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南充浩 オフィシャルブログ

ダイヤモンドオンラインのアパレル覆面座談会の記事は秀逸

2020年9月15日 メディア 2

アパレル関係のメディアに掲載される記事はだいたいが、少しズレていると感じることが多い。

恐らくは、メディア側の主観がズレている場合と、書き手や寄稿する側の主観がズレている場合の両方がある。両方ともがズレている場合も珍しくない。

記事というのはある程度啓蒙する必要があるし、編集されるものだから仕方がない側面があるとはいえ、読者としては疑問を感じることも多かった。

ダイヤモンドオンラインが何故か、数日にわたるアパレル大特集を組んでいるが、論調としては微妙なものもあるし、見出しの付け方が実情にそぐわないものもあると感じるものの、この無料会員記事は秀逸だと感じる。

逆に有料記事の方が恣意的なまとめられ方をしていて、個人的には評価できない部分も多い。

お読みになった方も多いだろうが、この座談会である。まだの方は、ちょっと長めだがぜひともお読みいただきたい。

 

ユニクロ、レナウン…アパレル元社員覆面座談会「なぜ売れない服を作りすぎるのか」

https://diamond.jp/articles/-/248356

見出しは自分の好みではない。最近跋扈している「在庫ガー」にクリックしてもらうためだろうと感じる。まあ、一応、ユニクロとそれ以外のアパレルの商品企画、売り切りのシステムには触れているが、この記事の眼目は多分そこではない。

ユニクロ、レナウン、ストライプ、ユナイテッドアローズの各社の社風と内情である。

これが結構リアルで、当方が知っている話とほぼ重なる。通常のメディアだとボカされていたり、華麗にスルーされている部分が触れられていて秀逸だと感じる。

 

とても長いので、独断と偏見に基づいて抜粋してご紹介したい。

 

1、ユニクロ

とにかく全部社長(柳井正会長兼社長)の承認が要るんです。毎週作っているチラシ一つにも社長決裁が要る。

そのプレゼンで、社長が「このチラシは嫌だね」と言ったら一から作り直し。販売計画が決まっていようが、MD(商品化計画)が決まっていようが関係なし。どこがどう嫌なのかも具体的には教えてもらえません。

 

とある。当方もそのように各方面から聞いている。特にチラシに対する柳井社長の熱の入れようは昔からスゴい。とはいえ、あのチラシがユニクロの売れ行きの原動力の一つだから、柳井会長の経済観・政治観は疑問しかないが、商売に関する嗅覚はいまだに人並み以上に優れているといえる。

 

やっぱり社長はすごいなと思うことはたくさんあるんです。このプレゼンで社長が「こんなもん売れないですよ」と言ったものを、別の役員がその場で説得する形で販売を始めた商品って、本当に売れない。

社長は別におしゃれでもないんだけど、商売人の勘というのか、「総合的に売れるもの」が分かるんです。「4色では売れないけど20色なら売れる」とか、そういう指示もよく当たります。

 

あと後継者問題についても

 

柳井社長っていい人ではないんですが、息子さんはいい人たちなんです。だから、柳井さんの代わりをできるんだろうかと。

 

と述べられており、これは多くの業界の人が賛同できるのではないかと思う。「いい人」が一代で2兆円企業を育てられるはずもない。物事をなすには非情さ、冷徹さが必要不可欠である。

 

2、ストライプインターナショナル

――皆さんの意見で構いませんが、この会社はあまり良くないなと感じたことのある会社はありますか。

B ストライプかな。

――なぜですか。

B 全体的にプロ意識に欠けている。石川さんのセクハラの一件もそうだし、現社長の立花(隆央)さんもパワハラで有名。その上、働いている人たちも愚痴ばかり言っている。柳井さんは「神は細部に宿る」といつも話していて、社員教育はパートさんまで徹底的に教育します。そこから考えると、ストライプはちょっと。

 

まあ、これも的確だといえる。たしかに「パワハラ」云々は有名で、まったく付き合いのない当方にまでその噂は届いている。

 

D ストライプは手広く事業を広げてしまったけれど、やめるのはどうするのかな、と聞いてみたいです。「メチャカリ」(ストライプの商品が定額で借り放題になるレンタルサービス)もですし、ストライプデパートメント(ストライプのECモールおよびその運営会社)はソフトバンクとの合弁でやってるからなあ……。

 

ともあるが、ストライプは最近急速に不採算事業を撤退し始めている。中国事業もそうだし、セブンデイズサンデーやイーハイフンなどのブランドも撤退し始めている。個人的にはストライプデパートはどうなるのかまったく予測できないが、メチャカリは撤退するのではないかと見ている。

ところでKOEはどうするのだろうか?当方は撤退した方が良いと思うのだが。

 

メディアで持て囃された割にはメチャカリは会員数も少ないし、恐らくはいまだに不採算である。理由は各メディアで「広報費を除いて黒字化した」という記事が流れているからである。

広報費を除いて黒字化したという言い回しは、広報費を含めると赤字であると言っていることと同じである。

おわかりだろうか?

そもそも事業において「広報費を除いて」損益を考えるなんてことはあり得ない。広報費も含めての事業活動である。

ストライプは以前からこの手の特殊な言い回しが多すぎる。

 

まあ、そんなわけでこの座談会記事は現場のリアルな声がある程度集約されていると感じる。

特によかったのは、怪しげなコンサルや自称有識者を一切呼んでいない点で、彼らのほとんどは基本的にはポジショントークしかしないから、大手メディアで広く発信されると業界と世間をミスリードしてしまう。

 

 

そんなイーハイフンの商品をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/09/15(火) 11:35 AM

    ユニクロ(というかファーストリテイリング)、柳井社長が死んだらどうなるのか気になりますね。つか、普通にあれだけデカくなった企業の後継者を世襲にするのが当たり前と思ってるのも怖いですけどw
    一回、ユニクロの社長をラグビー選手かなんかにした時には、うまく行かなかったんでしょうけど、「なんか嫌」ってのを言語化出来る人を育てとかないと傾くんじゃないのかな?そうなるのを期待w

  • ハマオ より: 2020/09/16(水) 11:17 PM

    ストライプは10年以上前から上場すると毎年
    発信して来ましたが未だに上場出来ず毎年延期を伝えて来ましたが
    パワハラやセクハラのコンプライアンス問題よりも財務会計上の重要な問題点があると思います。粉飾していると思いますが
    上場よりも会社の継続が困難な気がします。

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