MENU

南充浩 オフィシャルブログ

コテコテはマニアでニッチな市場

2013年8月2日 未分類 0

 先日、某ジーンズOEM企業の展示会にお邪魔した。
数年前から別会社でオリジナルブランドを展開していたが、今度は本体でもオリジナルブランドをいくつか開始するという。

社長は「ジーンズという単品アイテムを主体としたブランドは、最大でも売上高は10億円程度だろう。数億円にもなれば恩の字だ。テイストの違うブランドを複数立ち上げることによって、全社の売上高を10億円とか15億円にしたい」とおっしゃった。
ブランド数が3つなら、数億円×3ブランドで全社売上高15億円を目指したいという考え方だ。

割合に個性的な社長なので賛否両論ある。
ちょっとチャラっとしすぎているように感じられる部分もある。

けれども、さすがに市場を読む目は確かだと感心させられた。

そして、そのブランドの企画担当者の若い男性とも話をさせていただいた。
まだ20代後半~30代前半の若者である。
岡山・広島出身ではなく、静岡県出身だそうだ。

そういうパーソナリティーの若者からすると、「岡山や広島で立ち上がっている小規模ブランドは、ちょっと洗い加工へのこだわりが強すぎて、ハードでダーティーなイメージの商品が多い。他府県出身の自分からすると、同年代の人間が求めているジーンズはそんなにハードでダーティーで、工芸品のような物ではない」と感じたそうだ。

彼の感想は非常にジーンズ業界にとって参考にすべきものではないかと思う。

2007年にインポートプレミアムジーンズブームが完全終息を迎えてから、ブルージーンズの売れ行きは悪化し、ジーンズは非トレンドアイテムになった。
レディースのスキニージーンズは2008年以降もそれなりに支持された印象があるが、それも2010年以降になるとレギンスやタイツ、ショートパンツなどに取って代わられた。

何度も書いているが、ジーンズの販売数がゼロになったわけではない。
比較的動いているのは、濃紺のノンウォッシュ、ワンウォッシュである。またジーンズ業界お得意の洗い加工製品でも、ヒゲやアタリ感がそれほど強くないクリアなブルーの物などもそれなりに動いている。
しかし、消費者はジーンズを買っているというよりは、カラーパンツのバリエーションの一つとして購入している雰囲気が強い。
ノンウォッシュやワンウォッシュなら濃紺パンツ、ヒゲやアタリ感が強過ぎないクリアなブルーなら水色のパンツという具合に捉えているようだ。

「洗って擦って破いて叩いて貼り付けて、その上からブラウンとかベージュの顔料染料をトッピングしました」

というようなコテコテの加工を施したジーンズをありがたがる風潮はこの数年はとみに薄まっている。
もちろん、そういう商品を好む層はいまだに存在するが、それはマニアでニッチな市場になっている。

現在のジーンズ専業ブランド各社は、そのマニアでニッチな市場に向けていまだに大挙して商品を供給しているといえる。大手からナンタラストリートに集まる小規模メーカーまでがそういう「洗い加工・後加工の妙技」を誇る気分が濃厚である。

はっきり言ってしまえば、マニアでニッチな極小市場に対して供給過剰なのである。
だから各社の業績は伸びない。

マンションメーカーの延長線上の小規模メーカーがそういう「工芸品」の世界にこだわるのはまだしも、中規模メーカーがその手の商品に異様に執着するのはいかがなものだろうか。
愛好者が少ない市場に向けて渾身の力を込めて商品提案したところで、中規模メーカーが思い描くような売上高には到底届かない。客数が少なすぎるからだ。

そこに固執している限り、中規模メーカーの企業規模が成長することはないし、中規模メーカーの経営が立ち直ることもない。

やはり、このOEM企業は賛否両論あるものの、市場を読み取る能力に長けていると改めて認識させられた。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ