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南充浩 オフィシャルブログ

根拠なき名門意識を持ち続けて消えるレナウン

2020年8月20日 企業研究 3

タイムリミットの8月17日が迫ってくる中、何の音沙汰もないレナウンはどうなるのか?と思っていたら、半年間の延期が決まった。

 

レナウン再生計画、半年延期 支援企業と交渉まとまらず

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081700861&g=eco

 

 民事再生法の適用を申請して経営破綻したアパレル大手レナウンの再生計画提出が半年延期されたことが17日、分かった。同日までに計画案を東京地裁に提出する予定だったが、スポンサー候補の企業との交渉がまとまらなかった。新たな期限は来年2月17日。

 

とのことだが、レナウンの一括売却はなく、ブランドの切り売りは既定路線である。

 

ブランドの売却などをめぐるスポンサー企業との交渉については、「今月中の合意を目指している」(レナウン関係者)という。

 

以前から指摘していたように、「今のレナウン」を一括で引き取りたいという企業はないだろう。

ブランドの切り売りしかない。

 

これについては日経新聞に興味深い記事が掲載された。

見限られた日米のアパレル名門

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO62729740X10C20A8EA1000?s=4

 

この記事によると、レナウンは民事再生法直後にワールドに一括買収を持ちかけて断られている。その次には、ルックホールディングスにも断られている。

ルックホールディングスはもともとレナウンルックというグループ会社だったが、本体のレナウンが古めかしい旧態依然ブランドしかなかったことと比べると、いつも人気ブランドを運営していた。

かつての傘下会社にも断られるのが「今のレナウン」である。

以前にも書いたが、「今のレナウン」で価値があるブランドは3つだと個人的には見ている。

1、アクアスキュータム

2、ダーバン

3、アーノルドパーマー

である。あとは不要だと思う。

 

新型コロナショックが無くても早晩レナウンは経営破綻していただろうし、一括での引き取りは無かっただろうと思う。

しかし、日経新聞の記事にも触れられているように、レナウンの幹部はそういう時流をまったく理解していなかったらしい。そこがいかにもレナウンらしいといえばレナウンらしいのだが(笑)。

 

北畑はスポンサーがすぐに見つかると楽観視していた。自分たちは100年超の歴史を誇る名門アパレルだ――。スポンサー候補には全てのブランドと雇用の維持が前提と伝えたが、その自信と世間の評価には大きな開きがあった。

 

と記事にはある。

自信を持つことは重要だが、根拠の伴わない過剰な自信は「過信」でしかなく、判断を誤らせる。

いくら「名門アパレル」といえども、今現在、「レナウンが無くなっては困る」と感じる消費者は一体どれほどいるのだろうか?

縫製工場や生地問屋には「レナウンが無くなったら困る」というところもあるだろう。特にレナウンとの取引比率が高いところにとっては。しかし、レナウンが無くなって困る消費者は皆無に近いだろう。

 

そして、個人的に驚くのが、中国企業に買われて10年以上が経過するのに、未だにこの根拠なき名門意識を持ち続けていたところである。

 

「自称名門アパレル」が10年間中国企業傘下においてまったく結果が出せなかったことをどう考えているのだろうか。もちろん、製造業出身の山東如意集団のハンドリングも甘かっただろうが、10年もやってて何の成果も出せないというのは、よほどのことである。

レナウン自身にも問題があったとしか言いようがない。

それでいて、未だに「名門だからスポンサーがすぐに見つかる」と考えられるところが、レナウンの経営破綻は必定だったといえる。

 

消費者からすれば、いくら歴史が長かろうが、いくらかつての名門企業だろうが、それが購買動機になることはない。レナウンという企業は「服を売ってナンボ」なわけで、寺社仏閣のように歴史を売っているわけではない。それなら、博物館とか資料館でも作って入場料を取ったらどうか。

「売れる服」を用意できなければ、いくら社の歴史が長かろうが、かつての名門企業だろうが、必要ない。淘汰され消えるのは当然である。

 

かつて20~40代の憧れだった紳士服「ダーバン」やインターメッツォ、シンプルライフの主要顧客は60代になった。ブランド力が落ちる中、強気な価格設定も変わらなかった。「今のレナウンを引き受けるのは難しいな」。こう周囲に漏らした上山は申し出を断った。

その後、社長の毛利憲司がルックホールディングスなど複数の会社に接触したが、いずれも成果は出なかった。あるレナウン幹部は「日本一だったというプライドが邪魔をし、ブランドを新陳代謝しなかったツケだ」と吐き出す。

とあるが、果たしてレナウンの今の顧客は「60代」なのだろうか?当方の身の周りの調査でいえば、60代でもレナウン顧客はほとんど見かけない。70代以上がメイン顧客ではないかと思う。

なるほど70代は若い世代に比べてカネを持っている比率は高いだろうが、70代になって、現役当時のようにドンドンと高い服を買う人がどれほどいるだろうか。高い服を買ってもそう長くは着られない可能性が高いから、あまり買わなくなるというのが、当方の周囲である。

70代以上の富裕層がカネを使うのは衣料品ではなく、医療品や食品、旅行、飲食店などがメインである。そして20年以内にその顧客層はこの世からいなくなる。

だから老人向けのアパレルブランドは大規模に成長しにくい。それは今後も同様だろう。だから、ブランドの顧客層の定期的な若返りは重要なのである。

8月17日に予定していた東京地裁への再生計画の提出は来年2月まで遅れる見通しだが「ブランド売却は8月末までにメドがつくだろう。ただ、レナウンの看板は消える」。毛利は苦渋の表情で周囲に話した。

とのことで、主要ないくつかのブランドは引き取られて、不要なブランドは廃止になることは変わらない。レナウンの看板が消えたところで、レナウン関係者と一部のオールドファン以外は特に大した感慨は抱かないだろう。

何度も繰り返すが、今年50歳の当方ですら、これまでレナウンの商品をほとんど買ったことがない。買ったことがないから親近感など持ち合わせていない。これが50歳以下ならもっと親近感はないだろう。看板が無くなったところで「へー、そうなんだ~」と言えばお終いである。

10年前に買収されても危機感を抱かなかった企業の末路としては当然だろう。

ちなみに、8月といえば、先に経営破綻したシティーヒルのタイムリミットも8月末だと言われている。こちらも何の進展の噂も聞かないから、難航しているのだろうと考えられる。

そんなレナウンの靴下をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/08/20(木) 11:23 AM

    【全てのブランドと雇用の維持が前提】
    そんなのが他社に出来るなら、最初から自分たちでどうにか出来たでしょうに、やっぱアホなトップだからダメになったんでしょうねぇ。
    うちの金属加工工場の二代目アホ社長も、もう10年も成果が出てないのにインチキコンサルの教えの「環境整備」とか「サンクスカード」とかだけ一生懸命やって、前期は過去最悪の4000万の大赤字になりました。いい加減、無意味な施策を止めろと社長に直接言ってみたけれど、社長は意味があると思いこんでるようで話になりません。コロナで下がった売り上げの穴埋めに何をするかと思ったら、役所の国勢調査かなんかの資料を手で仕分ける内職仕事を取ってきて、頭完全におかしいと思いましたwww
    本当に企業を経営するというのは才能必要だなぁ、と思う今日このごろですw

  • 細野 より: 2020/08/20(木) 2:32 PM

    ど素人の私の感想ですが、アーノルドパーマーは服屋として残るよりかは、セシルマクビーみたいにライセンス事業の方がうまくいくんじゃないかなって思います。服は自分の好きなブランドがあるからいらないけど、雑貨だったらデザインが良ければ買うかも。でも、本当に存続させなきゃいけないブランドって無いと思う。敢えて残すなら記事の3つのブランドなんだと思いますが、今売れやすい服のブランドではないと思う。コートやスーツは売れにくいし、カジュアルも同様ですよね。傷口を出来る限り広げないうちに、会社の精算が出来たら良いですね。

  • BOCONON より: 2020/08/21(金) 7:00 PM

    「今どきアーノルド・パーマーの傘マークの入ったポロシャツとか,冗談のネタでもなきゃあり得ないよなぁw」と思っていたらやっぱり小泉アパレルもシンプルライフを取ったようで。
    小泉グループというのは僕は知らなかったけど「あまり大きな企業グループとも思えないのに “若い人が入って来ない=未来のない” 世界へわざわざ入って来るとは無茶するなあ。何か魂胆があるのだろうか?」と僕は勘繰ってしまいます。
                 ↓
    https://www.fashionsnap.com/article/2020-08-21/renown-transfer/

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