人工皮革&合成皮革は「エコレザー」ではない
2021年3月15日 未分類 0
最近、エコ・エシカル・サステナブル・エスディージーズが過剰に流行している。
本来、この4つの言葉は意味が違うが、はっきり言ってごちゃ混ぜで使用されているのが今の現実である。
だが、一部のトラウデン何某を除いて大多数の消費者は利便性・経済性が担保されない限りは、そんな冠を付けてもわざわざ買おうとは思わない。
これを「冠さえ付けたら売れる」と思い込んでいるメーカーやブランドがおかしいのである。
本来は違う意味であるエコ・エシカル・サステナブル・エスディージーズをごちゃ混ぜにしてメーカーもブランドもメディアも使用しているから、それに関連した言葉の定義もいろいろとおかしくなっている。
その一例としては「エコレザー」があるだろう。
個人的にメディアの報道を読んでいると「エコレザー」という言葉を色んな意味で使っているように見える。またそれに準じて各アパレルメーカーやショップ、ブランドもバラバラの定義、言い換えれば自社に都合のいい定義で使用している。
人工皮革や合成皮革を指して「エコレザー」と呼んでいる場合がかなり目につく。
しかし、何度もこのブログでも指摘しているように、ツイッターで識者が指摘しているように、ポリウレタン樹脂を塗布したタイプの合成皮革は決してエコではない。
早ければ1年半、遅くとも10年後には、どんなに丹念に手入れしていてもポリウレタン樹脂が加水分解し、劣化して剥離する。
本革とは異なり、リペアは不可能であり捨てるほかない。どこがエコなのだろうか?長く使えるという点においては本革の方がはるかにエコである。
ちなみに人工皮革と合成皮革も意味が異なる。
諸説はあるが、
人工皮革とは
超極細状のナイロンやポリエステル繊維を立体的に絡み合わせたうえ、ポリウレタン樹脂を浸み込ませて組成した「不織布層」があります。また、表面には大半がポリウレタン樹脂を用いた「表面樹脂層」を施し
一方、合成皮革とは、
編物や織物をベースにし、その上部にポリウレタン樹脂を厚く塗ったり、貼り合わたりしたものです。
人工皮革と合成皮革 | 生地の種類を知ろう | 東京都クリーニング生活衛生同業組合 (tokyo929.or.jp)
という違いがある。同じポリウレタン樹脂ながら人工皮革の方が合成皮革よりも劣化しにくいのではないかと思われる。
しかし、必ず加水分解するポリウレタンという素材を使用している点においては、どちらも何年か後に寿命を迎えることは変わらない。
実態から言っても、言葉の意味から考えても人工皮革・合成皮革を「エコレザー」と表記するのは完全なる誤りである。
では、エコレザーとはどういう定義かというと、
《FB用語解説》エコレザー エコな天然皮革の加工素材 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
生産過程で出た端切れなどを使用し、革を加工して革の質感や機能を持たせた素材。天然皮革であり、環境や人体への負荷を抑えるため、染料などの化学物質の使用を制限し、排水や廃棄物処理を適正に管理している工場で生産するなど基準を設けた、エコでエシカル(倫理的)な素材として採用するところが広がっている。日本では日本皮革産業連合会が日本エコレザー基準(JES)認定事業を運営している。
とある。
要するに、革の端切れや切れ端を集めて加工し、シート状にした物がエコレザーである。
本革の切れ端や端切れを加工しているわけだから、成分は本革と同じである。捨てる部分を集めて加工して再使用するから「エコ」なレザー(本革の意味)というわけである。
そして何よりも重要なのは、
以前はフェイクレザーを指して使うケースもあったが、今では使われなくなった。
という部分である。
要するに人工皮革・合成皮革はエコレザーとは呼ばないというのが正しいということになる。当然シンセティックレザーもエコレザーではない。
ご指摘があったので補足で埋め込んでおく。
日本エコレザー基準(JES)の認定要件は
・天然皮革
・排水、廃棄物処理が適正に管理された工場で製造
・臭気、化学物質(ホルムアルデヒド・重金属・・発がん性染料の使用制限)および染色摩擦堅ろう度に関する一定基準を満たす
なので、端革再利用じゃないです。https://t.co/odmfvL9FS1 https://t.co/uDKHh4PZgL— すずき村長/起業とブランド育成 (@szkjn) March 15, 2021
ご指摘があったので修正しておくと、繊研新聞の用語解説が一部誤っているようである。どこが違うかというと「端切れ」に限定している点である。
天然皮革であることは必要不可欠だが、それ以外の製造工程においてのエコな取り組みを指すとのご指摘だ。自分の記憶を掘り起しても、なめす際や染色する際に有害物質を極力使用しない本革を「エコレザー」とレクチャーを受けたことがあった。
とはいえ、最近、人工皮革や合成皮革を「エコレザー」と称して売っているブランドが驚くほど多い。
もしかすると「知らなかった」という人も相当数いるだろうが、「売るためにあえて使った」という人もかなり多いのではないかと思う。
そして、何度も以前から書いているように、革というのは、生物(哺乳類・鳥類・爬虫類・魚類)の皮をなめして作る。哺乳類で革にされることが多いのは、羊・牛・豚・馬・山羊である。これらがなぜ多いかというと食用に屠殺されるからである。
みなさんが「美味い美味い」と言って毎日食べている肉にされるからである。
肉を取った後には骨と皮が残る。この皮が「原皮」であり、これをなめし加工して革にするわけである。肉食が続く限り原皮は自動的に毎日生産され続けている。
この原皮を使用することのどこが「エコではない」のだろうか?当方にはさっぱりわからない。
それをビーガンが唱えるならまだしも、「焼肉大好き」とか「しゃぶしゃぶ大好き」とか言っている人間が「レザーはエコでない」と言っているのは全く理解ができない。
お前らが肉を食ってるから原皮は生産され続けている。レザー反対なら肉食もやめちまえよ。
レザーをつかわなければ、原皮は最終的にゴミとして処理される。それこそゴミの量は増えるし、処理費用もかかる。上っ面の感情論だけをさも崇高なスローガンかのようにぶち上げるのは有害でしかない。
これと同じ疑問を感じるのが「エコファー」という呼び名である。
従来通りの「フェイクファー」でええやんけ、というのが個人的意見である。ファー(毛皮)に似せた物を作るためには、さまざまな原料が使用できる。
しかし、当方が見た範囲でいうと、ポリエステルやアクリル、ナイロンなどの石油由来の合繊が使われることが多い。ウールも使用できるが、値段が高くなるからなのかあまり使用されていない。
セクスィな4代目政治家先生ではないが、ほとんど大勢に影響のないビニールレジ袋やプラスチックスプーンまでを追放しようとするほどに石油由来成分を排除する方向にある中で、石油由来の合繊の塊のフェイクファーを「エコファー」と呼ぶのは全く定義としておかしい。
こういう曖昧な諸々の言葉の使われ方を見るにつけても、欧米が主導しようとしているエコ・エシカル・サステナブル・エスディージーズは、次なる大量生産・大量販売を仕掛けるための単なる「緑の資本主義」ではないかとしか当方には見えない。
エコレザーという偽りの名で登録しているフェイクレザーのジャケットをどうぞ~