「マニュアル」は必要だが環境に応じたアレンジも必要という話
2021年1月28日 トレンド 1
繊維・アパレル業界は「属人的だ」と言われることが多いが、その通りだと昔から思っている。
しかし、他の業界も十分に属人的だといえる。何なら、法律の解釈ですら個人によって異なる。弁護士や検事、裁判官によって判決が変わることもしばしばある。
これは法律という絶対的な物ですら、解釈や運用が属人的なものだといえるからではないのか。
ビジネスにおける仕組みや理論なんて、当然、属人的にならざるを得ない。
だからどんなに優れたマニュアルがあっても、個人の経験や勘所が噛み合わないと上手くいかない。断っておくが、当方はマニュアル否定派ではない。むしろマニュアル肯定派である。
マニュアルがなければ、100%属人的になってしまう。マニュアルは必要だが、それを上手く運用するためには、属人的なノウハウも必要になる。
以前にもご紹介したが、ドン・キホーテの創業者の本がある。
ドン・キホーテといえば、独特の「圧縮陳列」で一世を風靡した。狭い店内に商品を積み上げて、それが店の面白さを引き立たせるというやり方だ。
しかし、小売店経験者から言わせると、「圧縮陳列」を部下に伝授するのは至難の業だと感じる。一度でも自分で店作りをされてみればそれが容易に理解できるだろう。
マニュアル至上主義者は「マニュアルがあれば大丈夫だろう」というが、店舗の広さ、形状、立地は千差万別で、今の大企業化したドンキならすべてを統一できるが、中小企業だったころにはそんな贅沢はできない。在りものの物件で店舗を作る。
そうなると、均一化したマニュアルでは対応できない。
本によると、そのころ、部下に任せた陳列では失敗し続けたと書いてある。マニュアルはあれど、コツを理解していないから、効果がなかったのである。
それを打開するためにどうしたのかというと、失敗しても部下に任せ続けて育成したと書いてある。
当方からしてもそれしか手はないと感じる。
たまたま、直近で読んだ記事で面白いのがあったのでご紹介する。
いきなり!ステーキが大量閉店、ニトリとくら寿司は急成長…「決定的な2つの違い」とは? | 文春オンライン (bunshun.jp)
タイトルだけ見ると、いきなりステーキのことかと思うが、実際は「チェーンストア理論」についての話である。
某エラい先生もチェーンストア理論の提唱者の渥美俊一氏に憧れたと仰っておられるが、当方も新卒で入社した当時、渥美氏の著書を教科書として会社から配られて読まされた経験がある。
まあ、それっきりなのだが。(笑)
当時の社長が渥美氏のペガサスセミナーに入会しておられたことを今でも懐かしく思い出す。
97年の金融危機以来、不況が続きチェーンストア理論の体現者だったダイエー、マイカルが倒産してしまい、チェーンストア理論は時代遅れだという風潮にもなった。
だから、完全否定して自分たちの感性の赴くままに店舗網を運営することが正解なのかというと、それは違うだろう。その後、感性経営したアパレルチェーンが一体いくつ潰れて消えていったのか。
では、チェーンストア理論は限界なのか?
ニトリはチェーンストア理論の優等生だ。似鳥会長は「人生の師匠」と呼ぶ渥美氏からチェーンストア理論を忠実に学んで実践してきた。コロナ禍にあっても34期連続増収増益と業績は絶好調を継続している。似鳥会長は先のインタビューでこう語っている。
「チェーンストア限界論が言われるのは、それができていないからだ。チェーンストア理論は正しい」
とのことで、これが正論だろうと思う。
基本的なマニュアル、ガイドラインとしてチェーンストア理論は必要で、それでは対応できない部分を現状に合わせてアレンジする必要があるということである。
記事にもこうある。
また法政大学の矢作敏行名誉教授は「店舗が地域や立地に合った品揃えや店舗運営をするのは当たり前。商品別・店舗別・地域別に売れているものがわかるのは、チェーンストアの強み。個店で最適な品揃えができるのもこの情報のおかげだ。個店経営はチェーンストア理論の否定ではなく、進化形だ」と述べている(『販売革新』2015年11月号)。
要は、時代の流れやトレンドの変化、経済環境の変化に合わせて、アレンジする部分は必ず出てくる。逆にそれがアレンジできなければ、組織もひいては国家も滅亡するだけの話である。
ただ、どうアレンジするかはひどく難しい。
下手にアレンジをすると組織の衰亡を早めてしまう。
またアレンジを施したことによって、必ず不利益を被る人間も出てくる。この人々の不満をどのように抑えつけるか、また発散させ納得させるか、という手腕も重要になる。
論語に
子曰く、学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)
という一節がある。
ほとんどの方は意味がお分かりだろうが、一応解説しておくと、
勉強をしても自分で考えなければ実際には役立たない、勉強をせずに我流で考えたことだけでは基礎がないので危うい。
というような意味である。
要するに、チェーンストア理論を学んで墨守してもアレンジしなければ危ういということである。別にチェーンストア理論に限らず、アパレル・繊維業界には「〇〇しておけば大丈夫」という人が多い。
昨今のEC崇拝にしかり、少し前のライフスタイル提案にしかりである。
ネット通販をすれば必ず売れるとか、ライフスタイル提案型にすれば必ず売れる、とかそんな都合のいい方策はない。そんなものがあるならこの世には億万長者が溢れている。
ネット通販にしろ、ライフスタイル提案にしろ、自社の顧客に合った方法を模索すべきでアレンジが必要である。それを理解していない経営者や幹部があまりにも多い。
最近だと「SNSをやれば売れる」「インスタグラムをやれば売れる」と安易に考えている経営者を頻繁に見かけるが、どのようにやるかが重要であり、SNSやインスタをやりさえすれば売れるなんてことはあり得ない。
不振企業はその辺りをもう一度考え直してみてはどうか。
そんな渥美俊一さんの本をどうぞ~
【法律の解釈ですら個人によって異なる】
ほんとそれっすねぇ。
小山昇って経営コンサルタントに民事訴訟起こされてから、色々判例(全く自分の訴訟とは関係無いのも含め)とか調べていたら、刑事事件では有罪になったのに、同じ内容が民事事件では無罪になってたりする事例まであって、どっちやねん?と思ってしまいますw
個々の事情に合わせてアレンジ必要というのも首肯しますが、件の小山氏は「私のやってることをそのまま真似しないとダメっ!そのまま真似できるのがレベル高い人!」と言って経営スタイル押し付けてますが、それに従ってた弊社は今期も半年間で1,800万円の営業赤字ですw