MENU

南充浩 オフィシャルブログ

「ファッション性の高さ」よりも「アニメコラボ」の方が売れやすい

2021年2月25日 トレンド 2

このところ、2回続けてアニメのファッションに対する優越性を書いてきたが、ちょうどたまたまそれに関連するニュースが報道された。

 

コラボが日本経済を救う? 「グッチ」×「ドラえもん」が百貨店各社で想定以上の大ヒット | WWDJAPAN.com

 

はっきり言って日本経済を救うほどではないと思うが、グッチとドラえもんのコラボが計画以上に売れたという。正直なところ、グッチとドラえもんのコラボ商品に対しては、まったく良いとは思わなかったし、当方の知り合いでも「あんなもん売れるのか?」という感想を漏らした人が多かった。

一見すると「テレビマガジン」か「てれびくん」の付録の財布ではないかと思うほどだ。

 

1月に発売された「グッチ(GUCCI)」×「ドラえもん」、「ロエベ(LOEWE)」×「となりのトトロ」の売れ行きは、有力百貨店の特選(ラグジュアリーブランド)バイヤーによれば、どちらも非常に好調だったという。

 

とのことだ。

売上高や前年比などの具体的な数字は示されていないが、これはWWDが忖度したわけではなく、海外ラグジュアリーブランドは自分たちの都合の良い部分しか開示しないから仕方がない。

海外ラグジュアリーブランドは概して基本的にディスクロージャーとは程遠いスタンスである。

 

「若い世代の、トレンドに敏感なお客さまにとてもよく売れた。『グッチ』のファンだけでなく、『ドラえもん』好きの方にもカードケースなどのエントリー商品が好評だった」と「グッチ」×「ドラえもん」について話すのは、伊勢丹新宿本店の高木隆人 婦人インターナショナルラグジュアリーマーチャンダイザー。同コラボの商品は阪急うめだ本店でも、「20代前半〜30代前半を中心に新規客を取り込むことができ、記録的な売り上げとなった。カードケースなどのスモールレザーグッズやTシャツ、パーカはほぼ完売した」(花谷典男ラグジュアリー商品統括部ゼネラルマーチャンダイザー)という。

 「グッチ」×「ドラえもん」については他百貨店からも、「想定していた以上の売れ行き」(高島屋の磯部直希 婦人服・特選・宝飾品部マーチャンダイザー)、「20~30代の新世代の外商顧客からの問い合わせも多かった」(そごう・西武の佐藤徹リーシング本部リーシング1部ラグジュアリー担当)といった声があがっている。発表された際は、そのあまりにも意外な組み合わせに驚きの声もあがっていたが、各百貨店で大成功となったようだ。

とのことで、「グッチ」の新規顧客開拓につながったといえる。

これはジブリとコラボしたロエベも同様だった。

「ロエベ」×「となりのトトロ」に関しては、1月8日から1階で同コラボの催事を行った松屋銀座本店いわく、「催事初日が緊急事態宣言の開始日と重なったが、オープン前には20〜30代のお客さまの行列ができた(注:密をできる限り避けて販売)。“マックロクロスケ”のミニ財布やカードケースなどが特によく売れた」(大野裕次郎 営業2部婦人2課長)。伊勢丹新宿本店、西武池袋本店、高島屋などからも同様の声があがっている。

ではどうしてこのような消費につながったのかということを考えてみたい。

高度経済成長期、バブル期から2005年ごろまで日本人はラグジュアリーブランドを渇望しており、小銭が貯まれば買うという人が多かった。ちょうど今の中国人都市部の人間と似たような精神状態だったのだろう。

この傾向は2000年代前半まで続き、その頃は女子高生がラグジュアリーブランドの財布やバッグを買うという消費行動が見られた。

こうした行動に対して、国内からは「下品でみっともない」という批判が相次いだ。また「ラグジュアリーブランドとは欧米では富裕層・上流階級の老人が買う物である」という事実も広く普及された。

その結果、無理をしてまでラグジュアリーブランドを買おうとする人は激減した。

これを「日本人は貧しくなった。中国人を見習え」みたいに批判する人もいるが当方はまったく賛同しない。それこそ欧米本国同様に社会が成熟化したという証であり、何ら卑下する必要はない。いずれ中国人も無理をしてまで買わなくなることだろうと思っている。格差社会の中国でも富裕層・上流階級だけの買い物になるのではないかと思う。

そうなると、これまでのようなシーズンごとの「純然たるファッション」の打ち出しだけでは、新しい顧客層は開拓できない。何せ、欧米でも日本でも「無理をしてまで高い服やバッグを買う必要はない」と大衆は思ってしまっている。購買を促す仕掛けとしては、これまでと同様の「ファッション性の打ち出し」では固定客は買いに来ても、新規客は動かない。

「マスキュリンでフェミニンなナンタラカンタラをイメージして、エッセンスには〇〇を添えて」

なんていう訳の分からないこれまで通りの説明では「無理をしてでも買いたい」と思う人は、欧米本国でも今の日本でも皆無に等しいだろう。もちろん当方もまったく思わない。

前回、前々回でも書いたようにファッションは数寄者のサブカル化しており、コアな愛好家しか買わない。逆にアニメは世代を越えて共通言語化しており、広くマスを動かすきっかけとなり得る。

だから、ラグジュアリーブランドですら、アニメの力を借りなくては、お得意のファッション性だけでは新規顧客の取り込みはできないというわけである。

あんなイロモノみたいな商品がどれほど売れるのか、と当方も含めて心配した人も多かったが、結局のところ「ファッション性の高さ」よりも「ドラえもん」の方がはるかに大衆の心を動かせたということになる。

これを見ても、ファッションはサブカルで、アニメがメインカルチャーだということがはっきりと分かる。

そんなニュースだった。

 

 

 

グッチ×ドラえもんとさらにコラボしたファッション雑誌をどうぞ~ コラボのコラボかよ(笑)

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/02/25(木) 9:57 AM

    何度か舞台を見たことのある20代後半の舞台役者のお姉さんで、大のドラえもん好きの方がいるんですが、その方もGUCCIxドラえもんの商品何点も買ってました。全然、売れてる訳でもないので、多分相当無理してるんだと思いますが、そういう人は結局はGUCCIの新規顧客にはならないんじゃないのかなぁ?と思います。ま、それでも若い世代にGUCCIのブランドをアピールするには役に立つんでしょうね。短期的には相当儲かったろうし。
    さすがラグジュアリーブランド、やることが違うw

  • とおりすがりの元・服売り より: 2021/02/26(金) 12:05 PM

    6年くらい前にSTUDIOUS(まだTOKYO BASEじゃなかった)のマネージャーと話す機会があったんですが、「うちはアニメコラボは鬼門なんだよね」と言ってました。
    STUDIOUSのアニメコラボというと、記憶にあるのが「るろうに剣心」と「攻殻機動隊」で、「るろうに剣心」のは商品を買ったほどなんですが、それほど売れなかったようです。
    「るろうに剣心」のコラボをやったのが確か2012年ごろで、STUDIOUSはまだまだ超マイナーショップでした。

    「るろうに剣心」は元からファンでしたし、ファンとしても服好きとしても、その「るろうに剣心」コラボの商品はとても心に刺さるデザインでした。
    しかし、いくらデザインがよくても、ブランドやショップの知名度、タイミング、広告の出し方などなどが噛み合わないと、単にコラボするだけじゃ難しいんだな、と感じました。

    いっぽうで、自分は20年くらいオタクをやってるんですが、ここ数年は単にアニメコラボの数が増えただけでなく、日常使用できるさりげないデザインのコラボが増えたなぁと思います。
    以前はアニメコラボ自体も少なかったですし、あっても「いやーこれは日常的には使えないな…」と思うものしかありませんでした。
    もちろん、今でも日常的に使うのが難しいデザインのものもあるんですが。
    以前から、もっと日常使いしやすいものが欲しいと思ってましたので、うれしい時代にはなったなとは思います。

    つまり、STUDIOUSは先走りしすぎたのかもしれません 笑
    たぶん、今やったらもっと売れてたんじゃないでしょうか。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ