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南充浩 オフィシャルブログ

%表示の「ナンタラ率」を指標に据えることの危険性

2021年1月12日 売り場探訪 1

新型コロナ感染の拡大という報道に伴い、店頭に立っていると、昨年12月下旬から客足は遠のいていると実感する。

今でも定期的に天神橋筋商店街の在庫処分店の店頭に立たせてもらっているが、はっきりいうと足腰は痛いし、その時間中はパソコンも触れないので仕事は捗らないが、それでもやっぱり在庫処分店とはいえ、店頭に立つチャンスを与えてもらっていることは感謝しかない。

サイゼリヤで週に1回、バイトをしている一つ星レストランのシェフの話が、時々記事に掲載されるが、当方は一つ星にも到底届かない程度の人間ではあるが、月に何度か他人の経営する店で実体験をさせてもらうことは、異次元人みたいなオバチャン客に面食らわされることもあるが、貴重な体験をさせていただいていると感じる。

生の消費者のざっくりとした消費者の雰囲気を体感できることはプラスでしかない。

当方のような虚業の人間は、定期的に現場に携わっていないと使い物にならなくなる。業界にあまたいるエラい先生方の指摘がイマイチピンボケなことが多いのは、定期的に店頭や営業現場に従事していないからではないかと感じる。

現場に従事しなくてもいいが、それなら広い意味での戦略や大きな意味での経営に特化した方が説得力が増すと思うのだが。

 

それはさておき。

 

コロナ報道が再加熱してからは、やっぱり人通りも入店客数も減っている。(1月11日までの体感)

当然、購買客数も売上高も減っている。

とりあえず、緊急事態宣言が発出され、大阪・京都も今日か明日から追随するようなので、当面2月7日までの客足は絶望的だろう。

そうなると、売上高も当然低空飛行を続けることになる。

 

コロナワクチン普及後の世論はどうなるのかわからないが、日本国内の衣料品市場規模は大きく増えることはないだろう。

どこか一握りのブランドが売上高を伸ばすことはあっても市場規模全体が拡大することはないだろう。そうすると、売上高の拡大を各社・各ブランドが実現することは不可能になる。

正直なところ、小売店の業務に従事してきた経験からすると、各店の販売員や店長は、本部や経営からは「売上高拡大」のノルマしか課せられないことが多い。

少なくとも27年前に入社して販売員と店長を務めた会社では、どちらの業務でも売上高の増減しかほか査定項目がなかった。店の営業利益とか粗利益高なんて聞いたこともなかった。

たしかに当方は不熱心な社員だったので、そんな言葉も知らなかったので聞きたいとも思わなかった。もしかすると尋ねれば教えてくれたのかもしれないが、多くの先輩や同期と話していても営業利益や粗利益高に注目をしている人なんて一人もいなかった。

しかし、今後、売上高を拡大することはそうそう望めないとすると、どのような指標が必要になるのか。

 

個人的には、「粗利益高」「営業利益額」のような具体的な金額を目標にすべきだと思っている。これは数少ない友人でもあるマサ佐藤氏の提唱していることが一番実態に沿っていると考えられるからである。

 

販売の仕事に従事されている方々に”粗利益”の重要性を伝えよう! | ファッションビジネス ・リテールMDアドバイス ・マサ佐藤 (msmd.jp)

 

確かに、”売上を多く獲得する!”ということは、粗利益を多く獲得するための最善の策にはなります。ですが、アパレル小売業の販売現場における”売上至上主義”は、もう限界なのではないでしょうか?それこそ持続可能な組織になるには、粗利益の重要性を実務者に教え、伝えること。

 

巷のアナリストたちが大好きな「ナンタラ率」という%表示による数字は、解釈次第でどうとでもできてしまうので絶対的な指標とはなりにくい。特に、イケイケドンドンの成長産業ではない衣料品という分野においては。

 

これまでの店頭の指標は売上高という金額と、売上高の昨年対比のこの2つだったと経験上感じている。

金額という指標はまだしも昨年対比(通称:昨対)は解釈を間違えると悲劇的な(カタストロフィ。カタルシスは全く違う意味)結末が待っている。

2015年ごろ、ライトオンの月次売上高が昨対で増加し続けていた。逆にユニクロは前年並みから微減が続いた。この時、経済系メディア、業界メディア、それに付帯したアナリストの面々は「しまむらとライトオンの好調、ユニクロ苦戦」と書き立てたが、実態は異なっていた。

特にライトオンはそれまで売上高が減少していたため、一昨年と比べると「やっと回復した」という状態であり、拡大基調ではなかった。

一方のユニクロは、これまで月次売上高が拡大し続けてきたため「足踏み」「踊り場」という状態で、決して後退していたのではなかった。

この見方が誤っていたことは、2021年の今ならお分かりになるだろう。

昨年対比の増減率だけで判断するとこのようなミスリードを引き起こす。これは何も衣料品ビジネスだけに限ったことではない。

例えば、昨年末に支持政党の世論調査が行われたが、日本共産党の支持率が2%だった。前回の支持率は1%だった。

数字のマジックを使えば「共産党の支持率は倍増した」と言えるし、それは正しい事実である。だが、母数から考えるとどうか?まともな分析ができる人なら「共産党の支持率は倍増しており、勢いがある」とは決して考えないだろうが、世の中はそんなまともな人ばかりではない。

ここに「ナンタラ率」を指標に使う危うさがある。

以前にも書いたが「プロパー消化率」はあやふやで、特にこれだけZOZOTOWNで毎日毎日割引クーポンがバラまかれ、タイムセールが行われ、楽天市場で定期的にスーパーセールが行われる状況下にあっては、プロパー販売の意味が形骸化されている。ここで行われている割引クーポンの配布やタイムセールは、販売管理費で計上されるため、商品としては「プロパー販売」としてカウントされる場合が多いからである。

 

また売上高や売上高の昨対を指標にしていると、実店舗でも売上高欲しさに、無用で過剰な値引き販売を行うことが横行しやすい。

 

それよりも粗利益高、営業利益額を指標とする方が、正しい状況を把握できるだろう。そして、それを店長、販売員クラスにまで徹底させることが必要だろう。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/01/12(火) 1:33 PM

    私のことを名誉毀損で訴えてる経営コンサルタントの小山昇も、自社のダスキン代理店の営業社員の成績を売上高で評価していたことがあったそうです。そうしたら、ずる賢い営業社員は利益度外視で値引きして売りまくって成績を上げて、ボーナス一杯もらったとのことw
    その後、小山も気が付いて売上高を成績にするの止めたそうです。小山の批判するのにいっぱい本を読んで詳しくなってしまう悲しみw

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