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南充浩 オフィシャルブログ

長所と短所は表裏一体 光があれば必ず影ができる

2020年10月26日 企業研究 0

今回はちょっと小ネタを。

何事にもメリットがあればデメリットもある。光が差すところには必ず影ができる。

短所と長所は必ず表裏一体である。

 

ちょっと往年の勢いは落ちてきたものの、まだまだ百貨店単独店舗では国内1位の売上高を誇るのが伊勢丹新宿本店である。

ハイファッション云々とか、そういう事柄が注目されるが、ビジネス系の人たちは、その坪効率の高さに注目する。

売上高2位の阪急百貨店うめだ本店と伊勢丹新宿本店の売上高の差は現在のところ200億円くらいあるが、売り場面積は伊勢丹新宿本店の方が3万平方メートルくらい狭い。

狭い売り場で高い売上高を稼いでいるのだから、伊勢丹新宿本店の坪効率はすごいということになる。

当方もこの見方に異論はまったくない。

 

しかし、物事は100%メリットばかりでは絶対にない。

狭い売り場で高い売上高を稼ぐがゆえにデメリットも生じている。こちらはあまり言及されることがないが、伊勢丹新宿本店が何かの拍子に売上高が激減するようになれば、たちどころに問題視されるようになるのではないかと思う。

伊勢丹新宿本店に売り場を構えるブランドの店頭で働いた経験がある人の証言だが、

「売り場が小さくて狭くて、商品の在庫を置いておけない。ストックへ走らねばならなくてその都度大変だった」

とのことだ。

また、別の某エラい人は、かつて自身のブログでこんな意味のことを書かれていたことがある。

「売り場が狭くて陳列できにくいのは理解できるが、1枚キリの陳列でしかもそれがいろいろな物と混ぜて置かれており、まったく目につきにくい」

という内容である。

 

売り場経験のある人は常識的に考えてもらえればすぐにわかると思うが、狭い店で一番苦労するのは、商品の陳列と在庫の置き場である。

本部はもちろん、ある程度は各売り場の面積を考慮して商品を納品するが、その精度が確実かどうかは疑問で、商品のデリバリーのタイミングとの兼ね合いもあるから、先にちょっと多めに各店に送る場合がある。

そして「よく売れる」伊勢丹新宿本店ならなおさらのこと、ちょっと多めに突っ込むことは当たり前である。

そうなると、小型店舗では陳列場所に困り、エラい人の指摘したような陳列方法になりがちだし、各サイズの予備はほとんどストックルームに突っ込むことになる。

百貨店のストックルームは、当方は伊勢丹のを見たことがないが、阪急うめだや近鉄あべの、大丸梅田なら見たことがある。

いくつかの小部屋があって、そこに各ブランドがストックを置いている。各ブランドのストックが混在しているので自社のを探すのもけっこう手間がかかる。恐らくは伊勢丹新宿も同様だろう。

 

狭い売り場でたくさん売るというのは素晴らしいことだが、一面、このようなデメリットもあり、物事は上手く行っているときは不平不満を吸収できるが、上手く行かなくなると、これまでに溜まった不平不満が爆発する。

 

 

次に、アウトドアの旗手として称賛されることが多いスノーピークだが、元売り場で扱っていたという若い女性は、

「スノーピークの商品を探しに来たお客様の対応をするのが嫌でたまらなかった」

という。

 

大人気のスノーピークだから、当然のことながら、売り切れで欠品が生じる。

通常のメーカーなら「だいたいこれくらいの期間で再入荷します」と案内することができる。また、通常のアパレルならほとんどがそのシーズン限りなので「これは今シーズン限りなので、もう入荷しません」と言い切ることができる。

しかし、スノーピークはいわゆる「通常のアパレル」ではない。定番品も多いし、アウトドアグッズも多い。むしろ、アウトドアブランドのメインはグッズ類である。

グッズ類は衣料品ほどモデルチェンジのサイクルが早くはない。となると、愛好者は「いつごろ入荷しそうですか?」と質問することになる。

 

この若い女性によると、「スノーピークの商品は本当にいつ入荷するかわからない。それが3カ月先なのか半年先なのか1年先なのかまったくわからなかった」そうである。

こうなると、根が真面目な販売員の方がお客に対応するのが嫌になる。

しかもスノーピークは人気が高いから、毎日そういうお客が何人も質問してきて、そのたびに同じことを答えなくてはならないなら、苦痛に感じるのも当然だろう。

そういう点では、他のアウトドアメーカーの方が顧客対応はラクだったという。

 

あいにくと、スノーピークの商品供給体制がどのようなものなのか当方は知らない。

あまりの人気ぶりに本当に商品生産が追い付かないのかもしれない。また、ブランドステイタスを維持するために、欠品にすぐに対応せずに顧客に飢餓感を与えているのかもしれない。

仮に前者だとしたら、生産ラインを増強すべきではないかと思うが、このご時世でおいそれと生産ラインを増強するのはリスクが高いから二の足を踏むのも理解できる。

後者だとしたら、顧客からすれば「欠品が無くなっても定価で買うよ」と仰るだろうが、ブランド側とすれば「ちょっと足りない(実際はちょっとどころではなさそうだが)」くらいの方がブランドステイタスを保ちやすいから、この政策も理解できる。

しかし、不安定な供給体制は売り場の人間には多大なストレスを与える。

こちらも、スノーピークの人気が高い間は不満は爆発しないが、もし変調をきたせばこれまで燻ぶり続けてきた不満が爆発することになる。

 

どちらの事例もビジネス的には正しいが、それによるデメリットはどこかしらに潜んでいるということである。

 

そのあたりのバランスをどのように取るのかが経営者の仕事だし、そういうデメリットが「圧倒的なまばゆい光」によって隠されているということを認識しておくのが経営者の仕事である。

 

 

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