原料の価格が店頭に並ぶ服にどのような影響を及ぼすかをざっくりと説明してみる
2020年11月16日 素材 4
天然繊維は気候や天候に出来高が大きく左右される。
日照りや洪水、気温の上昇や低下などなどである。この数年、綿花の値段は安定しているようで、大きく値上がりしたとも値下がりしたとも聞かない。
一方で、ウール(羊毛)の値段は値上がりし続けてきた。2019年末までは。
綿花
じゃあ、これらの原料価格が洋服にどう反映されるのかということを今回はざっくりと考えてみよう。
まず、綿花だが、値段がそれほど高くない状態で安定しているからこそ、低価格ブランドの厚手Tシャツ、厚手スエットが増えているのではないかと思う。
例えばジーユーである。
今夏、当方はジーユーのブランドコラボ半袖Tシャツを何枚も買った。何枚か買ったではなく、何枚も買ったのである。
もちろん、値下がりしてからである。
買った価格は390~990円で、ジーユーのTシャツに1000円以上支払う気は毛頭ない。
スタジオセブンも買ったし、ソフとのコラボの1MWも買った。ハンテンもエヴァンゲリオンも買った。
特徴はそのどれもがかなり厚手の綿100%天竺を使用していたことである。恐らくは6オンスは越えているのではないかと思われる。
2011年頃にかけて綿花価格が史上最高値にまで上り詰めたのだが、その当時、低価格ブランドは
1、綿100%でテロテロの薄い生地
2、綿・ポリエステル混の生地
このどちらかを使っていた。
綿100%で6オンス強と思われる厚手生地は皆無だった。ユニクロで綿100%製品が復活したのは、2013年ごろのことだった。
今夏のジーユーコラボTシャツのいずれもが6オンス前後はあるかと思われるような厚手綿100%天竺を使用できたのは、綿花相場が高くない水準でこの数年間推移しているからだと考えられる。
ウール(羊毛)
一方、スーツ地は別として秋冬の主役素材の一つでもあるウール(羊毛)だが、こちらは2019年まで毎年高値を更新し続けてきた。
そのため、ユニクロでも秋冬のセーター類を除くと、アウター類ではウール製品の品番数が年々減少してきた。恐らくは価格高騰のため、店頭販売価格を維持しようとすると、ウールを使えないのではないかと考えられる。
高額ブランド、特に欧米ラグジュアリーブランドは元々店頭販売価格が高いから原料高を吸収することができるし、何なら平然と店頭販売価格を値上げすることもできてしまう。なので、このゾーンにおいてはウールがどうのこうのということはあまり関係ない。
しかし、低価格から中価格帯のブランドに関していえば、この辺りは如実に反映されてしまう。
ユニクロの中でも本体ラインよりは、ユニクロUやアンダーソンのコラボラインは、格上の素材を使用している場合が多い。
「所詮ユニクロが作ってるに過ぎない」と馬鹿にするようなファッソン村の連中もいるが、もちろん、細かい部分の仕様やディテールなんかは及ばない部分もあるが相対的に見ると、20年前の「なんちゃってDCブランド崩れ」と同等以上の品質とデザイン性があると思う。ファッソン村の連中は物じゃなくてラベルを見てるだけなのではないだろうか。
本体ラインの価格のままでは高騰するウールが使いにくかったのだろうし、値上げするには本体ラインのままだと受け入れられないので、ユニクロUやアンダーソンコラボという名前にしている部分もあるのではないかと思う。
手持ちのユニクロUやアンダーソンコラボを見ると、2017年秋冬がウールをふんだんに使った最後のシーズンではないかと思う。
春夏は元からあまりウールを使わないので除外すると、2018年秋冬・2019年秋冬はウールを使ったアウター類がほとんどコラボラインでも見られなかった。
素材にもトレンドというものが存在するが、個人的にはトレンド性よりも原料高騰が理由で、合繊系素材に移行したのではないかと思う。
この傾向は2020年秋冬商品も同様だ。
例えばアンダーソンコラボのダブルフェイスコートなんてウールは1グラムも使われていない。これなんて2017年なら確実にウールは入っていたし、2005年以前ならウールの高混率だっただろうと思う。
しかし、来年秋冬・再来年秋冬はまたウール素材が復活するのではないかと思っている。特にユニクロでは。
理由は新型コロナ拡大による世界的な需要の減少である。
需要が増えれば価格が上がり、需要が減れば価格が下がるというのは基礎知識である。
洋服の値段が安くなったというのも同様の理屈が前提になる。
コロナで需要が減少したため、羊毛の価格は2020年に下がっている。
例えば8月の繊維ニュースの記事である。
「豪州羊毛相場 1千豪㌣台割り込む」
豪州羊毛価格の下落が止まらない。新型コロナウイルス禍の影響で市場参加者のマインドが冷え込んでおり、指標となる東部市場価格(EMI)は8月第3週のセールで1㌔=1千豪㌣を割り込んだ。売買も低調に推移しており、引き続き先行き不透明な相場となっている。
とのことである。
幾分持ち直したというその後の情報もあるが、2019年ほどには上昇していない。
ということは、早ければ来年秋冬、遅くても再来年秋冬にはユニクロにセーター以外のウール製品が復活するのではないかと考えられる。
また、他の低価格・中価格ブランドも同じことになる可能性はあるが、決定的にユニクロとは売れ行きが異なる。ユニクロは月次速報でもご存知のようにコロナ明けから絶好調である。一方、コロナ明けも不調なままのブランドは多い。
売れ行きが好調なら新商品を積極的に製造したり仕入れたりできるが、不調で在庫が残ったままでは新商品を調達することは難しい。
このためユニクロにはウール製品が復活するが、他のブランドには復活しないという可能性も低くない。
そんな感じで、原料の価格は製品の価格や企画内容に反映されるので、そちらの情報もチラっとでも頭に入れておいた方が良いだろうと思う。
シップスのウール100%コートをどうぞ~
comment
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毎朝読ませてもらってます より: 2020/11/16(月) 8:08 PM
UNIQLOはオーストラリアウールは使えない(ミュールジングの関係で使わない)のでここの価格変動は製品に影響しないと思われます。。。
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BOCONON より: 2020/11/16(月) 9:05 PM
ウールが値下がりしていても,ユニクロのJWアンダーソンコラボの “ダブルフェイス・ダッフルコート” は去年と同じポリ70%ウール30%で,なんだかもうびっくりするくらい安っぽかった。生地も色もトグルも裏地のチェックも。
安いからしょうがない,と言え誰が買うのか不思議。これでもユニクロとしては高いのだろうか。だとしたら本当に “価格破壊” が起きてますね。 -
hkbくぼち より: 2020/11/17(火) 7:15 AM
タートルネックセーター買おうかとユニクロへ。1000円の石油製品しか無かった。悲しかった。がこの記事で安心した。待ちます……
あっ、このSHIPSのPコート、夏の終りに16,000円くらいになってた時に買いました。オッサンにはちょっと細身でしたw
しかし、去年のヤツが一時期は半値にしたのに未だに売り切れてないんだから大変そうっすねぇ。