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南充浩 オフィシャルブログ

「ポストバーバリー」という考え方がそもそもの誤り

2021年5月25日 未分類 1

財務分析や数字の分析は、当方の遠く及ばないところであるから、マサ佐藤氏にお任せするとして、三陽商会がここまで苦しみ続けた最大の原因は「バーバリー」の代わりを「マッキントッシュロンドン」が容易に務められると思っていた、思い込もうとしていたことにあると考えている。

また、有識者やコンサルタントやメディアも過剰に忖度してか、そもそもの目が曇っていたからなのかはわからないが、散々に「ポストバーバリー」とはやし立て続けた。

推定売上高500億円というバーバリーはたしかにビッグブランドだったが、そのビッグブランドの代わりとして新しいブランドが短期間でその規模に育つはずがない。

バーバリーとて一体何十年かけて育ってきたと思っているのだろうか。

2015年6月にバーバリーが終了して、もうすぐ丸6年である。たった6年で売上高500億円に育つようなイージーなブランドビジネスがあるなら、誰だってアパレルビジネスをやるだろう。当方でさえやる。

 

そういう安易な報道を繰り返したメディアの責任は大きいし、それに乗っかった三陽商会の歴代首脳陣の責任も大きく、完全な失敗だった。

数字の分析や様々な指標も重要だが、根本的な考え方が間違っていれば、何の成果も出ない。

ちょうど、間違った計算式をいくら解いても正しい答えにたどり着かないのと同じで、根本的な考え方が間違っていれば、いくら精緻な手法を用いようとも望むような結果にはならない。

「ポストバーバリー」という考え方、バーバリーの穴埋めを短期間でできるという考え方、そのものが当方は2015年当時から書いているように全くの的外れだったといえ、現在の苦境は当然の結果であるといえる。

 

しかし、やっとそれが間違いだったと認められるトップが出てきたので、わずかながら三陽商会には明るい兆しが出てくるのではないかと思っている。

 

背水の三陽商会 大江社長「悲観はしていない。打つべき手は打った」 | WWDJAPAN

 

WWD:ポスト・バーバリーと見込んだ「マッキントッシュロンドン(MACKINTOSH LONDON)」も穴埋めにならなかった。

大江:ポストなんとかなんて考えるから失敗した。「バーバリー」の跡地の売り場を「マッキントッシュロンドン」で埋めて、結果として膨大な在庫だけが残った。売り場と売り上げを失う強迫観念によって、ブランドを育てる本質を忘れたとしか僕には思えない。

 

とのことだが、これは全くの正論である。

洋服好きな人間や業界の人間は「マッキントッシュロンドン」というブランド名は知っているが、一般層に対しての知名度はほとんどない。

「マッキントッシュ」といえばAppleのコンピュータなのかどうかわからないというのが一般層である。

この極端に低い知名度の割に値段が高いブランドが、長い年月をかけて育ててきて知名度が高まったバーバリーに短期間で取って代わることなど、普通に考えれば容易にわかるはずである。

そしてバーバリーと異なる点は、バーバリーにはわかりやすいあの「バーバリーチェック」と「馬?みたいなロゴ」という2つのキラーコンテンツがあった。

バーバリー=高級ブランドというイメージが定着すれば、あのチェック柄は憧れの対象となり得た。しかし、マッキントッシュにそういうキラーコンテンツは無い。

となると、仮にマッキントッシュのブランド名がある程度浸透したとして、衣料品やファッションにそこまで知識がない一般大衆が「試しにあのマッキントッシュを買ってみようか」と思うだろうか。

バーバリーにはそれがあった。ファッションに詳しくない人でも、何かの記念とか臨時収入が入ったからとか、そんな理由でバーバリーチェックのマフラーやポロシャツを買ってみようと思う人が多かった。馬ロゴTシャツを買ってみようという人が多かった。

500億円もの売上高を稼ぐためには、少数派のファッソニスタだけではなく、マス層の取り込みが不可欠である。

しかし、マッキントッシュにはそういうわかりやすいものがない。

とすると、今後、いかにマッキントッシュのブランド名が浸透したとして、バーバリーほどの規模に育たないことはブランドを開始する前から予測できる。

当方は、末期ントッシュ マッキントッシュは今後何十年かけてもバーバリーほどの売り上げ規模に育つことはないと見ている。

そういう観点に立脚して方針を定めるなら、生き残り策も見えてくるのではないか。

 

大江社長とは面識はなく、メディア上での発言をお伺いするだけだが、メディア上での発言だけで判断するとバーバリー以降の歴代社長、新事業を手掛けた執行役員と比較すると最もまともな見識を持たれているように当方には見受けられる。

この記事中でも

 

ファッションに余裕と遊びが大切なのは承知しているが、

 

と発言されておられるが、バーバリーロス以降・大江社長以前の施策はあまりにも遊びすぎていたのではないか。

当方が最も首を傾げたのが映画と連動したという触れ込みのレディースブランド「キャスト」である。

服を売るのになぜ映画なのか?しかも映画と言っても30分程度のネット配信ならそれは映画というよりネット専用ミニドラマではないのか。しかも1作で終わっている。なんじゃそりゃ?

そもそもの理由として、服を売るために映画を作るという必要性がどこにあるのか。

 

映画と連動させるなら、例えば、本物の有望な映画とタイアップして、そこの主役、もしくは主役級の女優の服をすべて「キャスト」が手掛けるというような取り組みが最適だったのではないか。(予算は考慮せずに考え方として)

これなどは「遊びすぎた」ブランド企画の代表例だっただろう。

「誰もやらないことをやる」という意見をこれに限らずよく見かけるが、長い戦後の歴史の中で「誰もやらなかったこと」というのは、それ相応の理由があって「誰もやらなかった」ということを多くの人は忘れがちである。そのボトルネックを洗い出さずに挑むことは挑戦ではなく単なる無謀だろう。

変なクーデターが起きなければ、大江社長のもとで、三陽商会はV字回復は不可能だろうが、小康状態は取り戻すのではないかと当方は見ているがどうなるだろうか。

 

 

 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/05/25(火) 1:10 PM

    マッキントッシュロンドンって、本家のゴム引きコートのマッキントッシュとも違う日本だけのブランドだから、余計に売るの難しそうですね。
    「マッキントッシュ買ったんだ!」
    「それ、マッキントッシュじゃなくマッキントッシュロンドンやんけ。ぶぎゃーw」
    みたいな悲しい会話が起きたりしてるんじゃなかろうか・・・

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