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南充浩 オフィシャルブログ

世に知られていない製造加工業の技術が多すぎる

2020年11月9日 トレンド 0

個人的には、自分は上っ面のプロモーションとかその類は今でも嫌いである。

やっぱり中身が伴っていてほしいと思う。

 

しかし、製造加工業者は一部を除いて、本当にプロモーションが下手くそである。

今、メディアは「サステナブル」「エコ」ばかりである。口先だけでもこれを唱えていれば、アホなメディアは大した検証もせずに掲載してくれる。

狡猾(良い意味で)な企業・ブランドはそれが分かっているから、その類のニュースレターを書いて、メディアに送り付ける。そうすれば高い確率で掲載してもらえる。

だが、本当はもう何年も前に開発されていて、単に報道されていない・される回数が少なかっただけというものも珍しくない。

 

最近だと、デニム生地関連のエコ報道がときどきある。

デニム生地に限らずだが、デニム生地も染色には廃液が伴う。また、洗い加工も汚れた排水が伴う。

岡山・児島地区は「デニム」で名高いが、実際にデニム生地を製造しているのは、そこそこの大手ではショーワくらいしかない。ほとんどが洗い加工業者である。

あとはジーンズに強いアパレル企業である。

90年代後半から2000年前半にかけて定期的に児島に出張していたが、児島を流れる川は一見すると普通だがよく見ると、流れる水が黒かった。

地元で理由を尋ねてみると、洗い加工場から出る排水が原因だという。

黒く見ているのは、実は濃紺というわけだ。

 

これまでジーンズに洗い加工を施すには水洗いが必須だった。

だから、廃液は濃紺だったのだが、最近はレーザー光線加工という新技術が開発され、水を画期的に使わなくなった。

レーザー光線を照射して、焼きながら脱色するわけである。

ただし、全作業が終わるとやはり一度は水洗いは施す。そうしないとレーザー光線によるコゲが少し残っているからだ。

 

今、ジーンズブランドや洗い加工場は、「エコの観点でレーザー光線加工を導入した」とその都度ニュースレターを送っていて、それがメディアに掲載される。

それはそれで必要なことだが、レーザー光線加工が実用化されたのはいつ頃からかご存知だろうか?

 

実は遅くともレーザー光線加工は10年前から実用化されている。

もしかすると、それよりも3年くらい前からかもしれない。

 

当方は2011年に、国内最大手の洗い加工場、豊和でレーザー光線加工を取材させてもらっている。だから「遅くとも」9年前なのである。

豊和のレーザー光線加工機

 

レーザー光線加工中の製品

 

 

 

 

このレーザー光線加工というのは、その前は、仁多産業という洗い加工場が技術を取得しており、ずっと自社で囲い込んでいたそうだが、倒産寸前になって豊和に売り渡したと言われている。実際に仁多産業はほどなく倒産している。

その後、しばらく、レーザー光線加工は豊和だけが使用していたが、3年くらい前に業界に開放された。

だから、今、レーザー光線加工導入のニュースが相次いでいるのである。

 

しかし、個人的に思うのだが、豊和は9年前からもっと積極的に報道機関にニュースレターを流すべきだった。

 

また、冒頭の排水にしても、豊和は2003年の時点で自社に濾過装置を設備して透明化していた。これも当方が取材に伺ったのが2003年のことなので、それ以前から設置していた。

目的はISOの取得である。

 

デニム生地工場も同様で、カイハラも排水を工場内で無色透明化している。

当方は2005年に、当時最新鋭の三次工場に取材に伺ったが、その時すでに排水の無色化を行っていた。今から15年前のことだ。

これもさほど大々的に世間に知られているわけではない。

 

2003年とか2005年とか2010年とか、この当時、今ほど「エコ」「エシカル」「サステナブル」は注目されていなかった。だから、時代よりも早すぎたという側面はあるだろう。

だから、もしかすると、報道機関にニュースレターを送ったがあまり取り上げられなかった可能性はある。報道機関も所詮は商売なので、その時々の注目の案件以外はあまり取り上げない。

8月ごろまでなら新型コロナである。

今でも報道はあるが、8月半ばごろからめっきりと減った。購読部数や視聴率が下がればその話題は取り上げられなくなる。その逆が3月~6月ごろまでのヒステリックなコロナ報道である。

だから、当時は今ほどエコ・エシカル・サステナブルは注目されていなかったから、あっさりとした報道で済ませられている可能性はゼロではない。

とはいえ、豊和やカイハラももっと定期的に報道機関にニュースレターを送り続ける必要はあるだろう。

 

そのせいとは言わないが、報道の中には「世界初のレーザー光線加工」とか「世界でも最先端の排水透明化」みたいなものも見受けられる。

2019年とか2020年の時点では「世界初」でもなんでもなく、レーザー光線加工なら10年前からすでに豊和が実用化しているし、排水透明化も15年以上前から実績がある。

きちんとした企業が常にニュースレターを送ってメディアに掲載されることで、このような誤った「世界初」が掲載されないようにする必要はある。いや、掲載させないようにする責任があるのではないかと思う。

 

今回は当方が知っている2例を取り上げたが、製造加工業にはまだまだこのようなネタが隠されている。やはり、これを知られるようにするという取り組みは必要不可欠である。

知られていないのは存在しないのも同然なのだから、製造加工業者はもっと報道機関にアプローチを仕掛けるべきである。がんばってもらいたいと思う。

 

 

洗い加工場・山陽ハイクリーナーのデニム雑貨をどうぞ~

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