マスに売りたいなら、マスに売れるような方法を採るべきである
2020年9月17日 トレンド 0
「年商規模が3億円くらいで十分というこだわりのブランド」と「年商規模100億円を目指したいというブランド」では当然、顧客層も違うし、売り方、ビジネスの組み立て方も大きく異なる。
100億円を達成するには、激安品でなくてもある程度の買いやすい価格設定が必要だろうし、ある程度のマスに売れそうなやり方が求められる。
3億円で十分というこだわりのブランドはその限りではない。コアな少数のファンをいかに作ってそこに満足されるかというやり方が求められる。
当方は消費生活において、服のブランドにもあまりこだわりがないし、食に関してはもっとこだわりが無い。1週間くらい続けて夕食がレトルトのカレーでもあまり苦にならない。なのでこだわりのブランドにはビジネスにおいてもあまり興味がないので言及はしない。
で、ある程度のマスを狙いたいというブランドがマス層を獲得できないというのが、今のアパレル苦戦の原因の一つではないかと思う。
どうして獲得できないかというと、これも様々な理由がある。
その中の一つに「意味のないかっこつけ」というのも大いにあるだろう。
その一例がこのブログで紹介されている。随分と心当たりのあるブランドも多いのではないだろうか。(笑)
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2020/09/post-73c852.html
これはネット通販についてのことが書かれてある。
例えば、売り手はデニムパンツという商品名をつけがちですが、多くのお客様はジーンズというキーワードで探す(検索する)可能性が高いです。
野田さんは、デニムパンツの商品をお客様目線の「ジーンズ」で検索できるようにすれば、確実に売上は上がる。それを妨げているのは、業界特有の「かっこいいか?かっこ悪いか?」の感覚だと言います。
どうだろうか?耳が痛いアパレルやブランドも多いのではないか?
どうでもいい話だが、ここで出てくる野田さんというのは、当方も面識がある野田大介さんのことである。
最近では、ジーンズのことをなぜか「デニムパンツ」と呼ぶブランドが増えた。デニムパンツならまだマシで「デニム」とだけ呼ぶブランドも珍しくない。しかし「デニム」だけではデニム生地と区別がつきにくい。デニム生地で作ったほかのアイテムはどうするんだ?という話である。
デニムスカートもあるし、デニムシャツもある。デニムブルゾン(ジージャン)もある。
話は横道にそれるが、デニムシャツをデニシャツと略するブランドもあるが、それって一文字しか違わないのに略する意味があるのだろうかと思ってしまう。デニシャツというとなんだかデニッシュみたいである。
結局のところ、デニム生地で作られたファイブポケット型パンツは「ジーンズ」と呼ぶのが一番わかりやすいのである。
個人的には「ジーンズ」のほかに「ジーパン」という検索キーワードも追加した方が良いと思う。年配の人もコロナ禍である程度ネット通販を使い始めているから、年配の人は「ジーパン」で検索すると考えられるからだ。
で、もっと傑作なのがこの部分である。
ちょっと前に、筆者もあるブランドのEC公式サイトを見ていて、具体的に何かを探してみようとして、検索ウィンドウに「シャツ」と入れてみました。
すると、「お探しのものは見つかりません」と出ます。トップページにかっこいいシャツが出ていたので、他にどんなシャツがあるのかを探すために行った行為でした。「ジャケット」や「セーター」も同様。
どうやら、このブランドのサイトでは、(日本のブランドですが)すべての商品名およびカテゴリー表示すらも英語表記、そのため、SHIRTでは検索結果が出ますが、シャツでは出なかったという話のようでした。
確かに、シャツよりSHIRTの方がかっこいいかも知れませんが、お客さんは、日本のサイトでわざわざ英語では検索しない、と思います。
どうだろうか?こんな「意味のないかっこつけブランド」は業界に掃いて捨てるほどある。
シャツの英語のスペルを即座に打ち込める人がどれだけ世の中にいるのだろうか?文中で触れられているジャケット、セーターも同様で、jacket、sweaterと打ち込まねばならないのだろうと推察できる。
繰り返すが、コアな人に向けた小規模こだわりブランドならこの対策は必要ない。
「shirtと打ち込めないようなダサい奴らはうちのサイトに来るな」
と言えば済むからである。
だが、ある程度のマス層を狙いたいなら、shirtと打ち込まねば検索できないようなシステムはゴミ屑である。ブランド側の自己満足オナニーに過ぎない。自慰を表明しましたという感じである。
ファッション業界人からは馬鹿にされながらも、楽天市場の衣料品売上高が、ファッション業界人やIT業界人が大好きなZOZOTOWNよりも多いのは、そういうことの実例ではないのだろうか。
マスに売りたいのなら、たとえベタでもマスに売れる方法を採るべきで、それが嫌なら濃いファンに向けたこだわりの小規模ブランドを目指すべきである。
小規模向けのことをやっているくせにマスに売りたいというのは虫が良すぎる話でしかない。
shirtで検索したら出てきたアイシャツをどうぞ~