MENU

南充浩 オフィシャルブログ

インドで大規模なオーガニックコットンの不正認証が発覚

2020年12月15日 メディア 1

個人的には、オーガニックコットンに何の興味もない。

しかし、熱狂的なオーガニックコットン愛好家がいるのも事実で、愛好する人に対して「やめろ」とは思わない。好きな物は好きで構わない。逆に愛好家の中の一部が、それを愛好していない人々に押し付けてくるのはまったくもって鬱陶しい。そういう押し付けは断固として拒絶する。

 

オーガニックコットンというと、多くの人は「高額な素材」だと認識している。当方も同じだ。

農薬を使わず化学肥料も使わないということは、手間暇がかかっている。おまけに収穫量も通常栽培の綿花よりは少ないだろうから、普通に考えれば高額になる可能性の方が高い。

だが、もしかすると農薬代や化学肥料代がかかっていない分、外野が想像するよりはコストが安いのかもしれないとも思うが、まあ、手間賃を考えると、高くなるのではないかと思う。

 

にもかかわらず、世の中には安いオーガニックコットン製品が珍しくない。無印良品が筆頭だろうし、以前はH&Mにもあった。

これに対して疑問を感じた人も多いのではないかと思うが、その理由の一端はこの繊維ニュースの記事で解決できるだろう。12月7日の記事である。

 

THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース (sen-i-news.co.jp)

「オーガニックコットン/インドで不正認証が発覚/供給不安定化で価格高騰」

オーガニックコットンの有力生産国であるインドで10月下旬にオーガニックコットン認証の大規模な不正行為が発覚した。この影響で一時的にオーガニック綿花・綿糸の出荷が停滞し、価格が急騰している。

 オーガニック繊維の国際的な認証組織「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)」は10月30日、インドで偽造原綿取引証明書に基づいてオーガニックコットンとして売買されている綿花を確認したと発表した。不正行為に関与していたインド企業11社に対して認証の取り消しと今後2年間は認証申請を拒否する処分を発表している。

とのことである。

当方は「不正認証があったから低価格で使える」ということが言いたいわけではない。

理由はこの記事の末尾にある。

 

オーガニック綿花は米国、インド、トルコ、一部のアフリカ諸国などで栽培されているが、米国はほとんどが需要家との契約栽培。このため国際市場で自由に売買されるオーガニック綿花ではインドが大きなシェアを持つ。それだけに今回の不正のインパクトは大きい。

 

この部分である。

要するに、当方も含めて多くの方が思い描く「高額なオーガニックコットン」の多くは契約栽培している米国産だということで、フリーで売買されるインドやトルコ、一部アフリカのオーガニックコットンが低価格製品に使用されるのではないかと考えられる。

いくら、オーガニックですとか無農薬ですとか言ったところで、フリーで売買される物であるなら、需給バランスによって価格は変動する。供給量が多ければ値下がりするのは当たり前で、それを手当てすれば、低価格ブランドでも使えるということに理論上はなる。

 

さて、順番が逆になって申し訳ないが、興味深い記事なので他の部分もご紹介したい。

インドでは以前から通常の綿花がオーガニックコットンと偽って売買されているとのうわさが絶えなかった。GOTSが大規模な不正行為を確認したことで疑念が一段と強まった。オーガニックコットンを取り扱っている業者は自社の取扱品が適正に認証を取得したものかどうかの確認に追われることになり、新規の認証作業も事実上ストップしている。

とある。

これはオーガニックコットンに限らず、様々な素材や食材にも同様の疑惑・うわさがある。

他の素材や食材では

「市場に出回っている総量を合計すると、〇〇(素材名・食材名)の採取量を遥かに越える」

という疑惑や噂が少なくない。

低価格オーガニックコットンの普及?氾濫?も不正認証分が含まれていたではないかと考えられるだろう。

 

このため一時的にインドのオーガニック綿花・綿糸の取引が停滞し、供給が不安定化したことで価格も高騰している。綿花商社によるとオーガニックのインド綿は現在、供給の端境期であることも合わさって6~7月と比べて20%以上の価格上昇となっている。

インド糸を得意とする商社によるとオーガニックのインド綿糸も40番手コーマ糸で9月は1キロ当たり3ドル60セント前後だったものが現在は4ドル60セントと、やはり20%近く上昇した。加えて不正発覚前は通常の綿糸価格に対して1キロ当たり10セント程度のプレミアムで売買されるオーガニック綿糸が存在したが、値差が50~60セントにまで拡大するなど市中から安値玉が姿を消している。

 

とのことで、取り締まりが強化されれ、取引が停滞すれば、供給量が減るので当然値上がりする。大手低価格ブランドなら、昨年や一昨年から「安値玉オーガニックコットン」を抑えているだろうから、しばらくは現在の低価格オーガニックコットン製品は市場から姿を消すことはないだろう。しかし、この状態が長引いたり、取引再開後の供給量が減ったりすると、大手低価格ブランドの安値オーガニックコットン製品は、徐々に市場から姿を消すことになると考えられる。

 

ではどうしてオーガニックコットンの不正認証が容易に長年続けられてきたのかというと、オーガニックコットンと通常栽培コットンの成分的違いの無さが大きいと当方は考える。

例えば、12~13年前のカシミヤ偽装事件があったが、成分を調べればカシミヤなのかアクリルなのかはたちどころに判明する。極細番手のウールとカシミヤは区別できにくいと言われるが、合繊であるアクリルやポリエステルなら成分が異なるから、確実に判別できる。

だが、オーガニックコットンと通常栽培コットンに成分の違いはない。だから、オーガニックコットンに「〇〇(肌荒れなど)効果があります」という表記は法律で禁じられているのである。これはいくら、一部の愛好家が必死で反論しても事実なのだから動かしようがない。

成分に違いが無いとすると、偽装するのは容易になる。

今回の不正認証はそれを最大限に生かしたやり方ではなかったかと考えられる。

 

今後、市場に出回る低価格オーガニックコットン製品がどのように推移するのか、興味を持って注視したい。

 

 

セシールのオーガニックコットン製品をどうぞ~

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2020/12/15(火) 12:42 PM

    最近炎上騒動を起こしたナイキとかパタゴニアとか,エコやリベラルを売り物にしている企業というのは陰で何をやっているやら知れたもんじゃありませんね。彼ら “良心的” な企業は得てして人種差別主義者だったりする。オーガニックなんてのも,発展途上国のひどい低賃金労働がなければ採算が取れるわけもない。10年ほど前南さん自身がここでお書きになった,無印良品のオーガニック偽装(と敢えて言いましょう)とかも。そもそもこのご時世(ごく一部の肌の弱い人等以外には)オーガニックである事なんて訴求力ゼロに近い。無印良品の服が質素に見えて変にひねったデザインだったりして迷走気味なのもこういう事と無関係ではない気がする。既製服なのに袖が本切羽で直しが非常に高くつくツイード風ジャケットとか,防寒衣料なのに丈を短くして「カッコ良く」したフリースジャケットとかね。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ