
ワークマンのビジネスモデルは卸売りに近いのではないか?
2020年8月19日 企業研究 2
今回も前回に引き続きワークマンについてである。
当方はワークマンを評価していないわけではない。しかし、「アバタもエクボ」みたいな評価は業界や消費者をミスリードするばかりでなく、ワークマン自身をもミスリードしてしまう可能性が高いと思う。アバタはアバタだしエクボはエクボでしかない。
当方がワークマンを評価する点は
1、低価格で高機能な商品が多い
2、その中にはデイリーカジュアルに使える物「も」ある
の2点である。
当方は別段アウトドア愛好家でもないし、釣り人でもないし、作業員でもない。だから、デイリーカジュアルに使えるかどうかだけが評価点になる。
実際に何度か地方ロードサイドのワークマン店舗に足を運んでみたが、デイリーカジュアルに使えそうなデザインの商品(服、靴)は体感的には構成比で2~3割というところだろうか。
あとの7割強はやっぱり「作業服」でしかない。
しかし、本来は作業員・職人のための店だから、それは正しい商品構成だといえる。
まず、当方が強く疑問を感じるのが、「ワークマンだけでデイリーカジュアルファッションが成り立つ」かのような論調である。
個人的には不可能だと断じる。やっぱり7割強の商品は作業服然としているし、スポーツには使えてもデイリーカジュアルファッションとしては使えない。ジョギング中か作業終了後ですか?みたいな感じにしかならない。
一方、当方は防水透湿ジャケットのイージスシリーズの性能と安さは評価している。デザインもデイリーに使いやすい品番も多い。
次にビジネスモデルとしてのワークマンだが、作業服チェーン店としてのビジネスモデルとしては評価できるが、デイリーカジュアル、カジュアルファッションブランドとしてはかなり疑問である。
多くのカジュアルブランドは、小売店への卸売りがメインか、直営店での販売がメインとなっている。しかし、ワークマンの場合、ユニクロ越えの店舗数もその96%以上がフランチャイズ形式である。(正確には96・08%)
これを「大量出店」と評せるのかどうかである。
通常「出店」といえば、業界では直営店出店のことを思い浮かべる。当方はそうである。
しかし、ワークマン店舗のほとんどがフランチャイズ店で、経営はフランチャイズオーナーに委ねられている。大量出店と言うよりは大量にフランチャイズ加盟店を増やしたというのが実情だろう。
しかもワークマンは毎年確実に直営店を減らし続けている。
大量出店どころか、この1点だけを見れば、続々閉店である。
例えば2020年3月期連結では、直営店は69店舗減少で34店舗となったと明記されている。
フランチャイズ店を増やすのは本社にとってメリットがある。
メリットとしては
1、店舗の人件費が本社にはかからない(店舗オーナーがスタッフの人件費を支払う)
2、フランチャイズ店に納品してしまえば本社は在庫リスクが原則的には無くなる(在庫はフランチャイズ店が買い取りになるから)
の二つが大きい。
この二つはどのアパレル企業も苦労しているが、そこから解放されるわけである。
しかし、それほどメリットがあるならどうして各ブランドがフランチャイズを増やさないのかということになる。増やさないには増やさないなりの理由が存在すると考えるべきで、この直営店を減らし続けてフランチャイズを増やし続けるという手法が未来永劫効果が出るとは到底思えない。
ちなみに、ワークマンは昔からフランチャイズメインで経営しており、2007年3月期ではフランチャイズ店463店舗、直営店125店舗(前年より25店舗減)だった。フランチャイズ比率は78・7%である。
恐らく、低価格で買い足し頻度がさほど高くない作業服という分野においては、人件費と在庫リスクを抱える直営店形式よりもフランチャイズ店の方が本社にとっては効果が高かったのではないかと考えられる。
しかし、デイリーカジュアルやアウトドアカジュアルに進出し、その分野を伸ばそうとしているワークマンがフランチャイズ体制をさらに強化することは正しいのかどうか極めて疑問である。
全国に860店舗以上あり(ほとんどが地方ロードサイド)、一見して小売りチェーン店のように見えるワークマンだが、本社は極めて卸売りビジネスに近いモデルで動いていると考えられる。
売上の内訳見たら明白なんだけど、「加盟店商品供給売上高」が突出して高い。やはり納品したら売上立ってる。小売のようなイメージあるけど、ワークマンのビジネスモデルは卸に近いな。
— 深地雅也 (@fukaji38) August 18, 2020
と深地雅也さんが指摘している。
デイリーカジュアル、カジュアルファッションの分野において卸売りメーカーがどんどんと減少し、残った卸売りメーカーも直営店出店をある程度しているのは、従来型の卸売りのサイクルでは消費者のニーズに対応できなくなったためである。
以前なら、卸売りメーカーによる3カ月ごととか半年ごとの新商品提案で対応できたが、それではニーズと合わなくなってきたから、自らが直営店を出店し消費者ニーズを探りつつ卸売り+直営小売というハイブリッド化やSPAへの移行を進めたが、ワークマンはこの分野に進出するにもかかわらず、逆進しているといえる。
ワークマンの商品開発の特徴として「数年はモデルチェンジしない」というものがあったが、それが通用したのは
1、トレンド変化のサイクルが長い作業服分野だったため(流行り廃りが無いわけではない。無いというのは嘘)
2、地方ロードサイドのフランチャイズ店への卸売りがメインだったため
の二つの理由があると考えられる。
しかし、今後、ファッションユースの「ワークマンプラス」を増やすのであれば、従来型ワークマンのマーチャンダイジングのままではいずれは対応できなくなるだろう。
どこぞのアホみたいに52週MDなんていう小刻み過ぎるマーチャンダイジングは必要ないとしても、もう少し短いサイクルでのモデルチェンジが必要になるだろう。(モデルチェンジする物としない物の見極めできる力も重要)
現在、アパレル関係では株式の時価総額はワークマンがファーストリテイリングに次いで2位であり、投資家がいかに期待しているのかがわかるが、正直なところ、投資家の期待というのはあまりあてにならないと思っている。特にアパレル分野に関しては。かつて、ZOZOがPBを開発を発表した時、投資家がいかに熱狂して時価総額が上がったか、である。そしてその結果はどうだったか、である。
個人的には、ワークマンは高機能低価格を武器として、当面は売上高を伸ばし続けるとは思うが、ファッション分野への進出と売り上げ規模拡大に対して現状の「地方ロードサイド向け作業服フランチャイズチェーン店体制」が効力を発揮し続けるとはまったく思えないし、ワークマンが革新的で斬新なアパレルビジネスを展開しているともまったく思えない。
そんなワークマンの本をどうぞ~
comment
-
-
ハマオ より: 2020/08/20(木) 10:20 AM
ファッション性やオシャレ感は初期のユニクロよりも数段下のレベルです。
テレビで取り上げていた3人の匠?
高機能に関しては極めているかもしれませんが彼らからファッションセンスは全く感じられませんね。
数年後にはしまむら位の評価に落ち着くのではないでしょうか
ちょっと前に、いきなりステーキが出店しまくって増収増益(ただし既存店は減収)で持て囃されたのにも通じる気がしますね。
何年か後にはFCオーナーから訴訟起こされてるかも?w