レナウンの破産が確定
2020年11月4日 企業研究 2
知らない方もおられるかもしれないので、一応、レナウンの破産決定について触れておきたい。
業界の多くの人が予想していた通りに、民事再生を断念して破産整理になる。
これでレナウンという会社は無くなる。
民事再生法の申請というのは、スポンサーが見つかれば文字通り再生できるが、スポンサーが見つからない場合は破産整理されてしまう。
多くの会社は民事再生法を申請しても、最終的には破産することになる。
古くはシャツメーカーのカネタが民事再生法を申請したが、最終的には破産して会社そのものが無くなっており、逆に再生できるのはほんの一部というのが実際のところである。
ただ、レナウンの場合、レナウンというアパレル企業自体には大した価値は残っていないと衆目が一致していたが、「アクアスキュータム」「ダーバン」というそれなりに価値のあるブランドがいくつか残っていたので、その部分に関しては「無くなるのはもったいない」と見られていた。
しかし、今年8月に「アクアスキュータム」「ダーバン」「シンプルライフ」「エレメンツオブシンプルライフ」「スタジオバイダーバン」の5ブランドが大阪を拠点とする老舗アパレルである小泉グループに売却されることが決定した。
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200821_05.html
小泉アパレルは、「SIMPLE LIFE(シンプルライフ)」と「element of SIMPLE LIFE(エレメントオブシンプルライフ)」事業、オッジ・インターナショナルは、「Aquascutum(アクアスキュータム)」と「D’URBAN(ダーバン)」、「STUDIOby D’URBAN(スタジオバイダーバン)」事業を取得する。譲渡先は、量販店向けブランドは小泉アパレル、百貨店向けはオッジ・インターナショナルとおおまかにすみ分けた。
レナウンの担当者は東京商工リサーチの取材に対して、「レナウン本体に残る他ブランドの譲渡先はなくなった。(ブランドの)先はもうないと考えてもらって差し支えない」とコメントした。
とのことである。
蛇足ながらオッジ・インターナショナルという会社は小泉アパレルの子会社で、もともとはイトキンからの独立組が創業したアパレルだったが、早々に経営破綻し、小泉アパレルの傘下となった。
小泉傘下後は、倒産したライカの「カステルバジャック」などのブランドもオッジが引き取っている。
小泉グループは、今回の5ブランドをたったの11億円で買収したと報道では伝えられている。
レナウンに残ったそこそこ有力なブランドはこの時点で「アーノルドパーマー」のみとなったが、これも米国本社がレナウンに代わる新たなライセンス先を見つけたので、レナウンとしての企業価値はゼロになったといえる。
カジュアルメーカーの水甚 「アーノルドパーマー」のライセンス取得
https://senken.co.jp/posts/mizujin-201027
カジュアルメーカーの水甚(岐阜市)は、米アーノルドパーマーエンタープライズ(オハイオ州)と「アーノルドパーマー」でメンズ、レディス、キッズ、ショップ展開のライセンス契約を結んだ。21年3月をめどに生産・卸販売、店舗出店を開始する。25年末に約100店舗、売上高は70億円(小売りベース)を目指す。
水甚は、同ブランドで「若い世代のファミリー層に向け商品企画を進める。ブランド認知度の高い層も含めて長年の支持もあり、取り込みたい」(中村好成社長)としている。ターゲットは30~40代のファミリー層。
とのことである。
水甚というアパレル企業についてだが、知っている人は知っているが、知らない人は全く知らないのではないかと思う。
アパレル業界というのは面白いところで、販路やターゲットが異なると、同業他社のことも全く知らない人が多い。
水甚をよく知っているという人は、量販店のメンズカジュアル売り場とジーンズチェーン店に詳しい人だろう。逆に全く知らないという人は「百貨店レディース」「ファッションビル系」「高級インポート輸入業者」などではないかと思う。
水甚も含めて岐阜のアパレルというのは、メンズ・レディース問わず量販店向けの低価格カジュアルが強かった。メンズカジュアルだと、美濃屋・水甚・岐阜武・佐藤正(佐藤正臣氏の略称ではない)あたりが大手で、1000円台のTシャツやら3900~6900円くらいの防寒アウターなんかを得意としている。
いずれも老舗で、水甚は創業が昭和24年で、法人化したのが昭和39年だと沿革に記載されている。
25年末に約100店舗、売上高は70億円(小売りベース)
という強気な計画を水甚が発表しているが、水甚のこれまでの販路から考えると、卸売りは量販店の平場とジーンズチェーン店、出店は量販店がメイン、中期的にはそこにファッションビルへの出店を加えるのではないかと思う。
最近は、かつての業界内の垣根が崩れており、得意ではない売り場に進出することも増えたが、恐らくは水甚が開始する当初は百貨店への進出はほとんどないのではないか。中長期的には百貨店への進出はあるかもしれないが。
そんなわけでレナウンという企業はこれで無くなってしまうわけだが、仮に今春に新型コロナが大流行していなくても、「アクアスキュータム」「ダーバン」を欲しいという企業はあっても、レナウンそのものが欲しいという企業は現れなかっただろうと思う。
当方なら小泉が買い取ったシンプルライフすら要らないと思うほどだが、ましてやそれ以外のブランドとなると、まったく不要だと思う。
子会社で肌着・靴下を生産していたレナウンインクスは同業他社のアツギが引き取ったし、そう考えると、レナウン本体は今の時代においては不要だったと言わざるを得ない。
レナウンの敗因は様々あるし、いろいろな人が語りつくしているので繰り返さないが、やはり、ブランドが顧客とともに高年齢化していき、若いファンを定期的に獲得しなければ、いずれは売れなくなるということの実例ではないかと思う。
現に「レナウンガー」とショックを受けている人は、若くても50歳半ば以上の世代である。50歳未満の人からすると「名前は聞いたことがありますけど」というくらいの反応である。
まさに諸行無常・盛者必衰である。
そんなアクアスキュータムのマフラーをAmazonでどうぞ~
comment
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BOCONON より: 2020/11/04(水) 1:14 PM
アホかと思われるかも知れませんが,レナウンについては僕は不思議に思っていました。「ブランドを皆売るか消滅させてしまった後で,一体何をどうやって “再生” しようとしていたのだろう?」と。正直まったく見当がつきません。
レナウンが破産しても 消費者は全く困らない
そういうことだわなぁ
いや 多くのアパレルはなくなっても困らないのが現状だな
そして そこに就職させる
服飾学科等の大学・短大は大変だろうな
強味がなくなるから
デザイナー無理でも 販売ならなんとかなると
してたと思うけど
その販売職も厳しくなるから
厳しいよな