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南充浩 オフィシャルブログ

服に興味のある人は少数派の数寄者だということ

2021年2月22日 トレンド 0

先日、こんなツイートがバズっていた。

 

 

ツイートは140文字以内なので詳細に著述することは難しいが、この見方に対して、短いながら当方は結構な真理を言い当てていると感じる。

世の中の多くの人は、そこまでファッションに興味もないし、ファッションひいては生地や繊維の知識を持ち合わせていない。

ファッション業界人と少数のファッション好きを除くと、多くの人は一々コーディネートを考えることすらめんどくさいというのが実態である。

逆にファッション好きとファッション業界人は、そのコーディネートを考えるというめんどくさい作業が好きなのだから、土台、マス層とは話が合わない。

ファッションに興味のない人を相手にした方がビジネス規模としては拡大しやすいことは、ユニクロとジーユーを見てもわかるが、ネット通販においてもZOZOTOWNよりも楽天の衣料品の取扱高の方が高いことを見ても分かるだろう。

はっきり言って、楽天のサイトのデザインはダサい。出店しているブランドも昔のジャスコの平場に納めているようなブランドが多い。

だからファッション業界人は一様に楽天はダサいと評価するが、洋服の取扱高は2019年の時点で、カッコイイとイメージされているZOZOTOWNの約1・5倍の6000億円くらいはあるとされている。

 

楽天のファッション関連流通総額は約6000億円でZOZOの約1.5倍――「Rakuten Fashion」発表会で三木谷社長が公表 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

 

両社ともコロナ禍で流通総額を増やしているだろうが、この差はそれほどは縮まっていないだろう。

要するにダサいと思われた楽天の方が、先行者メリットやポイントが貯まるシステムもあって、ファッションに興味のないマス層からすれば親しみやすいと考えられる。

現在は、ZOZOTOWNの業績がコロナ禍も手伝って成長しているが、それ以外の要因としては「楽天化」が挙げられるのではないかとも思う。

今、ZOZOTOWNを見れば1000~3000円台の低価格ブランドがひしめいている。有名なモノマート以外にも聞いたこともないような低価格ブランドがどんどん出店していて楽天みたいになっている。

当方は、画面を見て選ぶのもめんどくさいので楽天もZOZOTOWNもほとんど見ない。だが、マス層からすれば買いやすい低価格品が増えたし、いわゆる「気取っていない」ブランドが増えて、覗きやすく買いやすく感じているのではないかと思う。

 

逆に、業界人の中からは「ZOZOTOWNも楽天と区別がつかなくなったから、あまり買わなくなった」という声も聞こえてくる。

そういう人たちは、ブランドの直営サイトで購入するようになっているらしい。「ジャムの法則」でもあるように選択肢が増えすぎると選ぶのがしんどくなる。

 

物事は何事においても上達するには慣れることが最も効果的だが、ファッションコーディネートも慣れが必要である。

慣れるということは回数をこなすということで、いろんな服を着てみて組み合わせを工夫し続け、自己の姿をある程度客観的に見られるようになる(全身の姿見や画像によって)と、自分に合ったコーディネートが何となくわかってくる。

ただし、この作業はめんどくさい。マス層はこんなめんどくさいことに労力を割きたくないのである。

 

だから、コーディネート指南が商売として成り立つのだが、コーディネート指南においても、あまた存在する凄腕スタイリストや凄腕コーディネーターよりもド素人向けゆるゆるコーディネーター(色んな意味でゆるゆる)とかプチプラコーディネーターの方がビジネス規模を拡大しやすい。

 

2005年頃までのファッションブームを振り返ってみると、様々なジャンルが時期によって勃興したが、いずれもコアな愛好家をマス層が崇拝して追いつこうと努力して、安くはない商品を買いそろえていたという状態だったと感じる。ビンテージジーンズしかり、アムラーしかり、神戸エレガンスしかり。

しかし、そういう熱気が2010年以降はほとんど消え去って、「ファッションは数寄者・愛好家のもの」となっているのではないか。そして、こまごましたことを除けば見た目だけはブランド物とほとんど遜色のない低価格ブランドの蔓延によってますますファッションというのはコアな数寄者のものになっている気がする。

 

まあ、そんなわけで、ユニクロに限らず楽天やド素人向けゆるゆるコーディネーターのビジネス規模拡大を見ると、今、規模を追求するなら、ファッションに興味のない人をいかに取り込むかにかかっているのではないかと思う。

ファッション愛好家は数寄者だから、少数派であり規模の拡大にはあまりつながらないということを業界人は認識しておくと、ビジネスをする上では安全ではないかと思う。

そこを認識していないから業界人の提案や企画はマスに刺さらないのではないかと思うがどうだろうか。

 

 

 

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