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南充浩 オフィシャルブログ

無印良品の衣料品が売れなくなった理由を考えてみた

2020年10月21日 企業研究 0

前回、全体の売上高はコロナ休業明け以降堅調に推移している無印良品だが、衣料品は大苦戦しており、食品の大幅増で補填されていて、衣料品の苦戦傾向は昨年10月から始まったということを書いた。

衣料品の不振を食品の大幅な伸びでカバーしている無印良品

無印良品としては、食品が売れ、生活関連用品が堅調ならそれでいいんじゃないかと考えていても不思議ではない。

当方が経営者なら「無理に衣料品を回復させなくてもいいんじゃないの?」と考えてしまう。

そうだとしたら今回は余計なお世話だが、なぜ無印良品の衣料品は昨年10月から苦戦傾向に転じたのかについて考えてみたい。

 

まず、今のマストレンド(最先端のトレンドではない)はビッグシルエット、ルーズシルエットにあるということに異論のある人はいないだろう。

90年代で絶滅したビッグシルエットがまさか30年ぶりに復活することになるとは、当方は夢にも思わなかった。2015年にレディースで起きたガウチョパンツブームは、ビッグシルエットの本格的復活の狼煙だったと今にして思う。

スキニージーンズ一極集中を打ち砕くことになった。(大げさ)

2010年までと異なるのは、スキニージーンズ、スキニーパンツ類が絶滅していない点である。例えば、キャバクラのスカウトや呼び込みみたいなおにいちゃんたち、マイルドヤンキー系はいまだにスキニーパンツを愛用しているし、トップスもピチピチである。

90年代以降、ビッグシルエットが絶滅したのとは対照的である。

 

しかし、マスの低価格ブランドは、ルーズシルエットである。ジーユーはほとんどがこの系統だし、ユニクロのトップス類もほとんどこれである。ビッグ度合いでいうとジーユーの方がユニクロより大きい。ジーユーには当方がSサイズで着られる服が多くある。

こういう情勢下にあって、無印良品のメンズは、シルエットがタイトである。

恐らく、2015年頃とパターンやサイズ感を変えていないのではないかと思われる。当方がMサイズを選ぶとピチピチになってしまう品番が多い。むしろ、2018年くらいの方がサイズ感にゆとりがあったのではないかとすら思う。

2020年の今、こうなると、ルーズシルエットに慣れてしまった人からすると「ちょっと違うよな」ということになる。

その結果、選ばれなくなる。

 

一方、無印良品のメンズ衣料品のテイストはベーシックでナチュラルである。

ピチピチを好む消費者層が皆無ではない。先ほどのマイルドヤンキー系やキャバクラ関係者なんかはいまだにピチピチしているわけだが、彼らが無印良品の洋服のナチュラルベーシックテイストを好むかというと、多分まったく好まないだろう。

そうなると、シルエットとテイストがミスマッチになってしまっていて、どちらの客からも選ばれないということになってしまう。

昨年10月から衣料品の客単価が前年比10%以上減少しているのは、売れないから大幅値引きを繰り返して消化しているからだろう。

店頭の余り具合を見ているとそれでもすべて消化できているとは到底思えないが。(笑)

 

先日、無印良品で秋の立ち上がり品を見た。

ユニクロでは展開されなさそうな色の定番型オックスフォードボタンダウンシャツがあったので、買ってみようかと思って手に取って広げてみると、やはりピチピチしている。

ピチピチしているだけならまだしも、着丈が短い。

タックインするとほとんど先っぽくらいしか入らないだろう。ピチピチで丈が短めのシャツというのは2015年以前に多く見られた形である。

当方もその頃に買ったシャツをいまだに手元に置いているが、今の服と合わせるとバランスがおかしいので、ほとんど着ていない。何枚かは捨てた。

これでは2020年秋も売れないだろう。

セーター類も同様だ。着丈はそこまで短くはないが、身幅がピチピチしている。

 

その一方で、展開店舗数が限定されている「無地ラボ」は極端にビッグサイズである。2017年ごろの夏にノーカラーポロシャツを半額以下の2000円で買ったが、これがめちゃくちゃ大きかった。S~Mサイズという表記だが、通常ブランドのLサイズくらいはある。当方が着てもダボダボである。

そうなると、無地ラボと本体ラインはまったく連動しておらず、整合性がない。

客からすると、無地ラボ製品と本体製品は着回し、コーディネイトしにくいということになる。これも無印良品の衣料品が売れていない理由の一つではないかと思う。

ユニクロ、ジーユーはコラボを加速させて年々案件を増やしているが、本体ラインと組み合わせての着回しやコーディネイトは可能である。

だから、本体もコラボも買うという消費者はそれなりにいる。

 

この辺りの設計や他ラインとの連動性のなさを見ていると、無印良品は衣料品を本当に売る気があるのかな?と思ってしまう。もしかすると、何度もいうように「衣料品は飾りで、別に売れなくてもうちは困らない」というスタンスなのかもしれない。

 

無印良品は今秋から衣料品の値段を引き下げた。

この引き下げは積極的な価格競争戦術というよりは、客単価の大幅減少の現状追認に過ぎないのではないかと感じる。価格は引き下げられたが企画内容は不振だった2019年秋、2020年春夏の延長線上だったからだ。中身を変えずに定価だけ引き下げてもあまり効果はないだろうし、下手をするとそのシワ寄せは縫製工場や生地メーカーに行くことになり、製造加工業を圧迫する危険性すらあるのではないかと思う。

 

まあ、そんなわけで、今秋冬も無印良品の服はほとんど買わないだろうと思う。

 

そんな無印良品の5枚組タオルを1580円でどうぞ。

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