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南充浩 オフィシャルブログ

繊維・アパレル業には算数と化学が必要不可欠

2020年11月26日 製造加工業 0

繊維の製造加工業は感性も必要だが、基本的には化学と算数が必要不可欠でその比重は高い。尤も、ファッションブランドでも経営や営業、販売には算数は必要になる。

基本的な四則演算(加減乗除)である。

特に百分率と割合、分数、小数は必要不可欠でこれができない人は小学校の算数をやり直した方がいい。

製造加工業はそこにさらに化学が加わる。染色・整理加工などは化学の塊である。

パターンは専門外だが、これも横で見ている限りにおいては算数が必要不可欠である。

織布・編立、紡績も同様で、算数から逃れることはできない。

 

一方、業界の「川下」で暮らしている人は算数が苦手で「感性」重視型の人が多い。またそういう川下への就職を目的としてファッション専門学校にやってくる生徒たちも感性重視型で算数が苦手な者が多い。

まあ、尤も、次男が通っている立命館大学にも内部進学なのか特別推薦なのかで入ってきた学生は百分率がわからないらしく、そういう者を集めた特別クラスがあるという。(笑)

いくら文系とはいえ、それで立命館大学に進学できてしまう今の世の中に驚いてしまう。

 

さて、そんな「川下」の人たちもSPAやD2Cを手掛けると、製造加工業者と接触せざるを得ない。商社の製品部やOEM・ODM業者、振り屋が仲介してくれるとしたって、自分たちのやりたいことを最低限、その仲介業者に伝える必要がある。

仲介業者は翻訳をして製造加工業者に伝えてくれるが、完全丸投げでノータッチでは済まされない。

例えば、ボーダー柄のカットソー生地が欲しい場合、そのボーダー柄の太さはどれくらいとか、間隔はどれくらいかを仲介業者に説明する必要がある。

遠くから見てほとんど無地に見えるほどの細かいボーダー柄なのか、はっきりくっきり見える太いボーダー柄なのか、そういうことは川下の人間がジャッジして仲介業者に伝える必要がある。

しかし、川下の人間は化学はおろか、算数も弱く、おまけに生地や糸の構造や工程を理解していないため、その指示が極めて伝わりにくい。

また川下側が中途半端に知っている場合は、さらなる悲劇を招く。まさに生兵法は怪我の基である。

 

そんな具体例を山本晴邦さんのブログからご紹介しよう。

「ミラノリブとポンチ」

https://www.ulcloworks.net/posts/11699224

 

ミラノリブという編地組織とポンチという編地組織の違いについて書かれているが、まあ、はっきり言って半分くらいは理解できない。

ただ、編地に興味のある人は我慢して読んで暗記してもらいたい。必ず役に立つ。

見た目は結構似ている編地だが、ミラノリブは3段、ポンチは4段になっていてミラノリブはフライスの親戚で、ポンチはスムースの親戚という違いがある。

 

で、生地依頼するときの日常茶飯事が描かれている。

 

普通に生地生産の仕事してて、そのポジションによるが、ボーダーというシマシマを作る依頼をもらう時、普通はcmでピッチの指示がくると思う。そしてそのcmに対して編み目数をいくつはめ込んだら依頼に近いピッチを作ることができるのかというのが生地を作る人たちの仕事だ。

随分と前から、僕らがボーダーの指示を受け取る時は、相手がアパレルメーカーだろうが、テキスタイルコンバーターだろうが、ほとんどがcmの指示でくる。それに対して目数を当て込むから多少増減が出る。これは概ね理解してもらえる。

 

どうだろうか?ご理解いただけるだろうか?

通常、我々(自分も含める)はボーダー柄のピッチ幅をだいたいのセンチメートルで指示する。しかし生地を作る方は「目数」で数える。目数は完全にセンチメートルに対応しているわけではないから、我々が思い浮かべるセンチメートルに近しい目数を当てはめて生地を編むということになる。

生地製造は編みに限らず、こういう翻訳作業が常になされているわけである。

 

で、問題は生兵法者である。

が、ちょっと編み物知ってるよって人は、このボーダーピッチの指示を目数でやってきたりする場合がある。これはかなり厄介になる。

でもミラノリブとポンチは、縦横綺麗に目が並んでるし、組織の雰囲気もフライスとかに近いからなんか目数拾ったらプロっぽい指示ができそうな気がする。そこが落とし穴だ。

組織がどうなっているか理解せずに編み地の目数だけ拾って指示すると、ミラノリブの場合は2/3のピッチ、ポンチの場合は1/2のピッチに仕上がってしまう。なのでミラノリブとポンチの組織はそれぞれをしっかり理解してからコース指定するのが良い。

 

とのことである。

手持ちのユニクロ&ルメールのミラノリブジャケット

 

 

 

 

目数までを理解しているということはそれはそれで素晴らしいが、しかし、それを川上に対して使いたければ、それぞれの編地組織がどのようになっているかを理解する必要がある。目数という言葉を使って「プロ感」を出したい程度なら、失敗につながりやすいので使わない方がいい。そんなものはちっぽけな承認欲求でしかない。

これで生地作りをやり直した場合、失敗作のコストが本来であればブランド側が吸収しなくてはならなくなる。まあ、吸収せずに押し付けるブランドもあると多々耳にするが(笑)

こういう不要な失敗によるコスト増大は実は繊維・アパレル業界には少なくない。

業界は高コスト体質とか低利益体質といわれるが、こういうほぼ人災ともいえる失敗分もそこには含まれていることを忘れてはいけない。

それゆえに、製造関係に踏み込むのであれば、算数と化学、それから基本的な各分野の知識を身に着ける必要がある。

 

 

ナノユニバースのマーセライズ加工のミラノリブをどうぞ~ マーセライズ加工はシルケット加工と同じって知ってる?(笑)

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