

 

(デニム発注①)
ジーンズ生産数:25本
*デニム生地:1反50m(1反50m仕入)
*デニム反物単価:25,000円(500円/m)
*ジーンズ用尺:2m
*1反で取れるジーンズ:25本
デニム生地ロス:0m
*デニム仕入金額:25,000円

(デニム発注②)
ジーンズ生産数:20本
*デニム生地:1反50m(1反50m仕入)
*デニム反物単価:25,000円(500円/m)
*ジーンズ用尺:2m
*1反で取れるジーンズ:25本
デニム生地ロス:10m(デニム生地 50m – ジーンズ生産数 20本 × ジーンズ用尺 2m)
*デニム仕入金額:25,000円

ジーンズを何本作ろうが、デニム生地は50m仕入れです。

とある。

要するに50メートル単位で生地を買うので、半端な本数を作ってしまって生地が余ってしまうことはよくあるということである。

余った生地は原則として廃棄するか、社内で使う備品のような物に加工するか、である。

 

これに対して「自分は、必要なメートル数だけをアップチャージを支払って買っている」という意見もあった。

 

実際のところ、どちらかが正解でどちらかが間違っているというわけではない。

自社の利益が確保でき、確実に売り捌けるのであれば、どちらの手法を採っても間違いではない。

 

自社の製品が売れる値段、売れる数量を適切に把握できていて、アップチャージを支払って高めに生地を仕入れて、製品の販売価格を高めに設定していも、その値段で売れるのであれば何の問題もない。

また製造コストを抑えるために経済ロットの数量の生地を仕入れて、製品の販売価格を安く抑える、または自社の獲得する利益を増やすということも間違いではない。

どちらの手法を用いようが、その製品が間違いなく売れればそれでいい。

 

アップチャージを支払ってでも必要なメートル数の生地を半端な長さでも仕入れるというのは、一見すると生地の廃棄はゼロだと映るが、実は生地工場や生地問屋側が残ったメートル数を廃棄するという場合が多い。

例えば、40メートルだけ生地を仕入れた場合、10メートルは残ってしまう。

これが「ド定番」の生地なら残しておいて、他ブランドに売るということは可能である。「ド定番」の生地はブランドに関係なく、使用されるからである。

 

だが、色や柄、表面感に特徴のある生地や、ブランド側が指示して作らせた特別な生地だった場合、余ったメートル数は廃棄されることになる。

特徴のある生地の場合だと、他ブランドに売ることはなかなか難しい。また言葉巧みに売ったとしても、他ブランド側が採用を拒否するだろう。

なぜなら、全く資本関係のないAブランドとBブランドに同じ生地の商品が並んでいることが消費者にすぐにわかってしまうからだ。

色・柄・表面感に特徴があればあるほどわかりやすいので、他ブランドはその生地の採用を避ける。

 

一方、指示して作らせた場合、これは最初から他ブランドへ転売することは不可能である。

その生地を何年間かに渡って使うという場合は捨てる必要はないが、1シーズン限りなら、余った生地は捨てるほかない。

 

かつて、生地工場を集めて生地を切り売り販売する「テキスタイル・マルシェ」というイベントの運営に携わっていたが、各工場からは「〇〇ブランドが別注した余りの生地20メートル」とか「××ブランドが別注した余りの生地15メートル」なんていうのが多数持ち寄られていた。

もちろん、貼り紙などで「〇〇ブランド別注生地」なんていうのは書けないが、口頭で尋ねれば生地工場のオジサンも口頭で教えてくれる。

これが生地の現実である。

 

食料品でも廃棄率ゼロは不可能である。例えば野菜や果物のヘタ・皮・根などは排除して調理する。廃棄率には排除したヘタ・皮・根も含まれている。

時々、捨てる皮やヘタなどの部分をミキサーで潰してジュースやスムージーにするというレシピがあるが、そこまで努力して食べる必要があるのかと個人的には疑問でしかない。

 

捨てるべき数メートルの生地を工夫して小物雑貨に仕立てて販売するという試みもあるが、そうした場合、縫製・製造の工賃が発生し、営業・販売するという手間が発生し、それに従事する人の人件費も発生する。また遠方の店が仕入れた場合は輸送費もかかるし、ネット通販で販売しても送料がかかる。

おまけに売れ残れば不良在庫化して、在庫の評価損も発生する。

こんなリスクを冒してまで残反の小物雑貨ビジネスをする意味があるのだろうか?捨ててしまった方がはるかにコストが安い。

 

全洋服がオーダーメイドになっても生地の廃棄はゼロにはならないし、全洋服ブランドが神がかり的MDで在庫を残さずに売り切れたとしても生地の廃棄はゼロにはならない。

そういう現実を理解して衣料品ビジネスを進めてもらうことを願ってやまない。

 

 

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 comment
  • ビギナー より: 2021/05/27(木) 11:29 AM

    こんにちは
    テーマのリクエストです。

    B反C反(製造の課程で些細な傷が付いた生地)のデニムについて。
    ①その発生率。
    例えば、10万メートル製造でB反は何メートル発生するのか?
    ②その一般的な取り扱い。
    ゴミとして廃棄されるのか? それとも何かに加工(例えば、床材)されるのか?

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