衣料品の不振を食品の大幅な伸びでカバーしている無印良品
2020年10月20日 お買い得品 0
新型コロナ休業明けからユニクロ、しまむら、ジーユーなどの低価格衣料品の回復が目覚ましい。
ユニクロの場合は、ブランドへの安心感、品質への信頼感がやはり高いと考えられる。マスにおいての信頼感・安心感は国内ではダントツの1位ではないかと思う。
しまむらは、経営改革の成果もある程度はあるのかもしれないが、それよりも、郊外型路面店中心という立地に助けられている部分と、それから、イベントなどのコロナ自粛で「ハレ」の場が無くなったことで、「しまむらの安い服で十分」と考える人が増えたからではないかと思う。
ジーユーは、低価格+トレンド品への需要が特に若い世代を中心に評価されているだけでなく、トレンドのルーズシルエットが当方も含めた中高年男女の需要も捉えているのではないかと思う。私事なので参考になるかどうかはわからないが、暑がりで夏場は大量の汗をかく当方にとって、夏のTシャツなんてものは、繊細な素材を使った高価格品なんてもったいなくて買う気にもならない。冬のセーターとかならまだカネを貯めて買おうかとも思うが、夏のTシャツなんてシーズン中に何度洗濯するのかわからないほどである。そんな物に繊細な素材とか高い価格を払う気にもならない。よって、今夏買ったTシャツはほとんどがジーユーの値下がり品である。
190・390・590・790・990円に値下がりしたTシャツを買った。デザインも悪くないし、素材や縫製も990円未満に値下がりした物の中ならピカイチである。
5年くらい前までなら、ジーユーのシルエットはピチピチでタイトなため当方では着られなかったが、今はルーズシルエット、ビッグシルエットだから、細身ではない当方でも十分に着られる。
恐らく、同様にサイズの理由でジーユーを愛用し始めたという中高年男女はピチピチだった5年前と比べると激増しているのではないかと思う。
やはり、国内衣料品市場においては、この3ブランドは三強だといえる。
無印良品も月次速報を見ていると、大幅には前年増とはなっていないが、前年並みとか微増、微減なので健闘しており、さすがにブランド力が高いといえる。
しかし、こと衣料品という部門に関しては昨年から苦戦が続いている。
決算報告書で衣料品売上高は発表されていないが、月次報告の増減だけ見ると、衣料品売上高は今年6月・7月を除くと前年割れである。
ではどうして、トータルの売上高が前年並みなのかというと、食品が毎月何十%増と大幅に伸びているからである。あと、衣料品を除いた生活雑貨も健闘している。
食品の大幅増と生活関連の健闘が衣料品の落ち込みをカバーしている状況にある。
例えば2020年8月度は
衣料品売上高が前年比15・0%減
生活が同16・3%増
食品が同53・2%増
である。
同様に9月は
衣料品が同15・5%減
生活が同7・9%減
食品が同90・5%増
である。
月次売上高の増減率だけで見ると、食品はコロナ前の2019年3月からずっと2桁%増を続けている。
2019年3月から2020年2月までは衣料品はほぼ前年並みなのでこの1年間は順調だったかに見えるが、恐らくは変調はこの時期から始まっていたと考えられる。
その理由は、細かい財務分析とかは当方にはそのノウハウは無いので、マサ佐藤氏にご依頼いただきたいと思うが、月次速報からだけでいうと、それまで5%減ペースで推移していた衣料品客単価が2019年10月から10%以上大幅に下がっているのである。
要するに、昨年10月から衣料品の客単価が10何%下がっているわけだが、この時期はもちろん新型コロナは関係ない。思い出してもらいたい昨年10月に新型コロナなんて微塵も感じておらず、各種イベントは盛り上がっていた。
正確な財務分析はマサ佐藤氏に任せるとして(ODM型丸投げ)、店頭を見た感じでいうと、昨年秋冬商品は12月の時点ですでに大幅値引きされていたのである。
昨年秋から年末にかけては気温が高く、暖冬だった。そのため、ウールのセーターなどが大量に売れ残っており、12月の時点ですでにウール100%のハイゲージ薄手セーターなんかは990円に値下がりしていた。また、綿素材を起毛させたスタンドカラーシャツも大量に売れ残っており、これも990円に値下がりしていた。当方が買った紺色はどの店舗を見てもダダ余りしており、その後何か月間も各店頭に大量に並んでいたほどの不人気ぶりだった。
恐らく、秋物が立ち上がったばかりの昨年10月からすでに動きの鈍い物は積極的に値引きをしていたのではないかと考えられる。思い返してもらいたい。当方はいまだに関西に住んでいるが、昨年10月10日ごろに行われた地元の秋祭りは、季節外れの暑さがぶり返し、最高気温30度となり、当方は真夏の半袖Tシャツを着ていた。
こういう気候では秋冬物が売れるはずもないし、大量生産している無印良品は早々に値下げを開始したのだろうと思う。
また、もしかすると、前シーズンの残り物も大幅に値下げしながら売っていたのかもしれない。
月次速報だけで考えると、昨年10月から無印良品の衣料品は、定価では売れず大幅値下げされた。そして新型コロナ休業明けの6月、7月は、休業による反動と、なし崩し的に始まった春夏物セールで「安さ」ゆえにそれなりに動いたと考えられる。実際に6月、7月も衣料品客単価はそれぞれ7・3%減と11・9%減である。
そろそろ字数が長くなってきたので、無印良品の衣料品が不調な理由はまた別途考えてみたいと思うが、要するに、今のマス層のニーズと商品が合っていないということになり、無印良品が先ごろ発表した衣料品72品目の値下げは衣料品不振に対応する策だったと考えられるが、衣料品の企画内容を変えないままに値段を下げたところで、あまり効果が出るとは考えにくい。
無印良品は、①衣料品の企画内容を抜本的に見直すか、②不得意な衣料品は捨てて好調な食品と堅調な生活関連をさらに強化するか、のどちらかを選ぶことが必要である。
どっちつかずのまま衣料品値下げを続けることは良い結果にはつながらないだろう。
そんな無印良品のマスクをどうぞ~