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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズの価格幅は二極化でなく縮まっているのではないか?

2021年2月18日 ジーンズ 1

個人的な嗜好でいうと、ジーンズというパンツが好きでよく穿いていた。

往年のジーンズファンが持っていた「何やようわからんけど何となく好き」という部分も多いにあったが、便利だから多用するという部分もあった。

何せ、どんなトップスに合わせてもそれなりに見えるというコーディネイトにおける便利さがある。

また、しわくちゃのまま穿こうが、色落ちして穿こうが、破れたまま穿こうが、他人からは「変だ」とは見られないという便利さもある。

しわくちゃでも色落ちしても破れて擦り切れていても「奇異に見られない」という洋服はジーンズ以外ほとんどない。

業界紙記者当時は毎日ジーンズを穿いていたし、その後もほぼ毎日穿いていた。2005~2008年の3年間はジーンズ禁止の職場だったので、平日5日間は穿かなかったが、2008年以降はまた毎日穿くようになった。

しかし、2015年ごろからジーンズの着用回数が減ってきた。今では月に何度か穿く程度である。理由はさまざまある。

 

1,トレンドがジーンズではない

2,ジーンズよりも利便性の高いパンツが増えた

 

の2点である。2の利便性の高いパンツというのは主に機能性で、ストレッチ機能が充実したジョガーパンツやシルエット的に窮屈感のないワイドパンツなどである。

そんな当方からすると、2015年以降はジーンズという商品の価格幅が縮まったと感じる。

まあ、何でこんなことを言い出したかというと

 

《めてみみ》ジーンズの価格 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

というコラムを読んだせいである。

 

価格が大きく変動した服にジーンズがある。昭和の終わりに主流だったNBの平均的な価格は5900~7900円が主流だったと記憶している。ただ、当時でも「リーバイス」の年代物の古着だと、10万円台が当たり前だった。

平成に入るとプレミアムジーンズのブームが起こり、1本数万円という商品も多かった。だが、バブル崩壊を機に、上げ相場はここで一度終わり、手頃な価格に人気が集まった。90年代後半に台頭したユニクロはこの波を捉え、海外で大量生産して品質の安定した商品をそれまでのNBの半額くらいで売って業績を伸ばした。

価格の相場はその後も下落し続けた。リーマンショック後の09年にはジーユーの「990円ジーンズ」がヒットして低価格競争が激化し、最後にはディスカウンターのドン・キホーテが690円ジーンズを売りだした。

ただ、定価が1000円以下の商品は市場で定着せず、そのほとんどが姿を消した。販売量で最大手のユニクロを基準に考えれば、現在は3990円がジーンズの価格の真ん中と言えるだろう。

一方、専業ブランドやハイブランドが作る1本数万~10万円の商品も健在で、市場に一定残るコアな服好きの需要を担っている。他の商品と同様、価格と価値のバランスが中途半場な商品が淘汰(とうた)され、二極化が進んだということか。

 

短いので全文引用した。

まったくの間違いではないが、ちょっと事実誤認が含まれているように感じる。

もしくは「二極化」という結論ありきで書いたのかもしれない。

 

90年代半ばのビンテージジーンズブームによって確かにジーンズの値段は高騰した。リーバイスやエドウインなどの定番ジーンズでさえ1万円強の価格になった。

その後、変遷を経て2005年ごろから高額な欧米インポートジーンズブームとなって、百貨店のジーンズ売り場では2万円台~3万円台のジーンズがそれこそレディースを中心に飛ぶように売れた。

しかし、このブームも2007年で終わり、2008年からスキニージーンズブームとなった。スキニージーンズブームの当初は欧米インポートジーンズの名残もあって高額なブランドが注目されたが、リーマンショックの不景気も手伝ったのか、その後は逆にあまり高額ブランドは注目されなくなった。

その2009年にジーユーが990円を発表して一世を風靡したが、すぐさま市場から姿を消したのはコラムも指摘している通りである。

 

ユニクロのジーンズの価格は昔に比べると1000円値上がりしている。ユニクロがフリースブームを迎えたときに販売していたジーンズは2900円だった。それが今では3990円である。

またジーユーのジーンズの定価は年度によって上下動あるがだいたい2490円である。実に1500円の値上がりである。

一方、高額ブランドも残ってはいるが、2007年までのような勢いはない。コラムでも書かれているように一部の愛好家向けである。

またリーバイス、エドウイン、ビッグジョン、ボブソン、ラングラーの五大ブランドは確かに6900~8900円ジーンズを主力商品としていたが、90年代前半にもカルバン・クラインなどのデザイナージーンズブームがあり、デザイナージーンズは1万円を越えていた。余談だがボブソンがケンゾージーンズをライセンス生産していた時期もあった。

五大ブランドもビンテージブーム以降、定番品が値上がりして1万円台前半~半ばとなり、高額インポートブームが終了するまでその価格帯が続いた。

五大ブランドもほとんどが消滅ないし縮小し、現在規模を保っているのはリーバイスとエドウイン、それとエドウイン傘下のリーくらいだろう。

当方も2015年以降はあまり専業ブランドを顧みなくなったので定点観測しなくなったが、2010年代後半からまたリーバイスとエドウインの定番ジーンズは7000~9000円くらいが増えていた。25年かけて元に戻ったというところが実態ではないかと思う。

 

で、このように見てくると、二極化というのは何も今に始まったことではないし、それこそ2005年~2007年までの高額インポートジーンズブームのころが最も二極化していたといえるだろう。

今はどうかというと、2万円を越えるようなジーンズブランドの存在感は当時より薄まっている。またユニクロ、ジーユーは実質的に値上げしており、低価格層の底値は上がっている。

エドウインとリーバイスは元の価格に戻っており、言ってみれば2490~9000円くらいの価格帯にマス向けブランドが集まっているといえる。

ビンテージブームやインポートジーンズブームのころに比べると、むしろ価格の幅は縮小されている。

 

報道や記事というのはセンセーショナルに煽り立てた方が閲覧数や購読数、視聴者数が増えやすい傾向にある。しかし、そういう報道はミスリードを引き起こしやすい。昨年から続く新型コロナ感染症報道を見ればお分かりいただけるだろう。

格差拡大と言った方がウケると考えたのか、書いた人がそのように思い込んでしまったのかどちらかは不明だが、30年近くジーンズに携わってきたオッサンからすると「二極化がさらに進んでいる」という結論には違和感を感じてしまう。

 

定価7000円くらいのエドウインのジーンズをどうぞ~

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 comment
  • kimgonwo より: 2021/02/19(金) 12:21 PM

    EDWINの商品パンフの制作をしていたころは
    NYにヴィンテージ感のあるポジを購入に行ったものですが
    いまは めるるですからね
    時代を感じます

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