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南充浩 オフィシャルブログ

洋服の製造に中間業者が必要不可欠な理由

2020年9月11日 製造加工業 0

厳密に言うと、洋服を作ることは結構難しいのだが、その一方でめちゃくちゃ簡単にも作れてしまうのも事実である。

ここでいう作るというのは、ビジネスライクな意味ではなく、本当に1枚作るという意味である。

パターンを工夫して、使用する素材との相性も考えて、となるとかなり高度な作業になるが、その一方で、めちゃくちゃラフに作ることもできる。

以前、当時懇意にしていた独立系デザイナーに余った生地で1枚その場で即興で裏毛素材でダボっとしたズボンを作ってもらったことがある。

シルエットはワイドでダボだから、フィット感が云々は関係ない。また生地も裏毛で伸縮性があるから、厳密な採寸は必要ない。

そんなわけでほぼフリーハンドで型紙無しで生地をハサミで切って、チャチャっと縫い上げてくれた。

それなりに熟練した人だからできる技なのだろうが、ある意味、このように簡単に作ることもできる。だが、これだけを見て「服=簡単に作れる」というのは真理ではない。

 

未だに「中間業者不要論」がまかり通っているが、流通段階の中間業者は90年代後半のSPAブームでほぼ無くなってしまった。

まあ、厳密にいうと、有象無象の中間業者は今でもいる。

例えば、某高額ダウンジャケットブランドだが、表には出てこないが、なぜか日本の正式代理店の手前でワンクッション企業を介在させている。

このワンクッション企業も実はアパレルで、別段、現地で何か作業しているとか、特別な手当てをしているとかではない。

単にワンクッションとして介在しているだけである。

そしてそこには当然幾ばくかのマージンが発生しているから、このダウンジャケットブランドが必要以上に高額なのはそのマージンのせいでもあるのではないかと思うくらいである。

こんなことは業界的には結構ある。

SPAブーム以前には「問屋」という業種が一大産業として存在していた。それがもうほとんど無くなってしまった。今残っている問屋は必要性があるから残されていると見るべきだろう。

 

一方、SPA化するにしたがって、製造加工段階では中間業者が増え続けた。

SPAには大きく分けると2つのタイプがある。

 

1、小売店がSPA化するタイプ

2、メーカーがSPA化するタイプ

 

1で代表的なのはGAP、ユニクロ、大手セレクトショップ、アダストリアなどである。

2の代表はオンワード、ワールド、三陽商会、TSIなどである。

 

1の小売店がSPA化する場合、製造加工に関しては知識も伝手もないから、商社・振り屋・OEM屋・ODM屋と呼ばれる中間業者に製造関係を依頼するほかない。

 

2の場合、本来は製造加工の知識も伝手もあるから不要だが、バブル崩壊以降、業績が低迷する中、経費削減で自社の企画部門や生産管理部門をリストラしたため、それらを外注で依頼するということが増えた。

 

そのため、どちらにしろ、製造加工に関しては中間業者は必要不可欠な存在となっているといえる。

今流行りのインフル怨嗟インフルエンサーブランドやD2Cブランド、タレントブランドをいとも簡単に立ち上げることができるのは、製造加工の中間業者が存在しているためである。

製造加工に関しての知識と伝手がゼロでも、中間業者に依頼してカネさえ払えば商品が出来上がる。

 

で、最近はD2Cブームだか何だか知らないが、製造加工に関する中間業者も省けという主張を見かけることが増えたような気がするが、結論から言うと、中間業者を排除したらド素人は製品を作れなくなる。まあ、当方はまったく構わないが、それでは生活できなくなるド素人ブランドが業界には多々ある。どうするつもりだろうか。(笑)

 

で、製造加工の中間業者が必要なのかを手短にまとめてくれている記事があるのでご紹介する。

https://note.com/hiroitoshoten/n/n8f17182d422b

 

今日は服を作る際に工場とブランドの間に存在するOEM会社・企画会社・商社・振り屋は必要かどうか。僕としての考えを簡単に書いておきます。

結論で言うと「必要な場合が多い」です。

とある。まったく同感である。

 

理由も簡単に書いておきます。現場として受ける側、依頼する方として出す側どちらの側面も経験もあるので少しは参考になるかも。
先に必要がない場合を書いたほうがわかり易いので書きますと

①企画に時間や足を使うことを厭わない
②商品や素材知識が豊富
③縫製工場や機屋さんとのやりとりや交渉を苦にしない
④資金力がある(やりたい規模にあわせ)

etc…..

このあたりがクリアであれば正直必要ないです。(必要性が低い)
逆にこのあたりに不安を抱えていたり、先々の成長を考えて時間的な余白を持ちたいと感じる場合は必要性があるか、経験のない初期段階では絶対必要に近いかも。

 

とのことである。

 

例えば、シャツでもジーンズでもいいが、いざ、製造するとなると、

1、生地選び

2、副資材選び(ボタン、芯地、ファスナー、その他付属品)

3、縫製工場選び

4、織りネーム・下げ札選び

大まかに見てもこの4つが必要になる。

で、この4つ以外でもズボンならポケットの裏地(スレキと呼ぶ場合が多い)を選ばなくてはならないとか、ジーンズなら革パッチを選ぶとか、そんなことも必要になる。

 

中間業者を使わない場合、これを全部自社で決めなくてはならない。製造加工に伝手が無い場合、一から生地も副資材も縫製工場も探さなくてはならない。

どうだろうか?自分ですべて探し出せるだろうか?

 

さらにいえば、縫製工場に縫製を依頼してそれで業務は終わりではない。

サンプル製作をしてもらってそれを見て修正しなくてはならないし、生産管理もしなくてはならない。

どこまで進んだか、何枚縫えたか、何日に完成するのか、ということをブランド側が管理する必要がある。これが大雑把な生産管理の仕事である。

 

これを全部自社でできるのだろうか?1型とか2型の商品しかなければ、可能だろうが、10型・20型の商品を全部自社で生地・副資材の手配、生産管理ができるだろうか?ましてや製造加工のノウハウも伝手もないブランドが。

こういうことが自前でこなすことが無理なら、中間業者に依頼するほかない。

 

中間業者はこれらの業務を全部まとめてやってくれる。

 

たしかに、中間業者の中には悪質な者もいる。だからと言って、中間業者を全部無くせというのは暴論だろう。

犯罪を犯す警察官がいるからといって、警察を全部無くせというのと同じくらい馬鹿げている。

 

まあ、そんなわけで、インフルエンサーだとかD2Cだとかが注目が高まり続け、ド素人がデビューすればするほど、製造加工の中間業者は必要不可欠な存在になるということである。

 

 

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