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南充浩 オフィシャルブログ

「新しい手段」に無策で縋り付くことが大好きな繊維・アパレル業界

2020年9月18日 トレンド 0

2年くらい前のアパレル業界では「ネット通販は売れる」という謎の信仰が流行していた。

ネット通販教にもだいたい三宗派あり、

1、ZOZOTOWNなら売れる

2、楽天市場なら売れる

3、自社通販サイトでも売れる

みたいな感じで、その「売れる」という根拠は

1、知り合いの会社が売れた

2、ネット通販全般の好調ぶりが報道された

だった。

しかし、実際にネット通販で売るには通販サイトを公開しただけ、ZOZOTOWNに出店しただけでは到底無理で、集客に努力しなくてはならないし、ZOZOTOWNや楽天市場のモールでは埋没しない工夫が必要になる。

高度経済成長期のように「並べたら自動的に売れる」なんてことは成熟社会においてはあり得ない。

 

そーして~♪ 2年の月日が流れ去り~♪

今年は、D2C、クラファン(クラウドファンディング)、YouTubeあたりが持て囃されている。

文法は「ネット通販」の部分をD2C、クラファン、YouTubeに置き換えただけの簡単なお仕事である。

まず、D2Cについて見て行こうか。

正直なところ「D2Cという概念が云々」と言われたところで、かつてのノームコアのようにイマイチよく分からない。要するにネット通販SPAじゃねえの?としか思えない。

ただ、何となく感じるのは、ユニクロとかベイクルーズとかそういう大手ブランドは、総合アイテムをネットで通販しているが、D2Cの場合は単品に絞り込んだとか展開型数が少ないとかそういう違いがあるのではないかというところである。

で、過度な期待をかけておられるネットに詳しくない老年業界人の方々には申し訳ないが、D2Cブランドというのは売り上げ規模がさほど大きくない。せいぜい5億円くらいが頂点ではないかと思う。

年商規模500億円とか1000億円とかいうアパレル企業がD2Cブランドを立ち上げたって、会社の業績の足しにはなりにくい。何十個立ち上げなきゃならねえの?って話である。

それでもやりたいの?

 

次にクラウドファンディングである。

マクアケでもキャンプファイアでも構わないが、ファッション・繊維製品でどれだけのクラファンが立ち上がっているのか、まず、クラファンをやってみたいという会社はそれを確認していただきたい。

そのうちの何割が成功しているかも同時に確認すべきである。

ざっと目視したところでは成功している(目標金額達成している)のは、2割くらいではないかと感じる。となると、要するに8割は失敗しているのである。

逆にどこぞのフリークスストアのように目標金額を15万円という極めて低くして達成しているような大手企業もある。どこぞのフリークスストアのような大手がたった15万円を達成して何かの足しになるのだろうかと思う。

それなら、単価4000円の換気扇付きマスクを90万円強クラファンした無名のディープサンクスの方がよほど頑張ったといえるのではないかと思う。

 

で、D2Cよりもクラファンの方がある意味で手軽に始められるため、いろいろな組合や協会や支援組織が「クラファンセミナー」なるものを開催し始めている。

要するに組合や組織の加盟社に対して「クラファンをすることを勧める」というのが趣旨である。

しかし、この手のセミナーが組合や協会で主催されるようになると、もうクラファン自体が日本では終焉に近づいているといえる。

そこには、クラファンとは何かを詳しく調べもせずに

 

「クラファンなら売れる(らしいで)」

 

という、いつもの姿勢が業界中に蔓延している。

だいたいこの手のマインドの企業は業績が悪いから、例えばクラファンで200万円集めたからといって、焼け石に水であることがほとんどである。そして、200万円を集めたその商品やサービス内容を量産したり普及させたりするという活動にはまず結びつかない。一時的な延命のカネを手にしただけで終わる。

 

最後がYouTubeである。

新型コロナによる休業で、多くの人が2カ月くらい自宅に引きこもらざるを得なくなった。当方も4月18日から5月10日ごろまでは自宅にいる時間が増えざるを得なくなり、YouTubeを観る機会が増えた。

はっきりいえば、テレビでバラエティ番組やアホなワイドショーを観ているよりよほどYouTubeの方が面白い。

驚くことに知名度の高い芸能人や有名人が続々と今春からYouTubeチャンネルを開設している。ファンの人なら少しずつしか話す機会が与えられないテレビのトーク番組を観るよりよほど楽しいだろうと思う。

そんな中、無名の企業、無名のブランド、が流行りに乗ってYouTubeチャンネルを開設してどれほどの視聴数が期待できると思っているのだろうか。

集客のための仕掛けが絶対に必要である。無策では無名企業のチャンネルは視聴されないし、そもそも「お勧め」にも表示されない。

表示されないとなると、無名企業なので検索してもらえるわけもなく、誰にも知られないままになる。知られていないのは存在しないのも同然である。

もちろん、やらないよりはやった方がマシではある。しかし、動画をアップしただけではだれにも観てもらえない。集客策が必要だという認識が抜け落ちている場合が多い。

ウェブサイト(昔でいうホームページ)はオープンしただけではだれにも観てもらえないし、ネットショップを開設しただけでは物は売れない。

手段が変わってもマインドが変わらないのなら、どんな手段を使ったとしても望むような成果は得られない。

 

そのことが分かっていない企業やブランドが今、D2C、クラファン、YouTubeに縋り付き始めたようにしか見えない。

 

 

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