スニーカーは「ブーム」というより「生活必需品」
2021年5月13日 トレンド 0
昨年の3月からBLOGSというウェブメディアに毎月1本寄稿をさせてもらっているが、今月用の原稿として「スニーカーブーム」についてという依頼をいただいた。
詳細はまたそちらで確認していたいだきたいのだが、個人的には、2010年代半ばの「スニーカーブーム」という報道にも、今回の「スニーカーブーム」という報道にも違和感があった。
今回のブームは明らかに「ナイキ」一極集中のブームなのだが、それなら「ナイキスニーカーブーム」と呼んだ方がよいのではないかと思う。
ブランド名にこだわらなければ、スニーカーは「ブーム」というより「生活必需品」になっていると感じる。
繰り返すが今年51歳になった当方だが、幼いころからスニーカーを履いていた。
小学生くらいからブランド名を限定しなければスニーカーを履いていたし、逆にスニーカー、運動靴の類以外の靴というのを小学生時代に履いた記憶がない。
まさか、どこかのブルジョワか貴族様のように小学生で革のドレスシューズを日常的に履いていたはずもない。
中学生の時は「白いスニーカー」が校則だったから、3年間、白いスニーカーで通学していたし、放課後はその白いスニーカーを履いて日常生活を送っていた。ただし、そこら辺の靴流通センターやイズミヤの平場で売られていた2000円程度の安物である。
高校生の時は、指定の革ドレスシューズだったので通学時にはそれを履いていたが休みの日は2000円くらいの名も知れないスニーカーを履いていた。
大学生のころは言わずもがなだ。
89年に関西大学社会学部に入学したのだが、その当時の男子大学生のほとんどはスニーカーを履いていた。あと、二分して人気だったのがレッドウィングやそれに似たようなレザーのワークブーツだった。どちらかというと、スニーカーよりワークブーツを履いている学生の方がイケてる感があったように感じるのは、イケてない当方の僻みだろうか。
それほどの人気があったワークブーツだが、今、街行く人の足元を見ると、カジュアルユースだと男性のほとんどがスニーカーでワークブーツの人はほとんど見かけない。
30年間でワークブーツというジャンルは本当に廃れてしまい、スニーカー一極集中なのだと感じさせられる。
就職すると、服装規定の緩い業界なので、スニーカーを履いて仕事をしていたことが多い。もちろん休日も同様である。
仕事をするようになってからは、プーマ、ルコック、コンバースなどのブランドスニーカーを履いていた。もちろん、どれもABCマートやスニーカーのSTEP、スポタカなどで値下げされていた商品ばかりだが。
ブランド名にこだわらなければ、この51歳の中老ジジイですら、人生のほとんどをスニーカーで過ごしている。
だからことさらに「スニーカーブーム」というフレーズには違和感がある。
2010年代半ばの「スニーカーブーム」は、それまで顧客ではなかった女性層・OL層にまで広がったという意味らしい。
また「ブーム」ということなら、衝撃的だったのが20年前の「エアマックス95」に端を発する「ハイテクスニーカーブーム」である。
1996年くらいのことだ。
エアマックス95を履いている人を襲撃してそれを強奪するという「追い剥ぎ」が出現するようになった。この時は文字通りに「ブーム」だったといえ、あの当時のブームを知っている人間からすると、今の「ブーム」という伝え方には違和感しかない。
ここ数年、当方が注目しているのが、老人層へのスニーカーの普及・浸透度合いの高さである。
もちろん、今話題のナイキのコラボ品や限定品ではない。通常の店舗で売られているスニーカーばかりだが、60代~80代の男女でスニーカーを履いている人が本当に増えた。弱った脚腰のためのウォーキング時はもちろんだが、日常的にも多く履いている。
自分の祖父母世代ではスニーカーを履いている人なんてほとんどいなかった。いてもせいぜい、町内会の運動会の時ぐらいだった。
そういう時代から考えると、老人層へのスニーカーの普及は格段に伸びた。
小学生は男女ともにほぼ100%スニーカー着用だし、中高大学生は言わずもがなである。
そういうところを考えると、老若男女を問わず着用されていて生活必需品になっているといえる。
もちろん、ブランド間においては売上高の格差はある。
また、必需品として着用している人にはブランドのこだわりはあまりないだろう。例えば、黒いスニーカーなら何でもいいとか、エアクッションが入っていれば何でもいいとか、そういう買い方になる。
当方も、何となく10年間もジョギングを続けているが、靴底が減って傷むため、だいたい1年~2年でランニングシューズを買い替える。その際、当方は、ブランドは何でも良くて、大幅値下げされている物をネットで注文している。
なにせ「なんちゃってランナー」だから、そんなにこだわる必要がない。これまで買ったブランドでいうと、リーボック、アディダス、プーマだが、別にこの3ブランドにこだわっているわけではない。アシックスでもミズノでも構わない。値段が当方のストライクゾーンならば。ただし、Amazonに多数出品されている謎の中国ブランドは買おうとは思わない。しかし、ブランドへのこだわりというのはこの程度でしかない。
そういう買い方の人はマス層には多いと思うが、ブランドへのこだわりを除けば、これほど老若男女問わずに利用されている靴はないだろうし、今後、ますますそういう傾向は強まるだろう。だから「スニーカーブーム」という表現にしっくりこない。
逆に靴業界ということになると、今後はスニーカー以外の靴というのは、需要が伸びずなかなか厳しいのではないかと思う。
2360円に値下げされた26・0センチのプーマのランニングシューズをどうぞ~