
大手総合アパレルの店舗数が一般的に想像されているよりもはるかに多い件について
2020年11月11日 企業研究 2
気付いておられる人は気付いておられるだろうし、気付いておられない人はまったく気付かれていないと思うが、今年3月から毎月1回、BLOGOSというウェブメディアに寄稿している。
あちらの読者は、衣料品業界以外の人が多いのではないかと思うので、そちら向きの話題を書き口を自分なりに変えて書いてみている。
お題に関してはこちらが提案することもあるし、向こうからの提案もある。
今回は自分で書いた記事をセルフパクリしてご紹介したいと思う。(笑)
5年くらい前から、ワールドやオンワード樫山、TSI、三陽商会などの大手総合アパレルの苦戦と大量閉店報道が続いている。
アパレル業界と言っても、実は縦方向だけでなく、横方向にも分断されており、大手総合アパレルに詳しくない人はまったくそちらの知識がない。
逆も然りで、大手総合アパレルに詳しい人は、低価格カジュアルメーカーにまったく知識のない場合も多い。
百貨店アパレルに詳しい人は量販店アパレルに詳しくなく、量販店アパレルに詳しい人は百貨店やセレクトショップには詳しくない場合が多い。
この記事を寄稿した。
「総合アパレル企業と百貨店の「持ちつ持たれつ」の関係性 コロナ禍で問われる生存戦略」
https://blogos.com/article/495330/
で、今回は、大手総合アパレルにそれほど詳しくない人に向けて書いている。なので、BLOGOSの記事も今回の記事もそれについて詳しい人は読む必要がない。時間の無駄である。
先ごろ、また大手総合アパレルの撤退計画が発表された。
オンワードが700店、ワールドが358店、TSIが210店、三陽商会が160店である。レナウンは倒産するので自動的に撤退となるので考慮しない。
で、ワールドは5年前の2015年にも400~500店舗の閉店を発表しており、今回の発表と合わせると900店近くを閉店したことになる。
しかし、ワールドの決算発表資料を見てもらえばわかるが、2020年9月時点で2429店舗も残っている。ここから358店舗を引いても2100店くらい残るし、閉店するのみではなく、新店出店もあるだろうから2100店体制は維持することになるのではないかと思う。
オンワードにしたって、ピーク時には3000店舗くらいあり、閉店後でも1700店くらいは残るという勘定になる。
TSI、三陽商会とて同様である。
この店舗数をご存知だっただろうか?大手総合アパレルに詳しくない人は、業界人といえども知らなかったという人が多いのではないかと思う。
ではどうして、これらの百貨店とファッションビルを主体販路とする大手総合アパレルは2000~3000店舗も出店することが可能だったのか?というのがBLOGOSの記事の趣旨である。
それを業界外の人に向けて噛み砕いて書いたつもりである。
大量閉店と言いながらも店舗数の総数は各社ともに相当に多いままである。
ユニクロの店舗数に比べても相当に多いし、「(店舗数)ユニクロ越えwwww」のワークマンよりも多い。2100店なら、しまむらグループ全体よりも多い。
ではどうして、ここまでの大量出店が可能だったのか。
1、少なくとも40、多ければ100くらいの多ブランド戦略を実施
2、その多ブランドを活かし、同じ商業施設内に異なる屋号を使い分けて複数の店舗を出店する
というのがその理由である。
現在のオンワード樫山でもざっと40くらいのブランドがある。ピーク時のワールドは100を越えていた。
となると、1ブランドあたり30店舗ずつ出店したとして1000店を軽く超えることができる。ピーク時のワールドなんてそれで3000店達成である。
お分かりだろうか。
で、例えば同一の百貨店やファッションビルにそれぞれの屋号を使ってそれぞれ出店しているわけである。1施設に3つとか5つ出店することは決して珍しくない。
だから、多くの人が認識しない間に、驚くほどの多店舗展開となっていたわけである。
一方で、施設側も大手総合アパレルのこの体制は熱烈歓迎だった。別に大手総合アパレルのエゴでもなんでもない。売り場からの要請という部分もあった。
いわば、WIN-WINの関係だった。
アパレル側からすれば
「超人気ブランドを出店してあげている代わりに、今度スタートする新ブランドも出店させてほしい」
というバーターを持ち掛けやすかったし、
施設側からすれば
「旗艦店に出店させてあげるから、地方店や郊外店にも出店してほしい」
というバーターも持ち掛けやすかった。
その結果、両者のメリットが一致して爆発的に売り場が増えることになって今に至っているというわけである。
百貨店の平場とて同様だ。
「伊勢丹新宿に並べてあげるから、府中店の平場にも納品してよ」
というバーターである。一方のアパレル側も
「いくら売れるとは言っても、伊勢丹新宿だけに納品しても数量的には旨味が少ない。旗艦店と合わせて地方店に納品することで数量的にも旨味が出る」
という判断をしていた。
だから、2005年頃、当方に百貨店アパレルのことを教えてくださった大先輩は
「全国的に店舗網を持っている百貨店との取引が一番メリットがある。髙島屋、大丸、三越だ。いくら旗艦店が売れていても店舗数が少なかったり地方・郊外店が弱い伊勢丹や阪急はそれほどのメリットが無い」
と話しておられたことを今でも鮮明に覚えている。
もちろん、2020年の三越は店舗網が弱体化しており、この当時とは状況が異なることは言うまでもない。
まあ、そんなわけで、アパレルメーカーと商業施設は密接に連携しながら、2005年頃まで両者ともに成長し続けてきたというわけである。
現在の大量閉店はその構図が崩れた証であり、今後は、強い店舗は残るが、そうではない店舗はますます閉店が増え、格差が拡大することになる。
一方で、衰えたりとはいえ、これほどの店舗数を持つ大手総合アパレルの潜在能力も決して馬鹿にできたものではないということは認識しておく必要があるといえる。
ブランドが廃止になるワールドの「アクアガール」のアクセサリーをどぞ
comment
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ハマオ より: 2020/11/11(水) 10:09 PM
ワールドは2009年が売上も店舗数もブランド数も一番ピークだったと思います。
百貨店ブランドの売上をScブランドの売上が超えた年だったと思います。
一つの施設に4から5ブランドの出店は当たり前でしたね
最大で13屋号あった施設も有りました。
今回二度目の大量閉店ですが5年位で元の店舗数に戻りますね
イオンモールやららぽーとの
区画を埋めるのは大手アパレルの資金力が最も重要かと思います。
最近はストラップの大量閉店が気になりますがあまり報道されませんが
百貨店ブランドについては僕もある程度「ここもあそこも会社は同じ」というのは知っていましたが,数字で示されるとなんだかビックリしますね。東京の百貨店以外はあまり行かないので,僕の思っていたのとはおおよそ一桁違っていたw
先日池袋東武行ったら,多くのブランドがなくなっていて売り場跡地に(売り物なのか)オシャレな自転車が置いてあったりしてもの哀しい気分になった。特にスーツブランド。西武は DAKS がなくなっていて,大賀(あまり百貨店ブランドのイメージがない)がティモシー・エベレストを出店したりしていた。
店によって品ぞろえが大きく違ってくると面白いのだけれど・・・まぁあまり期待しないで見ていようと思っています。