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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店が新型コロナショックで実店舗だけでなくネット通販も休業した理由

2020年8月25日 ネット通販 0

百貨店の閉店が続いており、来年には全国の百貨店店舗数は200店を割り込むのではないかと考えられている。

百貨店が無くなる県も出て来ている。

当方はよほどの贈答品以外は百貨店で買わないから百貨店が無くなっても生活には困らない。そういえば、8月末には亡父の四十九日法要をやらねばならないが、それが終わると数人には返礼をしなくてはならないので、その際、百貨店で返礼品を買うことになるだろうと思う。当方の百貨店利用なんてこの程度のものである。

百貨店の店舗数が減るわけだから、百貨店としては売り上げ規模を維持する、その地域の顧客をつなぎとめておくためには、ネット通販に着手せざるを得ないだろう。

 

尤も、これについては百家争鳴で異論もある。百貨店は実店舗での接客を強化すべし、という意見も根強い。

これはこれでわからないではないが、先ほども書いたように

 

1、百貨店が売り上げ規模を維持したい

2、店舗が無くなる地域の顧客をある程度つなぎとめたい

 

と考えるのなら、ネット通販を強化せざるを得ないだろう。

逆に、売り上げ規模を維持する必要が無い、店舗が無くなる地域の顧客はつなぎとめなくてもいい、と考えるなら不慣れなネット通販をやる必要はない。

 

今春、新型コロナショックによって、大型商業施設が軒並み休業した。もちろん百貨店も休業した。店舗を休業すると売上高が皆無になるので、その間、売上高が見込めるのはネット通販のみだった。

ユニクロ、ジーユーを筆頭にユナイテッドアローズやアダストリア、オンワード、ベイクルーズなどネット通販が強い企業は、ネット通販のおかげで何とか緩和できた。(実店舗休業のマイナスすべては吸収しきれなかったが)

だが、百貨店は店舗休業と同時にネット通販も休業することとなり、ダメージの緩和はまったくできなかった。

 

これに対して、当方も含めて多くの人が疑問を感じた。実店舗が休業している今こそネット通販ではないのかと。実店舗と同時にネット通販も休業するなら、百貨店の収入源はほぼゼロになってしまう。

しかし、物事ができないのはできないなりの理由がある。何事においても。

百貨店がネット通販を休業せざるを得なかった理由について、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんの説明を以前にこのブログで紹介した。

今回は、別バージョンの説明を紹介する。

といっても、説明内容は同じである。

 

https://netshop.impress.co.jp/node/7930

 

在庫の持ち方が一般的な取引形態と異なります。多くの商品で、店頭に並んでいるときは、まだ、商品提供先の在庫で、レジを通した瞬間に百貨店が仕入れて顧客に売るという消化仕入という形態を採っています。さらに、百貨店の店頭で接客している販売員さんのほとんどは商品提供元の社員さんだったりするのです。

これは有名なので多くの人が知っている。

通常のネット通販は、注文が入ると倉庫からそのまま発送されるパターンが多い。だが、百貨店の場合はそうはいかない。

 

「暫定」の手段として、店頭にある商品を商品提供元在庫のままECサイトに掲載し、注文が入ると店頭からピックアップして仕入れをして、顧客に発送という形を採ることになります

 

その結果として

百貨店を休館すると、店頭に商品提供元の社員さんも不在になるので、商品を物流担当者に渡す人員がいません。また、販売前は商品提供元の在庫なので物流担当者が勝手に商品を持っていくこともできませんさらに、商品提供元も大して売れていないECのためだけに閉店している店舗へ商品の補充もしませんよね。

ということになる。

 

お中元、お歳暮などギフトはもともと、倉庫からの出荷ビジネスなので、自粛中もEC販売が可能でしたし、一部、化粧品などECを続けることができた商品もありました。継続できたところは、倉庫出荷の商品をEC販売している、もしくは、提携している他社から出荷しているということです。

 

となり、お中元・お歳暮、贈答品などは元から倉庫出荷の体制を組んでいたが、アパレル品や服飾雑貨はこの体制を組んでいなかったので、それに対応できなかったというわけである。この記事にもあるように、百貨店は需要が高いギフト品に関しては西暦2000年以前からネットで販売を行うことを開始していたわけである。

 

結局は、販売員付きの消化仕入れという体制に百貨店側はもちろんのこと、オンワードや三陽商会といった百貨店向けアパレルもそれに慣れきってしまっていて方向転換できなかったことが最大の理由だといえる。

もちろん、これまで何十年間も両社の収益の源泉だった販売員付き消化仕入れを変えてしまうと、相当な痛みを両者ともに被ることになる。そのため、躊躇する気持ちはわかるし、失敗すれば両者ともに更なる大ダメージを被ることにもなりかねない。

当方が担当者でも「やりたくねえなあ」と思ってしまう。

 

だが、今回の新型コロナショックでは、全世界規模での大規模感染や一律の長期間店舗休業などこれまで予想もできなかった事態が起きてしまった。今後も予想外の出来事は必ず起きる。それに備える必要はあるだろう。また今回の新型コロナショックによって、消費者の購買行動が変わってしまった部分もある。それに対応する必要にも迫られる。

冒頭にも書いたように、百貨店が無くなった地域も出始めたわけで、そこに対応するのかしないのか、という意思決定は必要である。先送りしたところで何一つ課題は解決しないし、他人が決めてくれるわけではない。

 

 

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