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南充浩 オフィシャルブログ

本革(レザー)はエコ素材だという話

2021年1月25日 トレンド 1

最近の環境対策は一気に「〇〇ゼロ」を目指そうとするような性急なものばかりで、現実的に実現性が低いものや、論理的に矛盾しているものが多く、SF小説の域を出ないと見ている。

その中の一つに、本革(レザー)廃止論があるのだが、本革の代替品として、今のところは合繊を主軸とした合成皮革・人工皮革が挙げられているが、他方で「石油製品削減」を訴えていることを考えると、意味がわからない。合成繊維のほとんどはレーヨンなどのセルロース系を除くと石油が原料になっているからだ。

まったく意味のないレジ袋を削減しながら、代替品として石油原料から作られるポリエステルやナイロンなどを使おうというのは論理的ではない。

 

皮革業界の人なら誰でも知っているが、本革の材料となる原皮は、食肉用に家畜を屠殺すると自動的に生産される。肉を取ったあとには骨と皮が残る。この皮がなめされてレザーとなる。

そのあたりのことを以前に寄稿した。

 

食肉を廃止しない限り原皮は自動的に生産され続ける | StylePicks (style-picks.com)

 

菜食主義者の人がレザーを廃止しろというのは賛成はできないが理解はできる。だが、最近は日本人でも肉好きの人が増えている。「焼肉大好き」とか「ステーキ大好き」なんて言っている人の中で「レザーを廃止せよ」と言っている人がいるなら「先にお前が肉を食うのをやめろよ」という話である。

 

で、肉を取ったあとの皮を廃棄するとどうなるかというと、ゴミが増えるだけになる。

「廃棄量を減少せよ」とか叫んでいる人は原皮の廃棄にも反対しなければならないはずである。論理的に考えられるならば。

 

で、このあたりのことを上手くまとめている記事がある。

これをツイートしてご紹介したところ結構拡散し、リプライをいただいたのだが、残念ながら当方が書いたものではない。(笑)

 

本革こそサステナブル|断言できる1つの理由 (dete-diary.com)

 

非常に読みやすく書かれているので、ぜひご一読願いたい。

 

牛革は捨てられる皮のリサイクル品

牛革の原料は牛の皮。つまりこれはお肉をとった残りのリサイクル品です。

牛革、豚革、山羊革などのレザーだけのために家畜を育てたり命を奪ったりすることはありえません
原皮は価格が安く、原皮目的で育てるメリットがないので考えられないです。

 

である。牛に限らず、豚、羊、馬、山羊などは食肉の副産物として原皮が生まれる。レザー目的で屠殺するかのように思っている人もおられるようだが、はっきり言ってコスパが悪い。

家畜の中では山羊が比較的小型だが、これとて大型犬くらいの大きさはある。これを皮のためだけに殺した場合、その他の部位の処理に非常に手間と時間がかかる。牛、馬になるとあの巨大さである。どれほど手間と時間がかかるかということになる。

そんなコスパの悪い産業は産業として成立しない。

 

レザーがエコ論者に危惧される最大の理由は「なめして」皮を革にする際の環境破壊だろう。

 

ちなみに、動物から取れた物は「皮」、なめしたあとは「革」と言う風に表記が変わる。

たしかに昔は有害な排液も流していたらしいが、

 

革製造業者以外の方は、革の製造業者を明らかにする必要があり、その業者による、「発がん性染料不使用」および「革製造排水および廃棄物の適正処理の遵守」などの証明書類と宣言書が必要になります。

革づくりが盛んな姫路市では、革をなめす時に出る排水処理にかかる経費を市が支援する取り組みを行っています。

かつては、革づくりが環境を壊していた時代もありました。ですが、今は排水、周辺環境、従業員の働き方への考え方も変わり、日々進歩と改善を続けています。

 

とのことで、実際にこの排水処理には結構な設備投資が必要で、それが続けられなくなったから廃業するというタンナーも少なくないと皮革業界に携わる人はいう。

 

で、レザーを排斥するとどうなるかというと、

 

皮を利用しないとこうなります。

  • 皮を焼却 ➡ 温室効果ガスが増える
  • 皮の廃棄費用がかさむ ➡ 肉の価格が上がる
  • すばらしい革製品がこの世から無くなる

 

とまとめられている。このうちの3つ目は当然のことなので、排斥論者は革製品が無くなっても何の痛痒も感じないだろう。感じないだろうから排斥論をぶち上げている。

注目すべきは1つ目と2つ目だろう。

 

原皮を焼却すればそれだけ二酸化炭素排出量は増える。二酸化炭素に温室効果がさほどあるとは思わないが、二酸化炭素削減論者からすると原皮は焼却せずに革製品にした方がマシということになる。

また肉食習慣が無くならないのであれば、当然、原皮の処理費用が肉の製造コストに上乗せされるから、肉の価格が上がることになる。

あと、原皮を焼却すれば、タンパク質を燃やすので、あの独特の嫌なニオイが発生することになる。

どんなニオイがするかは一度自分の髪の毛を抜いて、ガスコンロで燃やしてみればお分かりになるだろう。

 

これも以前に書いたが、ポリウレタン樹脂を塗布して製造する合成皮革の場合、必ず3~10年以内に加水分解が起こり、剥離が起きる。ねちゃねちゃに溶け出すという場合もある。

こうなると、合成皮革は修復不可能で捨てるほかなくなる。

 

一方、本革は適切な手入れを怠らなければ、何十年も使用できる。またレザー自体が破れたり穴が開いたりした場合でも修復は可能である。

 

「捨てずに長期間使うことがエコ」

 

という定義であるなら、合成皮革よりも本革の方がはるかにエコだということになる。

最近ではマッシュルームなどの新素材を使ってのヴィーガンレザーの開発が進められているが、現時点では、コスト的にも生産量的にも従来の本革に取って代わる物ではない。

将来的には物性も含めて改良される可能性は否定しないが、一足飛びに現時点で本革を否定することは、お花畑の空論に過ぎない。

 

エコにしろ、サステナブルにしろ、エシカルにしろ、ネット通販にしろ、電気自動車にしろ、最近はこういう「一足飛び」理論が多すぎてどれもこれもが胡散臭さしか感じられない。そんな理想郷は突然出現しないということを冷静になって考えてみてはどうか。

 

レザーのベルトをどうぞ~

 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/01/25(月) 11:06 AM

    最近、革靴にも興味出てきて色々調べてたら、この20年くらいで靴に使われる牛革の質はだいぶ落ちた上に値上がりしてるらしいっすね。日本のリーガルとかスコッチグレインとかも、良い革使った靴は定価が上がったとか。ちなみに革靴に穴が空いたりした時には薄い革パッチを当てて補修することもあるそうですが、チャールズ皇太子の靴がそういう補修をされて何十年も履かれてるそうで、補修革パッチのことを「チャールズパッチ」と呼ぶそうですw
    リンク先の記事にも出てますが、高級皮革は値上がりしてる一方、日本国内の鞣す前の原皮の価格は値下がりし続けてて危機的状況だとか(2020年半ばの情報)。

    【〈深刻化する原皮問題〉需要低迷に加え新型コロナによって業界は未曽有の危機に】
    https://www.ssnp.co.jp/news/meat/2020/06/2020-0611-1540-14.html

    って、さっきググって見つけたんですがW
    いろんな業界が厳しいんすねぇ。世の中、知らないことだらけです。

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