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南充浩 オフィシャルブログ

「相手は専門知識をあまり持っていない」という前提に立った方が低リスクではないかという話

2021年1月14日 回顧 0

時代が進むにつれて技術は進歩し、高度化するため、細分化され続ける。

1つのジャンルでも極度に高度化と細分化されるため、隣のことは専門外なのでよくわからないということになってしまう。

これは繊維、洋服以外のすべての分野に当てはまる。

例えば、医学でもそれぞれの分野に細分化されており、新型コロナ対策では感染症専門が主力となるが、同じ医者でも皮膚科医では役に立たない。そういうことである。

 

 

昨年末12月29日16時半ごろのことである。

年末大掃除の一つとして風呂場を掃除していた。風呂には湯舟のほかに、シャワーと水道をハンドルで切り替えられる蛇口がある。

湯舟や床を磨いて、シャワーを出して流し始めたその時、シャワーと水道を切り替えるハンドルのカバーがポロリと取れてしまった。

カバーが取れて、白いプラスチック製の芯棒が剥き出しになる。

慌てて、カバーを付けなおしてみるが、内部のロック機構が壊れているのか、嵌らない。

シャワーは止まらない。

 

原理的に考えて、白い芯棒をつまんで「止まる」の位置まで戻せれば、シャワーは止まるはずである。

そこでやってみたが今度は芯棒が固くて指でつまんだ程度では回転させられない。万策尽きて、たまたま広告が入っていた水道レスキューに電話をしてきてもらうことになった。

待つこと1時間半。その間シャワーは出っぱなしである。1時間が経過したころ、水道栓を見つけて閉めたのでシャワーは止まったわけだが、今度はトイレが使えない。

そんな状況で30分間待った。

水道レスキューが来てくれて、芯棒をペンチで挟んで回転させてシャワーは止まった。ここで水道栓を開いた。

しかし、ハンドル内部のプラスチック製のツメが欠けているため、元のようには戻せなくて、蛇口メーカーに連絡して部品を取り付けてもらう必要があることをレクチャーされた。

メーカーのサイトを確認すると、12月30日から1月4日まで年末年始休暇に入り、営業開始は1月5日とある。12月29日は17時まで受け付けていたが、すでに時刻は18時半でアウトである。

 

ここから、当方の年末年始はシャワー無しで湯舟のみで入浴する日々が続いた。

 

1月5日、朝9時にメーカーに連絡し、修理の手配をお願いした。これで山は一つ越えた。ただし、修理に来てもらう日程を今から調整しなくてはならないので、シャワー無し入浴はさらに伸びそうだった。

 

1月5日の夕方、蛇口メーカーの営業部の女性から電話があり、日程調整を行うことになった。

その時の対応は、水道蛇口のド素人たる当方にはちょっと理解不能な部分があった。

まず。

「新年業務を開始したところで、たてこんでいてすぐには伺えません」

 

である。まあ、そりゃそうだろう。続けて

「ハンドルカバーの部品だけをお送りするので、ご自分で取り付けてください」ときた。

これはこれでわからないではない。しかし、事前にメーカーの電話受付の人からは

 

「芯棒の内部も破損している可能性があるので、訪問費用はかかりますが、専門家に見てもらって取り付けられることをお勧めします」

 

と言われていたので、この対応には「え?」となってしまった。

「受付の人と言ってることが違っていておかしい」と指摘すると「訪問させていただくことにします」となり、1月12日に訪問日程が取れたので、1月12日に修理が完了し、シャワー無し入浴生活(湯船の湯を組んで身体を流していた)は14日間で終了することができた。

 

訪問修理してくれた担当者に「営業部の対応はおかしい」とあくまでもやんわりと伝えると、

「日々、蛇口を扱っていて自分の知識水準が当たり前だと思っていて、一般のお客さんにも常識として通用すると思ってしまっているんでしょうね」

との答えが返ってきたので、なるほどと肯いた次第である。

 

ちょっと前置きが長くなりすぎたが、これは自分自身も気を付けなくてはならないと改めて反省した。それと、繊維・洋服業界にも同様のことが言えるのではないかとも改めて思った。

糸の製造、生地の製造、染色加工、整理加工、織布、編み、縫製とどれをとっても専門性が高い。だから一般の客はおろか、同じ業界でも川下の人はほとんど川中までの知識がない。

だからそこかしこで川下業者と川中までの製造加工業者の対立や行き違いが絶えない。

そこだけをクローズアップすると、製造加工業者は善良な被害者に見えるが、製造加工業者も川下の状況や今のファッション傾向などを知ろうともしない悪癖がある。

例えば、半年ほど前のことだが、某大手原料メーカーのスタッフと雑談をする機会があり、「セシルマクビー」のことを当方が話題に上らせたのだが、

「インナー担当なのでアウターのことは全く知らない」

といわれて、流石に「は?」となったし、それくらいのブランド名は知っていて当然だろうとも思った。

 

こんな具合なので製造加工業者と川下の人間は同じ日本語を話していても噛み合うはずがないのである。ちょうど、当方と蛇口メーカーの営業の話が噛み合わないように。

 

現代社会は今更、専門性を捨て去り古代に戻ることはできない。

となると、相手は専門知識が乏しいことを前提として話さなくてはならないが、たまには引退した専門家が客になっていたりするから事態はさらにややこしくなってしまう。とはいえ、お互いが「知らない」ということを前提としながら少しずつ歩み寄るほか対応策がない。

 

今回のおかげで、自宅の蛇口について少し詳しくなったことを付け加えておきたい。(誰得)

 

 

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