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南充浩 オフィシャルブログ

人気ブランド以外は福袋を作る意味がない

2021年1月5日 トレンド 0

あけましておめでとうございます。

2021年も新型コロナによる暗い出だしとなりそうである。

 

今年の初売りは新型コロナの影響もあり、1月1日を休業とした店も多かった。1月2日からのスタートとなったが、当方は1月2日は店頭を見には出かけなかった。

2015年ごろまで、毎年1月2日は朝9時半の開店からバーゲン巡りをしていたが、2010年ごろから、年々、バーゲンで買う枚数が減って行った。

最後の冬バーゲンではたった1枚か2枚を買っただけであり、これくらいを買うのに朝8時から用意をして出かけるのは時間的にもったいないと感じ、バーゲンに行くのをやめてしまった。

理由は2つ。

1、すでにたくさんの服を持っている

2、1月のバーゲンまで待たずともSPA方式と販売不振で毎月値下がりしている商品がある

である。

それでも2015年ごろまでは福袋人気もあり、開店前にはそれなりの行列ができていた。

 

とはいえ、個人的には、2010年代後半には福袋の人気も下火になってきたと感じていた。もっと正確に言えば、ブランド間で人気・不人気の格差が拡大したと感じていた。ありていに言えば、一握りの好調ブランドと大多数の不調ブランドがくっきり鮮明に分かれたという感じである。

人気のないブランドは福袋が正月5日を過ぎても残っているという状態が珍しくなく、「福袋さえやっていれば売れる」という状況ではなくなっていた。

そんな中、2019年1月からアダストリアは各ブランドで福袋を廃止した。英断だったと思う。

 

新型コロナ拡大後初めての正月販売だが、1月2日の初売りは苦戦傾向の店、施設が多かったと伝えらえている。恐らく、多くの人にとってコロナが後押ししたこともあるだろうが、正月早々に値下げされた服を買わねばならないという意欲は例年以上に薄れていたといえる。

理由は当方の2つに加えて、ファッショントレンド変化が一部のブランドを除いては、それほど急激ではないため、是が非でも買わねばならないアイテムが少ないということもあっただろう。また、ZOZOTOWN、楽天市場を始めとする大型ネット通販サイトも毎日割引クーポンやタイムセールが連発されており、正月まで待たずして欲しい物が割安で買えるという体制も整ってしまったことも大きいだろう。

 

当方は1月3日の午後3時頃に天王寺のあべのキューズモールと、梅田の阪急百貨店うめだ本店を視察した。視察したというとなんだかエライさんになったようだが、単に覗いただけのことである。(笑)

JR天王寺駅もJR大阪駅も決して閑散とはしていなかったが、昨年1月までと比べるとインバウンドが無くなったことも含めて圧倒的に人が少なく、適度な混雑ぶりだった。

ここ数年間のインバウンド増加は、電車の混雑や店の混雑ぶりは異常で、生活者からすると迷惑以外の何物でもなかったので、もうこのままインバウンドを規制してもらった方がありがたいと感じる。

 

1月2日に聞いていたほどの閑散ぶりではなく、あべのキューズモールと阪急うめだはそれなりに賑わっていた。

しかし、やはり福袋が不調なブランドはそれなりにあり、例えばザ・スーツカンパニーは、午後3時すぎにもかかわらず、販売員が声を枯らして福袋の呼び込みを行っていた。こういうブランドはもう来年から福袋を作るのをやめてはどうかと思う。

 

このあたりのことはBLOGOSにも掲載してもらった。

長年続いたお正月の「福袋」行列 今年はコロナ禍で様変わりも【2021年のアパレル業界を占う福袋商戦】 (1/2) (blogos.com)

 

今後は、福袋の売れ行きがイマイチなブランドは廃止した方が賢明ではないかと思う。

 

業界の川中の人はとっくにご存知だが、一部の川下の人のためと消費者のために書いておくと、福袋は売上高には貢献できる可能性が高いが(売れれば)、粗利益に関してはほとんど貢献できない仕組みになっている。

1万円で服が5枚入っている福袋があったとすると、大雑把に考えると1枚あたり2000円の店頭販売価格ということになる。

ということは2000円以下の原価で製造されたり仕入れたりされている物ということになり、決して「良い物」ではない。

以前、通常の店頭売れ残り商品を福袋に混ぜて炎上したブランドがあったが、商品としてのクオリティはその店頭売れ残り品の方がはるかに高いのが実態である。

 

もう少し細かく考えてみると5枚1万円の福袋にコート、セーター、シャツ、長袖Tシャツ、スエットが入っていたとする。

そうすると、コートはだいたい3000~5000円程度の店頭販売価格で製造か仕入れされていると考えられる。当然製造原価は1000数百円、仕入れ原価は2000円くらいということになる。はっきり言って、チープ品である。

コート4000円とすると、残りの4アイテムは合計6000円の店頭販売価格を設定して作られたり、仕入れられたりしているということになり、それぞれの店頭販売価格は1000~1500円程度で設定されているということになる。製造原価は数百円くらいだろう。これもはっきり言えばチープ品である。ユニクロの990円に遠く及ばないクオリティでる。

 

もう広く知れ渡っているが、アウトレット店がアウトレット専用商品をわざわざ作ったり仕入れたりしているように、福袋は福袋専用商品を各ブランドがそれぞれ作ったり仕入れたりしているのである。

2008年以前のように、売れ残り品を詰め合わせて販売するスタイルはとっくに無くなっている。なぜ、福袋が色別・サイズ別にそろっているかというと、それ専用に新商品をわざわざ用意しているからである。そしてその商品は先ほど述べた通り、チープな商品である。それでもブランド側はほぼ儲け無しだし、供給側もほぼ儲け無しで、誰が得をするのかわからない商品となり果てている。

 

今年前半くらいに新型コロナが収束したとしても、もう2019年1月までほどの初売りの賑わいは戻ってこないと考えられる。

福袋にしたって朝から並ぶよりは、事前にネット通販で予約した方が消費者にとってラクである。

ネット通販を希望の旗手のように見ている人は業界に多いが、正月バーゲンのありがたみを薄めている原因の一つがネット通販による毎日割引クーポンとタイムセールの連発であることは、少し冷静になって考えてみる必要がある。

 

アパレルは、正月バーゲン、福袋、夏バーゲン、クリスマスなどに頼らない、安易なAIに頼らない、毎月の緻密で精度の高いマーチャンダイジングが必要不可欠となり、どんぶり勘定のメーカーやブランドは今後さらに消え去るのみになる。

 

 

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