MENU

南充浩 オフィシャルブログ

D2Cの曖昧さ

2020年8月17日 トレンド 0

アパレル業界はつくづく流行り物キーワードに弱い。

もともとアパレルというか、若い時分にファッションに興味を持つ人はミーハーであることが多い。だからそれは職業人となっても三つ子の魂百までなのだろうと思う。

しかも、アパレル業界は20年来の衣料品不況にあるから、溺れる者は藁をもつかむみたいな感じで、その時々の流行り物キーワードに飛びついてしまう。しかもそのキーワードへの理解が浅いから結局は効果が得られないままに、コンサルタントや専門業者にカネを巻き上げられてお終いということが珍しくない。

 

少し前なら「EC化率」「オムニチャネル」「ネット通販」だっただろうか。

今ならD2Cだろう。

このD2Cというのがあまり意味がわからない。

 

当方の理解だと

・小規模のブランドが

・オリジナル商品を

・ネット通販メインに直販する

のがD2Cである。

 

何せダイレクト トゥ コンシューマーなのだから。

 

しかし、そうではない場合も数多く見受けられるようになってきた。大手の新ブランドだったり、韓国や中国で買い付けてきた物をネットで売ったり、とそういうものも平気でD2Cを名乗っている。

業界メディアの姿勢も悪くって、D2Cと名乗ればすぐに報道してしまう。この姿勢は害悪でしかない。

 

ネット通販専用SPAとかネット通販専用オリジナル品とかとどう違うのか、さっぱり当方にはわからない。韓国仕入れや中国仕入れ品なんてダイレクトでもなんでもなく、あんたらは単なる仕入れ業者・中間業者でしかない。

 

さて、先日、某D2C業者がこんな書き込みをしていたが、はっきり言って意味不明である。

 

「D2CはSPAと何が違うの?」とみんな口をそろえて言うんだけど、産業構造のことばかり議論されて顧客への付加価値について議論しないのがイノベーションを生まない日本らしいよな。SPAという言葉も各社曖昧なんです結局は。

 

というものだが、これを読んで意味が分かる人がいるだろうか。当方はさっぱりわからない。

まず、第一に「D2Cの顧客への付加価値」とは一体何なのか。この発言主のD2Cブランドが顧客に高い付加価値を与えているようには、その実店舗を見ている限りはまったく感じない。

逆にSPAは付加価値を与えていないのか?何を根拠に言っているのだろうか。

 

先日、ユニクロが人気歌手の米津玄師さんとのコラボTシャツを発売した。たしか、8月14日の金曜日のことではなかったかと思うが、8月14日は早朝からユニクロの通販サイトがほとんどつながらなかった。サーバーが同じなのか、ジーユーもつながりにくかった。

毎週、火曜日と金曜日は値下がり品をチェックするために、ユニクロとジーユーの通販サイトをチェックするのだがそれができなかったというわけである。

報道によると、早朝から米津Tシャツを求める人が各店で長蛇の列を作っていたとのことで、凄まじい人気と売れ行きである。

例えば、ユニクロというSPAのこのコラボTは付加価値を与えていないのだろうか?与えているからこそ、長蛇の列ができて完売状態になったのではないか。

 

そして、SPAが曖昧というが、D2Cこそ曖昧が服を着て歩いているレベルである。

製造小売りと訳されるSPAはたしかに曖昧な部分がある。

一口にSPAと言っても何種類かがある。

1、自社工場で生産を手掛けているもの

2、自社工場は持たないが協力工場や下請け工場の現場まで足を運んで調整するもの

3、ODMに丸投げするもの

4、ODM業者から持ち込まれた製品をチョイスするもの

という具合に少なくとも4種類ある。

 

1はZARAやハニーズだろう。

2はユニクロである。

3と4はそこら辺に溢れている。

 

しかし、D2Cはどうか。SPA以上に曖昧な業者が跳梁跋扈している。

1~4まですべてあるし、ひどいのは

 

5、中国広州市場や韓国東大門市場で買い付けてきた商品を売る

 

というのも決して珍しくない。

5なんてD2Cでもなんでもなく、単に仕入れ型ネットショップでしかない。

これで「SPAは曖昧」なんてどの口が言っているのかと思ってしまう。

 

 

さて、アパレル業界のミーハーさが悪いのか、D2Cと名乗れば何でも報道してしまう業界メディアが悪いのか、その辺はちょっとわからないが、売上高数百億円とか1000億円以上の大手アパレルがD2Cを開始する意味はあまりないと思う。

それについて論じているのはこれである。

大企業がD2Cをやらなくていい理由

 

確かに2000億円の企業が今更5億円がMAXのブランドを手掛けたところで、手間が増えるだけで旨味は少ない。これに照らし合わせると、図体のでかいアパレル大手が今更D2Cに手を付ける意味は無いと考えられる。

ちなみに筆者のよく知る、うまく採算が取れているD2Cブランドの年商規模は大体が5000万〜1億円程度。それで100億作ろうとしても途方もない手間になる。

 

とある。

 

大手が手を染めても旨味はほとんどない。「あの企業、何となく今風だよね」という評判を獲得する以外は。

 

アメリカである程度成長しているから、日本でも行けるかも。日本はアメリカの何十年か後を追いかけているから

 

という論調を耳にすることがあるが、2010年以降、その構図は成り立たなくなってきているように感じる。例えばキャッシュレスである。ナンタラペイが乱立したがどれもこれも不採算である。どうしてか。すでに日本人の多くはクレジットカードと、スイカやイコカなどの鉄道系の物の2つを使っている。3つに増えるとややこしいだけだから、使わないのである。ナンタラペイが一時期伸びたのは、6月末までのキャッシュバックや割引、ポイント還元が目的だっただけで、その期間が過ぎればそんなめんどくさいものは誰も使わない。今後はナンタラペイの使用者はさらに減るだろう。

 

まあ、そんなこんなでD2Cはアパレル不況をたちどころに解決してくれる「魔法の杖」ではないというわけである。

 

オールユアーズの商品をどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ