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南充浩 オフィシャルブログ

レナウンの5ブランドが小泉グループに事業譲渡

2020年8月24日 未分類 1

もうご存知の方も多いだろうが、レナウンのブランド譲渡先がいくつか決まった。

レナウン 小泉グループと「ダーバン」「アクアスキュータム」など事業譲渡契約締結

https://senken.co.jp/posts/renown-koizumi-200821

 

民事再生手続き中のレナウンは21日、小泉グループの事業会社である小泉アパレルとの間で「シンプルライフ」及び「エレメントオブシンプルライフ」事業について、事業譲渡契約を締結した。また、小泉グループの事業会社であるオッジ・インターナショナルとの間で、「アクアスキュータム」「ダーバン」「スタジオバイダーバン」事業について、事業譲渡契約を締結した。

 

とのことである。

また今後の経過については

 

レナウンは事業再生スキームとして、計画外事業譲渡を予定しており、今回の事業譲渡の実行にあたり、民事再生法所定の裁判所の許可等が必要となる。今後、民事再⽣法に定める手続き等を行い、裁判所の許可が得られた場合には、9月30日に事業譲渡の実⾏を予定している。

 

とのことである。

「シンプルライフ」と「エレメンツオブシンプルライフ」を小泉アパレルに、

「アクアスキュータム」「ダーバン」「スタジオバイダーバン」を小泉アパレルのグループ会社であるオッジインターナショナルに、

譲渡するということである。

 

個人的な感想をいうと、「シンプルライフ」の受け皿として小泉アパレルはまあ適当ではないかと思う。一方、「アクア」と「ダーバン」の受け皿としてのオッジインターはちょっと規模が小さすぎるのではないかと思う。

 

小泉アパレルとオッジインターナショナルについて、当方は昔からよく名前を存じ上げている企業だが、若い人やジャンルの異なる業界人はあまり知らないのではないかと思う。「誰でも知っている」ような超メジャーな会社ではない。

両社の企業サイトによると、小泉アパレルの年商規模は121億円、オッジインターナショナルは2020年2月期の売上高が27億円である。

「アクアスキュータム」「ダーバン」の受け皿としてオッジインターナショナルでは小さすぎると思った理由がお分かりだろうか。

 

一方、シンプルライフの受け皿として小泉アパレルはまずまずではないかと思う。

何度もこのブログで書いたようにシンプルライフの顧客層(シンプルライフに限らずレナウン全体の顧客層も)は中高年である。小泉アパレルが得意とするのは、中高年婦人服なので、顧客層は概ね合致する。

懸念としては小泉アパレルというのは、量販店向けの低価格品が得意だが百貨店販路に弱いが、レナウンは量販店販路に弱く百貨店が主要販路であるということである。

レナウンの量販店販路はゼロではないが、構成比率は小さい。2019年12月期では、GMSとショッピングセンターを合わせた売上構成比は27%しかない。百貨店が55%強もある。

そう考えると、主要客の年代は合致するが、得意とする売り場は異なるため、量販店育ちの小泉アパレルが百貨店向けのシンプルライフに対して的確な指示を出せるかというと疑問である。

 

今度はオッジインターナショナルについて考えてみる。

オッジインターの創業は88年で、イトキンの社員だった人物が退職して立ち上げたアパレルである。2004年に小泉グループに入っているが、その理由は経営破綻したからだった。

今度譲渡されるアクアスキュータムとダーバンだが、現在の売り上げ規模はオッジインターナショナルよりはるかに大きい。

2019年12月期では、アクアスキュータムが男女合わせて約50億円、ダーバンが43億5200万円で、両ブランド合わせて100億円弱となる。

これを年商規模27億円のオッジインターが譲渡されるわけだから、通常ではあまり考えられない営業譲渡だといえる。

オッジインターナショナルは、ライセンス生産したオロビアンコの衣料品や、倒産したライカから譲渡されたカステルバジャックの衣料品を百貨店で展開しているから、百貨店がメインのアクアやダーバンとはそれなりに親和性がある。またどう見てもオロビアンコ、バジャックもオッサン向けなので、オッサン向けのアクアやダーバンとの顧客層も合致する。

だが、スーツが強いダーバン、スーツ・コートが強いアクアに対して、オッジインターの商材はカジュアル、カジュアルスポーツ一辺倒で、明らかにスーツビジネス、重衣料ビジネスには不慣れである。このミスマッチをどうするのか。下手をするとダーバンとアクアの美点を殺してしまう可能性もある。

また、受け皿となる企業の売り上げ規模の方がはるかに小さいから、ビジネススケールにおいてもミスマッチが発生しやすいと考えられる。なぜなら、オッジインターの現経営陣は100億円規模のブランドを差配したことがないからである。

 

そして最大の懸念は、小泉アパレルと傘下のオッジインターナショナルは、昭和時代そのままの古い体質の卸売りアパレルメーカーであることである。

SPAにも弱いし、ネット通販にも弱い。

もちろん、経営破綻したレナウンもそれらには弱かったが、当方の見たところ、レナウン以上にその部分には弱い。

SPAやネット通販に強ければ絶対に正しいとは思わないが、その部分が弱かったレナウンが破綻したわけだから、同じような体質の企業が受け継いだところで、V字回復はあり得ないと考えられる。

個人的には譲渡された5ブランドは規模を縮小しながら細々と続いていくことになるのではないかと思う。

 

レナウングループでは、肌着や靴下の子会社、レナウンインクスが靴下ストッキングの大手アツギに売却されたが、こちらは相乗効果が見込めるのではないかと思う。ちなみにレナウンインクスの売上高は2019年12月期で73億円弱もある。

 

あと、レナウンでは有力ブランドとしてアーノルドパーマーが残っているが、こちらの譲渡先は現時点では未定である。いずれどこかが名乗りを上げるのではないかと思うが、今回取りざたされていないほかのブランドについては廃止になる公算が極めて高いという。

歴史ある云々はわからないではないが、残されたブランドラインナップを見ると、廃止になるのも当然だとしか思えない。

 

 

そんなアクアスキュータムの折り畳み傘をどうぞ~

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 comment
  • イトウチュウ より: 2020/08/26(水) 1:27 PM

    これって棚ぼた?

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