洋服の在庫を処分販売できる手段は増えている
2020年9月10日 お買い得品 0
今回は前回の続きを。
50%以上が廃棄されているというのは明らかに事実誤認で、それ以上でもそれ以下でもないので、あえては繰り返さない。
前回、定価で売れなかった場合の洋服の処分の手段を挙げた。
1、翌年に持ち越して、次年度に販売する
2、催事で投げ売り販売
3、ファミリーセールで販売
4、在庫処分業者(オフプライスストアも含む)に安値で払い下げる
と書いたが、あと2つばかり抜け落ちていたので今回はそれを補足したいと思う。
1つは、
アウトレット店で販売する
である。
これは90年代後半から2010年くらいまで約15年間盛り上がった「アウトレットモール」でおなじみだろう。
アウトレットモールには、ブランド単体の店か、そのアパレル企業が持つブランドを複数集めた店が軒を連ねている。
例えば、ジーンズ関係でいうとアウトレットモール華やかなりし頃は、リーバイス、エドウインのアウトレット店が必ずどこにでも出店していた。タカヤ商事の店もあったと思う。
で、アパレル企業が持つブランドを複数集めた店というのは、ワールドやイトキンなんかのアウトレット店である。
ワールドは「ネクストドア」という屋号でアウトレット店を出店しているが、そこにはワールドが抱えるいくつものブランドの商品が並んでいる。その昔のイトキンも同様である。
アウトレット店の場合も直営型とフランチャイズ型がある。直営型は言わずもがなだが、販売業者がブランドやアパレルとフランチャイズ契約を結んでアウトレット店を運営する場合もある。
当方の知り合いで、某大手セレクトショップのフランチャイズアウトレット店に勤務している人もいる。
アウトレットと最近メディアでは話題のオフプライスストアの区別がつきにくい部分もあるが、合っているか間違っているかは別として、当方は、第三者企業が様々なアパレル企業から手広く売れ残り品を仕入れて安値で売るのがオフプライスストアだと思っている。
例えば、当方がワールド、イトキン、フランドル、エドウインなどから売れ残り品を安く仕入れて、自店舗で安く販売すればそれがオフプライスストアだといえるのではないかと思う。
アウトレットは見てきた通りで、ブランド単一か同一企業の複数ブランドを販売するか、のどちらかである。形態としては外見からはわかりにくいが直営型とフランチャイズ型がある。
もう一つが2010年以降増えてきたインターネット通販である。
アパレルECとも言われるが、めんどくさいのでネット通販とまとめた方が分かりやすいのではないかと思う。インターネット通販はどれだけ売れるか格差があるだろうが、押しなべて在庫処分販売には適しているのではないかと思う。
インターネットの最大の長所であり最大の欠点でもあるが、陳列する場所が理論上無限にあるところが在庫処分には適している。
実店舗だと、陳列場所がないから格納しなくてはならないがインターネットだとずっと表示したままにもできる。
売り場に立っていると、ときどき季節外れの商品を欲しがる人が来る。
ズボンの下に穿くタイツを真夏に欲しがる人なんていうのもつい最近店頭で見かけた。
そういう人に対応できるという面もある。
インターネット通販にもモール型と直営型があるが、どちらも今では有力な在庫処分販売の一つとなっている。
ZOZOTOWNがかつてアパレル各社と「アリガトー」キャンペーンで揉めたことがあったが、あの時、したたかなアパレル企業は在庫処分用としてアリガトーキャンペーンを使っていた。
何せ、ZOZOTOWNが自腹を切って割引してくれるのだから、季節外れの商品をアリガトーキャンペーン商品にすれば、自社の粗利益を削ることなく、モール側が勝手に値引きしてくれるのである。よく考えてみるとアパレル側からするとこんなにおいしいことはない。
自社の直営型インターネット通販も各社ともに在庫処分の役目を担っている。
ユニクロのサイトやアダストリアの自社サイト「ドットエスティ」では、持越しした前シーズンの商品が、その時期になると画面に復活する。
例えば、ユニクロの今のサイトを見てみると、9月に入って秋物が本格的に実店舗店頭にも並び始めたのと同じタイミングで、昨年秋冬発売して売れ残りを今まで持ち越していたダウンジャケット類が復活している。
例えば、これなんかわかりやすいだろう。
昨年秋冬シーズンに発売してそれなりに話題となったハイブリッドダウンである。2月末か3月頭でサイト画面からは消えていたが、今秋になって再登場している。
お気に入りに登録しておいたら、秋が始まったら、自動的に画面に復活していた。
アダストリアのドットエスティも同様である。
シーズンの最末期で消えるが、またシーズンが巡ってくると、シレっと画面に復活してくる。
当方はシレっと値下げされて復活した商品を買うので、逆に助かっているのだが。(笑)
とこのように考えてみると、90年代後半以降は在庫処分販売の場が増えているということになる。アウトレットもネット通販も90年代以降に出現した新しい処分経路である。
それぞれの処分経路でどれほどの売上高があるのかはわからないが、廃棄処分が青天井に増えているということはなさそうで、逆に廃棄せずに値引き販売で売り切ることが増えているのではないかと思う。
また、前回引用した現代ビジネスの小島健輔さんの記事でも触れられているように、
よほど儲かっているアパレルでないと踏み切れない。
近年のアパレル業界は過剰供給で収益力が落ちているから、廃棄処分を選択できるアパレルは極めて限られる。
というのが実態である。
まあ、そんなわけで、「50%も捨てられている。ムキー」となっている方々にはちょっと冷静になって考えてみてほしいと思う。ポジショントークで言ってる人も相当数おられるだろうが。
90年代後半にはこんなふうに見られていたという本