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南充浩 オフィシャルブログ

ワークマンのネット通販比率が高まりにくい理由

2021年5月12日 ネット通販 0

何かと話題のワークマンだが、ネット通販は現時点ではあまり強くない。

ワークマン押しの識者もネット通販についてはあまり触れない。

先ごろ、ワークマンの2021年3月期決算が発表されたので見てみよう。

ワークマンのEC売上高は24億4000万円とのことで、目標は30億円だったので5億6000万円の未達である。識者が大好きなEC化率は約1・6%に過ぎない。

例えばこのECが今年スタートしたところだとか、昨年スタートしたところであるなら、仕方がないといえるが、ワークマンのECスタートは2014年3月期からスタートなのでかれこれ7年やっているということになる。

 

 

 

 

 

売上高24億円という金額は、中小ブランドであるならかなりの業績だといえるが、売上高1000億円に到達する企業としては低いと言わざるを得ない。

「EC化率は高ければ高いほど優秀企業」と主張する識者の方々がどうしてワークマンのEC化率にはまったく触れようとしないのか不思議でしょうがない。(笑)

 

ではどうして、ワークマンのネット通販が他社大手ブランドほど拡大しないのかということについて考えてみたい。以前にも何度か書いているのでその繰り返しではあるのだが。(笑)

 

ワークマンの実店舗の95%くらいがフランチャイズであることは広く知られている。

フランチャイズ店に並んでいる商品はすべてフランチャイズ店が買い取る。このため、ワークマン本体としてはフランチャイズ店に納品した時点で売上高が立ってしまうということになる。

その後、基本的には商品在庫はフランチャイズ店の所有になるから、本部は基本的にはノータッチとなる。

いくら人気のワークマンだとはいえ、好調商品もあれば不調商品もある。好調商品はすぐに完売してしまう反面、不調商品は本部が想定しているよりもさらに長期間店頭やストックに残り続けるだろう。

だから「この店には〇年前のこの商品がまだ残っている」なんていう現象が容易に起きてしまう。

 

これが直営型のアパレル小売なら、期末には値下げして完売してしまう、完売できずとも在庫数をほとんど減らすことができる。

しかし、商品の所有権がフランチャイズ店に移ってしまうワークマンでは、本部から「〇〇商品は今年中に売り切ってください」という要請や指示はできても、強制することはできない。

 

また、店舗ごとに品ぞろえも異なっている。

 

 

一方、ネット通販だがこちらを運営しているのはワークマン本社である。

ネット通販用の在庫は当然本社が管理している。

そうなると、ネット通販で並んでいる商品と実店舗で並んでいる商品は大きく異なっている可能性が高くなる。

なにせ、フランチャイズの実店舗には本来完売しているはずの「〇年前の商品」が大量に並んでいる可能性もあるし、ネット通販に並んでいる品番を「そもそも仕入れていない(何を仕入れるかはフランチャイズオーナー次第)」という可能性すらある。

 

ネット通販専用ブランドの顧客なら「実物を見て買いたい」とは思わないだろうが、ワークマンの顧客層はそういう人ばかりではない。またこれほどの大手企業になっているのだから、マス顧客に利用されているということなので、マス顧客にそういう「ネットの画面だけでOK」という人はほとんどいない。

そうなると、実店舗と連動していないネット通販は使いにくいということに必然的になってしまう。

 

ユニクロやジーユーとて、店舗在庫とネット通販在庫は連動していない。

店舗で完売している品番がネット通販には残っていたり、その逆も頻繁にある。

しかし、「本来完売している〇年前の商品が残っている」という事態はないし、「今期の新作を〇〇店は仕入れていない」ということもない。

期初であるなら、ネット通販で見た商品を実店舗に行って試着したり、確認できたりする。

その結果、消費者としては利便性の高い方を選べ、ネット通販での購入者を増やすことができやすい。

 

現在のワークマンの体制だと、ネットと実店舗の品ぞろえが異なっていて、これがやりにくいということになり、ネット通販の売上高も他の大手ほどには拡大しにくいということになる。

実は先日のワークマン女子の内覧会で、ワークマンの本社の方々数人とお話をさせてもらったのだが、ネット通販の売上高が伸びにくい理由について質問されたので、上記のことをお伝えした。

気付いておられないようなリアクションだったが、恐らくは気付いていないふりだったのではないかと勝手に思っている。

 

昨年からのコロナ禍で、実店舗オンリーの危険性は証明され、セーフティーネットとしてのネット通販の必要性は周知された。

しかし、逆にネット通販ばかりに選択と集中しすぎても、例えば長期間に及ぶ通信不能の大事故が起きる可能性もゼロではないから、危険である。何事も「選択と集中しすぎ」てはいけない。

 

ネット通販についてワークマンとしては、もう少し拡大していきたいという考えはあるのだろうが、何事にも向き不向きは必ずあるので、フランチャイズ主体のワークマンの運営体制から考えると、セーフティーネット程度の活用の方が向いているのではないかと思う。

 

ネット通販に限らず、向いていないことを過剰にやりすぎる必要はないと個人的には思っている。

 

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