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南充浩 オフィシャルブログ

コロナ収束後も百貨店の主力は食品になるだろう

2021年1月27日 トレンド 0

今年の節分は2月2日である。

そういう意味においては、もうすぐ立春で、当方は2月2日には53個も豆を食べなくてはならない。ほぼ難行苦行である。

節分で食べる豆の数は「数え年+1個」である。昔の日本はゼロという概念がなく、生まれたときに全員1歳だった。立春で新年度が始まるからさらに1つ加えるというわけである。

なので、西洋式の数え方でいうと、今年の春には51歳になってしまう。

本当にジジイになったものだと思う。

そういうと決まって「人生100年時代だからあと半分残っていますよ」と慰められるのだが、肉体寿命は延びた人は多いが健康寿命は延びていない。

父母は比較的短命で弟はもっと短命だったが、父方の祖父母は94歳まで生きたし、母方の祖母は2年前に100歳で亡くなったので、長命だったが、やっぱり3人とも80歳代後半にはかなりヨボヨボになっていた。

それからすると、100歳まで生きていても残り15年くらいはほぼ身動きもままならないから、100歳まで生きるなんてあまり意味がないと感じてしまう。ある程度自由に動けるのは85歳が限界だろう。

 

そんなわけで、51歳を迎えるようになると肉体も衰えを感じるが、それ以上に気力も衰えてきていると感じる。

昨年はアベノ10万円が支給され、一昨年に比べて、洋服を買いまくった。ユニクロとジーユーの値下げ品がほとんどだから、所有する枚数はグンと増えた。

もうそうなると、加齢による気力の衰えも手伝って洋服を買うという意欲も衰えてきていることを自覚する。

 

若い頃には興味に任せて、高額品なんかも頑張って買ってみたが、家電製品やパソコンほど、明確な着心地の差もないことを身を持って体験した。

家電やパソコンなら「高いから使いやすい。便利」というのを体感できるが、洋服にはそこまでの明確な差がない。

高くても使いにくい、着心地の悪い物も珍しくないし、安い方が逆に使いやすい物も多い。

そこが洋服の魅力でもあるのだろうが、一般の人にはわかりにくく伝わりにくい。ファッション業界人の資質に著しく欠ける当方にとっては、使いにくい高い服なんてまったく魅力を感じられない。だから、ユニクロとジーユーの値下がり品で満足してしまうというわけである。

 

まあ、長々と書いてきたが、何が言いたいのかというと、マスの消費者の志向というのは、当方とほぼ同じなのではないかと思う。

例えばこの記事である。

 

2020年の百貨店売上高、25%減の4.2兆円 衣料品が食品に抜かれる | WWDJAPAN.com

 

コロナ禍もあって、百貨店売上高と百貨店衣料品売上高の落ち込みは想定内とはいえ、やはり衝撃を受けられた業界人も多いのではないかと思う。

 

2020年の全国百貨店売上高が前年に比べて25.7%減の4兆2204億円になったと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、1975年以来45年ぶりの低水準になった。

 

とあり、やはりは今春の長期休業がかなりの売上高減少を招いてしまった。2021年はまだ始まったばかりだが、恐らくはもう少し売上高は回復するのではないかと考えられる。

それにしても6兆円だった百貨店が5兆円を割り込んでしまった。2021年は順調に行けば5兆円台は回復できるのではないかと思うが、6兆円は難しいだろう。

今後、ワクチンの接種や特効薬によってコロナ禍を克服できたとしても、百貨店売上高が6兆円以上の水準に回復することはないだろう。

理由は店舗数の減少である。

業界人も含めて多くの人は、伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店などの旗艦店単体を見て、売れ行き云々を認識し語るが、いくら都心旗艦店が今後、回復したとして、百貨店全体の店舗数は毎年減り続けているから、百貨店全体の売上高が下がることはあっても伸びることはないということを念頭に置いていない。

地方店・郊外店はどんどん今後も減るだろうから、将来的に百貨店は大都市の都心旗艦店のみになるのではないかと個人的には見ている。

 

それよりも業界人にとって衝撃だったのは、食品の売上高が衣料品の売上高を越えたというところではないか。

 

衣料品の売上高は31.1%減の1兆1409億円で終わった。食料品が15.9%減の1兆3193億円だったため、商品別売上高で初めて衣料品が食料品に逆転された。

 

コロナ禍も手伝ったとはいえ、ついに衣料品は食品に逆転されてしまった。

・現代日本において、衣料品は必需品ではないが、食品は必需品である。もちろん嗜好品もあるが、基本的には食べなくては死ぬが、明日着る洋服がないという人はほとんどいない。

・また衣料品は値段の高低による差が分かりにくくなっているが、食品は「高い物は美味しい」「違いがわかる」物が多い。

・食品は食べてしまえば無くなるのでリピートされやすいが、洋服はよほどのアクシデントがない限りは何年も破損せずに着られる。当方の洋服在庫は溜まる一方である。

 

そのような理由に加えて、当方のように、もう洋服をすごく欲しいと思う人が少なくなっているのではないかと思う。特に百貨店の主要顧客である中高年層に。

コロナ失業やコロナ倒産で収入の減った人も少なくないだろうから、百貨店で高い服を買うことをやめる人もいるだろうし、ユニクロあたりを代替品に選んで何の不満も感じていないという人も多いだろう。

 

ファッションはたしかに楽しいが、高度経済成長期やバブル期のような「高額ファッション」「最先端トレンド」への「渇望」というのは、今、自分も含めた老若男女、ほとんどの日本人には無くなっているのではないかと思う。

コロナ禍以前の平日の百貨店の、食品売り場の賑わいと、4階以上の衣料品売り場の閑散を鑑みてもそれは明らかではないか。

 

コロナ収束後も引き続き、百貨店の主力商品は衣料品ではなく、食品になるだろうと見ている。

 

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