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南充浩 オフィシャルブログ

その取り組みって本当に「エコ」なの?

2020年12月17日 素材 3

環境問題への対策は不要だとは思わないが、最近の「エコ」関連の取り組みはちょっと意味不明なものが多いと感じる。

例えば、ユニクロとジーユーのレジ袋である。レジ袋有料化は個人的にはナンセンスの極みだと思っているが、国が推進しているので従わざるを得ないことは理解できる。

ユニクロとジーユーはビニール製をやめて紙袋にしたが、紙袋なのになぜか有料である。これだけなら百歩譲ってまだわからないではないが、オンライン通販で購入して店舗受け取りにした場合、なんとこの有料の紙袋は無料でいただけてしまうのである。これは全く納得がいかないし、ダブルスタンダード、通称ダブスタでしかないと感じる。

これ、本当にエコな取り組みなの?

 

先日見かけたこのアディダスの記事も同様で、一見するとエコに見える人も多いと思うが、冷静に考えてみるとちょっと首を傾げたくなる。

 

「アディダス オリジナルス」がスタンスミスを刷新、すべてリサイクル素材に (fashionsnap.com)

 

「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」が、サステナビリティの観点から「スタンスミス(STAN SMITH)」のすべての商品をリサイクル素材に切り替えると発表した。新作は12月14日の今日から販売を開始。アッパーにレザーを使用した旧モデルは、在庫がなくなり次第販売終了となる。

 新モデルは、シルエットはそのままにアッパーにはプレミアムPUコーティングを施したリサイクルポリエステル素材「PRIMEGREEN」を採用。アウトソールは天然ラバーで仕上げ、ライニングやシューレース、補強材などにも全てリサイクル素材を使用している。

(中略)

2024年までにすべての製品においてバージンポリエステルの使用を廃止し、リサイクルポリエステルに切り替えるという。

 

とのことだが、レザーを使わないことがどうしてエコなのか正直なところまったくわからないだけでなく、その代替素材に一番引っかかってしまう。

 

アッパーにはプレミアムPUコーティングを施したリサイクルポリエステル素材「PRIMEGREEN」を採用。

 

という部分である。

PUコーティング自体はありふれているが、「プレミアムPUコーティング」なるものはちょっと耳にしたことが無い。そこでネットでググってみたが、具体的に説明している記事はなかった。恐らくはアディダス側からのプレスリリースを各メディアはそのまま書き写したのだろうと思う。

詳細がわからないので、「通常のPUコーティング」と同じ物だと仮定して考えてみる。

PUコーティングは、ポリウレタンコーティングの略である。

ポリウレタンというと、ストレッチ素材として知られているが、用途は糸にするだけではない。コーティング剤としても頻繁に利用されている。

統計を取ったわけではないが、体感的にいうと、現在、広く流通している合成皮革商品のほとんどは材質に「ポリウレタンコーティング」が使われている。

手短にまとめると、生地の上にポリウレタンをコーティングした物が「合成皮革」として流通しているケースが多いのである。

そして、ポリウレタンを塗って作られた合成皮革は、だいたい早ければ3年、遅くとも10年くらいすると表面のポリウレタンが劣化して剥離する。下地となった基布が剥き出しとなる。

ボロボロに剥離した合皮はリペア不可能である。

ポリウレタンというものは、非常に便利である反面、必ず劣化して壊れる。

ポリウレタン混のストレッチ生地だって、何年か後には必ずポリウレタンが断裂してストレッチ性がなくなる。手元にあるポリウレタン混のストレッチパンツは今のところほとんど無事だが、3年ほど前のこと、購入してから13年くらいが経過していたストレッチデニムのストレッチ性がついに無くなってしまい捨てた。リアルにストレッチ繊維が断裂してノンストレッチになったズボンを初めて見た。

ポリウレタンを塗ったものの劣化はさらに早い。

何年か前にユニクロで折り畳みではない普通の傘を買ったことがある。そういえばユニクロは最近は折りたたまない傘を販売していない。何か不都合があったのだろうか。

で、その傘の柄はポリウレタンコーティングされていたのだが、1年半くらいすると、溶けだしてネバネバになってしまった。最初は暑さで溶けたのかと思っていたが、気温が下がってもネバネバしたままだったので、ポリウレタンの劣化だと思い至った。

同じく最近見かけなくなったユニクロのネオレザージャケットだが、これもポリウレタンを塗った合成皮革なので、下げ札に小さく「3年くらいで劣化します」と書かれてあった。3年で劣化するのなら、はっきり言ってコスパが悪いし、エコでもない。

 

さて、何が言いたいのかというと、アディダスがアッパー素材のレザーを廃止して、ポリウレタンコーティングだと思われる素材を採用することのどこがエコだというのだろうか?

レザーならある程度リペアが可能だが、ポリウレタンコーティングはリペアが不可能である。これは他のアウトドア系の記事でも明確に説明されている。

そして恐らくは耐久年数はポリウレタンコーティングよりレザーの方が長い。

さらにいえば、牛・豚・羊のレザーは、食肉用として毎日屠殺されているので、原皮が自動的に生産され続けている。その使用量が減るということは原皮というゴミが増えるということであり、ゴミを増やすのは果たしてエコなのかという疑問がある。

公害をどんどん垂れ流せやとは全然思わないが、エコの取り組みの多くはダブスタだったり机上の空論だと感じられるものが多く、個人的にはほとんど賛同できない。

 

 

胸の「D」マークが「エコ」に見えてしまうダイデンジンの超合金をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/12/17(木) 10:51 AM

    牛革とか100%が食用で殺された牛さんの皮から作られてるっての知らない人多いっすよね。
    コレは、銃のホルスターとかナイフの鞘とかに牛革使われてるので、服飾のニワカ知識以前から知ってましたw
    あと、皮を革にする時には普通に水洗いしてて、本来は革は水に弱くもないそうっすね。染色とかでシミになる問題はもちろんありますが。オールデンとかのコードバンでさえ、後の処理をちゃんとすれば水洗いできちゃうようっすね。しかし、今後はスタンスミスの革製のヤツはプレミアム付きそうw

  • BOCONON より: 2020/12/17(木) 6:26 PM

    僕も昔安いボストンバッグ買って,長い事放っておいたのを引っ張り出したら加水分解してボロボロになっててびっくらした事がある。それ以来ポリウレタン使った商品は買わなくなりました。

    レジ袋なんてものは,言わば “端材” を使って作っているので,むしろエコバッグなんてわざわざ作るよりよほど「エコ」だ。割り箸と同じですね。「プラスチックごみが海を汚染する」というのは嘘ではないが,それならレジ袋やペットボトルなんて処理場の焼却炉で燃やしてしまえばいい。と言うより事実上それ以外に処理の方法はない。ダイオキシンなんて今どきの焼却炉は出さないし。そもそも本気で汚染対策したいなら,たとえば中国のゴミの海洋投棄を・・・って,まあ僕なんぞがこんな事を言っても誰も真剣に聞きゃしないからむなしいだけですわな。
    世の中ほとんどの人間にとって(自分でどう思っているかは知らないが)事実上「テレビが言わない事はないのと同じ」だからどうにもなりませんね,こういう問題は。

  • ビギナー より: 2020/12/17(木) 10:35 PM

    記事を読んでいていつも思うのですが、批判されている企業側(今回だとアディダス)の人は南さまの意見をどう思っているのでしょうか?
    企業側のコメントも掲載して貰えると、記事がより読み応えのあるものになるかと。

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