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南充浩 オフィシャルブログ

現在の体制のままでワークマンは今後も拡大が可能なのか?(後編)

2021年4月12日 企業研究 0

作業服店だったワークマンが、商品の機能性の高さを活かして、カジュアル・アウトドアの客を取り込んだことは、特筆されるべき妙手だったといえる。

まず、ある意味で、カジュアルへの進出はワーキングウェア業界の悲願でもあった。

このブログでも何度か書いたが、ワーキングとカジュアルは親和性が高く、昔の作業服の多くは現在のカジュアルウェアに取り込まれている。第二次大戦後のワーキングは機能性は高まったものの、あまりカジュアルには取り込まれなかった。

購入から一定期間が過ぎると必ず買い替え・買い足しがあるため、作業服業界は安定しているものの、カジュアルのように「ブーム」や「急成長」はあまりなかった。

そのため、パイを広げるという意味においては作業服メーカー各社はカジュアルへの進出を昔から目論んでいた。

例えば、一例を挙げるとディッキーズというブランドである。

ワーキングカジュアルの代表ブランドの一つだが、2019年にディッキーズジャパンは解散となり、グローバルの一環として日本にも標品が入ってきているが、ジャパンができる前はビッグジョンがライセンス生産をしていた。ビッグジョンがライセンス契約を結ぶ前は、作業服の大手メーカー自重堂がライセンス生産を行っていた。

しかし、それほどうまくカジュアル分野では売れなかった。

 

そういう業界の悲願を達成したのがワークマンだったといえる。

従来型の作業員の店としてのワークマンはそれほど忙しい店舗ではなかった。作業員が買いに来る時間帯としては平日だと早朝、昼休み、夕方くらいだろう。となると、平日は早朝から昼休みまで、昼休み終わりから夕方18時頃までは店は閑散としている。

この閑散時間帯にカジュアル客が買いに来てくれれば、店舗の売上高は純増できる。

非常に目の付け所がよく、積極的な販促、広報活動もぴたりとはまり、カジュアル客の取り込みに成功した。

 

ワークマンの2021年3月期第3四半期決算は、

 

売上高 831億200万円(対前年同期比16・1%増)

営業利益201億3200万円(同23・6%増)

経常利益212億7700万円(同21・4%増)

当期利益133億3600万円(同22・9%増)

 

とコロナ禍にあって、大幅増収増益を達成した。

また2021年3月期の通期決算見通しも大幅増収増益で

 

売上高 990億700万円

営業利益218億4700万円

経常利益233億4300万円

当期利益155億3900万円

 

となっており、売上高1000億円達成は目前である。

 

1000億円企業となったワークマンは、最早、作業服分野では想定できる客数をほぼ取り込んでしまったといえるだろう。

こうなると、さらなる成長を実現するためには、カジュアル客のさらなる取り込みが必要となる。カジュアル客にとっては、ワークマンはまだ新参者であり、知名度も極限まで高まっているとは言い難い。そのため、まだまだ拡大できる余地はある。あくまでも理論上は。

カジュアル客をさらに取り込むために、ワークマンプラス、ワークマン女子の店舗数拡大を打ち出しているのは周知の事実である。

 

当方が懸念するのは、フランチャイズ店のままで、ワークマンプラス・ワークマン女子を多数展開し、カジュアル客を取り込むということが果たして可能なのかどうかということである。

そのあたりを前回も言及した。

 

現在の体制のままでワークマンは今後も拡大が可能なのか?(前編) – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)

 

 

 

過去のベネトン、リーバイスストアなど有名ブランドがフランチャイズ形式で店舗網を広げたが成功はしていない。ベネトンは失速しほとんど名前すら聞かなくなってしまった。リーバイストアは徐々に直営店を増やしている。

カジュアルファッションを専門にやってきたベネトン、リーバイスですら成功しなかったフランチャイズ店による店舗網が、カジュアルの門外漢であるワークマンに上手くシステム構築ができるとは思えない。

 

フランチャイズというのは、商品はフランチャイズ店側の買い取りになり、在庫リスクも店が請け負う。9割以上がフランチャイズ店というワークマンは、一見するとチェーン店でありながら、その実は巨大な卸売りメーカー、卸売り問屋に極めて近い存在だということができる。

990億円の売上高も純粋な小売業としての売上高ではなく、卸売りメーカー・卸売り問屋としての売上高だということになる。

3~5年間の同一商品の継続というサイクルの長さは、作業服分野だからこそ可能なのであり、カジュアル分野では極少数の品番を除いてはこの手法オンリーでは通用しない。せめて1年に1度くらいは新型の投入が求められる。

それが、1年間で売り切る「20番」という品番の登場で、今後プラス・女子ではこの品番を拡大する必要に迫られるが、巨大な卸売りメーカー・卸売り問屋という性格の強いワークマンに対応が可能だろうか。

 

さらにフランチャイズ主体を継続すると、ネット通販が拡大できにくい、オムニチャネルという売り方ができない、という事態に直面することになる。

これは先日の内見会でワークマン本社の人にも申し上げたが、何らかの独自の新しいシステムを構築する必要がある。

 

某人気ファッションブロガーが

 

「ワークマンはネット通販と実店舗に並んでいる商品が一致しない」

 

という指摘をしていたが、それは当然である。なぜなら、ネット通販は本社が在庫も管理しているが、実店舗はフランチャイズオーナーが管理をしている。先ほども書いたが、ワークマンはフランチャイズ店に商品を売ればそれで終わりで、在庫の所有権はフランチャイズオーナーとなり、在庫の管理もオーナーが行う。

各店舗によって、仕入れた品番も数量も異なるだろうし、品番ごとの売れ行きも当然異なる。

そうなると、各店舗に残っている商品はバラバラである。本社がウェブの画面上に表示している商品が無くなっているフランチャイズ店も多数あるだろう。逆にウェブ画面でははるか昔に廃版になったはずの品番がフランチャイズ店に残っている場合もある。

これを解消しないことにはネット通販の拡大もできにくいし、オムニチャネルなんてものは夢のまた夢である。

ワークマンが「ネット通販なんて小遣い稼ぎ程度に売れればいいんですよ」というのなら、現行システムのままでもいいだろう。だが、そうではなくて「ネット通販も売上高50億円を目指します」とか「100億円を目指します」というなら、今の形態のままでは不可能である。

 

作業服から1000億円にまで上り詰めた手法は見事だったが、1000億円を越えてのカジュアル販売となると、これまでの体制・システム・手法・施策では上手く行かなくなる。

1億円の会社と50億円の会社と100億円の会社ではそれぞれに適した体制・システムがある。100億円になっているのに1億円のころのままのやり方では早晩破綻する。

1000億円を越え、伸びしろはカジュアル分野ということになれば、新しい体制を構築するほかない。新しい体制を構築できなければ、残念ながらワークマンといえども衰退がはじまる。

サイズが合わない服や靴を着用していると、窮屈で肩凝りや腰痛が起き、却って身体のどこかを傷めてしまうのと同様である。

 

ワークマン経営陣はそのあたりのところを見つめなおしてもらいたいと思う。

 

 

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