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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルの倒産危機は年内よりも来春以降の方が深刻そうな気配

2020年9月16日 トレンド 0

定期的に店頭に立っている在庫処分店に今夏、商品入荷が非常に少なかった。

在庫処分業者は小資本である場合が多いので、要請はあっても資金的に仕入れができないことも珍しくない。たまたまそういう資金繰りだったのかと思ったが、どうやらそうではなくて、今夏の在庫処分は全般的に増える傾向にはなかったらしい。

 

大阪を中心にメーカーの在庫処分を手掛けている人にお目にかかったのだが、今夏は在庫処分の要請がめっきり減ったという。

理由を尋ねてみると、緊急事態宣言が発令されて以降、行政の支援が手厚くなり、資金的に余裕ができて不良在庫を抱えたまま越年できるようになったからだという。

4月中旬以降様々な支援政策が打ち出されており、恩恵を被ったアパレル企業が多いというわけである。

 

もちろん、その在庫の中には越年しても価値が変わらない物もあるだろう。また定番的に何年間か販売できる商品もあるだろう。

しかし、洋服のほとんどは、シーズンのトレンドに忠実にデザインされているため、シーズン内で消化されることが理想である。特にレディースはその傾向が強い。メンズはレディースほどトレンドに敏感ではないので、春物を秋に売ってもある程度消化できるし、今年売れ残った春物を来年の春に販売することも可能である。

とはいえ、恐らく持ち越された在庫のほとんどは来年投げ売りすることになると考えられる。そして、その投げ売り品がさらに売れ残る可能性も低くはない。

 

また、今年春に調達された資金の返済が来年春から始まる。利息はほとんど無いに等しいとはいえ、毎月何万円かの返済が生じるわけだから、これが資金繰りを圧迫する可能性がある。

 

レナウンの経営破綻やジャパンイマジネーションのブランド運営廃止の発表以降、アパレルの経営破綻や倒産があまり報じられなくなったが、これはどうやら今春の行政からの支援によって、延命したアパレル企業が多いと考えられる。

 

お目にかかった人は「今秋冬よりも来年春夏の方が経営破綻や倒産が増えるのではないかと考えている」という。

たしかに、7月・8月は予想していたよりも静かに過ぎて行った。

 

しかし、とくにこの10年間で「急成長」「人気」「イケてる」と評されてきた人気アパレル何社かも実情は非常に厳しいと言われており、今春のコロナショックでいよいよ追い詰められているとも耳にする。

例えば、某社は売れ残っている在庫量が恐ろしいことになっていると業界では噂になっているし、別の某社が発表したブランドの売上高は「実はまったくの出鱈目だ」とも言われている。

これらの企業は、持続化給付金で当面の危機は回避したものの、来春以降相当危なくなるのではないかと考えられる。

 

某社のアウトレットをマネジメントしている知人によると

 

「個人的には、来春から倒れ出すアパレルが続出するのではないかと思っている」

 

という。先ほどの在庫処分の方とほぼ同意見である。

 

一方、在庫処分業者のショーイチは6月・7月の買取量が昨年の2・6倍になったと発表している。

6~7月のアパレル在庫買取数が例年の2.6倍に

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000035187.html

 

㈱shoichi(東京・大阪)の2020年6~7月のアパレル在庫買取数が例年の2.6倍となりました。2月の買取数も例年の3倍となっていましたが、3月以降は買取数量は例年並みに落ち着きました。5月末からアパレルの在庫買取依頼が増加し、7月末の集計では例年の2.6倍の数量となりました。

 

とのことで、単純に買取量が増え続けているわけではない点に注意が必要だと思う。

新型コロナショックが騒がれ出した2月は3倍に増えたが、コロナ休業本番の3月以降は例年並みに落ち着いていたとある。しかし、5月末から再び増加に転じたとのことで、その理由としては3月・4月はちょうど新作が入荷したばかりなので、コロナ休業が早めに解除されれば、是が非でも店頭で売りたいということで買い取り要請が少なかったのではないかと考えられる。そして、コロナ休業が5月に終了したことで、売り時期を逃した春物を5月末から処分したいということになったのではないだろうか。

 

何度も言うように在庫処分業者というのは小資本が多く、付き合いのある先も限られている。ショーイチでは増えたが、先述の方の周りでは持続化給付金で一息つけた業者が多かったということだろう。

背に腹は代えられないという事業者はショーイチに買取を依頼したし、そうではなく少し我慢ができる事業者は在庫を抱える道を選んだということだろうと考えられる。

どちらが正解なのかはもう少し時間が経過してみないとわからない。

ただ、無支援なら全般的に全業者への買い取り依頼が急増していたはずだが、持続化給付金などの支援によって、在庫処分依頼が総じて急増しなかったのではないかと考えられるのではないかと思う。

 

8月のお盆くらいからテレビのワイドショーで新型コロナへの煽り報道がめっきり減った。これによってコロナパニックは少し沈静化するのではないかと感じられる。そのため、このまま感染者数が激増しなければ、秋冬のアパレル商戦はソフトランディングできる可能性もあるから、アパレル企業の大規模なクラッシュは年内は避けられるのではないかと感じる。やはり、正念場は来年春ではないかと感じられてならない。

当たるも八卦当たらぬも八卦なのだが。

 

 

全然違うショーイチの漫画をどうぞ~

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