MENU

南充浩 オフィシャルブログ

アパレル業界における理想のEC化率はブランドごとによって異なる

2020年8月5日 ネット通販 0

長い梅雨が明けると途端に猛暑になった。この猛暑の時期が年間でもっとも嫌いである。

当方は暑い空気が嫌いである。ちょっとひんやりするくらいの方が快適なので、自宅にいる際、冷房はほぼ点けっぱなしでだいたい24~26度設定である。

意味のない28度設定にはしない。そんな温度ではとてもではないが耐えきれない。

 

この時期、日中に買い物に出歩くのが苦痛である。

そんなときに自宅まで配送してくれるネット通販はやはり便利だと痛感する。

新型コロナによって、店舗休業を余儀なくされ、外出も自粛したため、改めてネット通販が注目されることになった。注目というより、そこしか売り場、買い場ともになくなった結果である。

必要に迫られてと言う方が正しいような気もする。

これに対して、賛否があるのは仕方がない。どんな事象でも賛否両論がある。とくに老人層に対しては賛否両論あるように感じる。

当方は「老人だって必要に迫られればスマホやパソコンの操作が覚えられるのだから、どんどんやらせればいい」と思っているが、中には「老人に不慣れな操作を押し付けて」と言う方もおられるが、そこまで過保護にする必要があるのかと思ってしまう。

 

今春、各社のEC化率は高まった。

たしかにネット通販も慣れれば便利だが、メディアやアホなコンサル、IT系がはやし立てるように「EC化率が高ければ高いほど優秀」とはまったく思わない。というか、彼らは何を根拠にそう主張しているのだろうか。

ネットで売ろうが実店舗で売ろうが、儲かっている会社やブランドが正解でしかない。

EC化率がめちゃくちゃ高くても儲けが少ないとか赤字なら、間違っているのである。

 

にもかかわらず、業界には「EC化率50%を目指しましょう」が口癖となっているペテンのような人々が跳梁跋扈している。

会計において、自己資本比率は10%以上あるのが理想とされているが、EC化率は別にそのような指標ではない。一律に「〇%以上は合格、〇%未満は不合格」という性質のものではない。

何をもって「50%」などと言っているのだろうか。自分の仕事が欲しいだけなのではないのか?

ネット通販に適したブランドとそうでないブランドがある。また売りやすいジャンル、売れにくいジャンル、価格帯などもある。

さらにいえば、社内にそういう専門的知見のある人がいる会社と、そうでない会社もある。

モールに出店するのか、自社サイトを中心にやるのかという違いもある。

これらのことを総合的に考えると、「目標となるEC化率」はその会社やそのブランドごとに異なるとしか言いようがない。

 

一般的にネット通販はコストが少ないと言われているが、恐らくは、当方も含めたド素人が想像するよりは多額のコストが必要となっているのが実態ではないかと思う。

例えば、マサ佐藤氏のこのブログである。

画面ばかり見てないで現実を見よ!

例えば、ある月の在庫原価予算が10億円だったします。そして、その月の実績が10億5千万だったとすると?パソコン上では在庫金額と在庫予算比105%と記載されるだけです。

これが現場に行かずロジックに頼るだけの人であれば、「たかが5%くらいいいや!」という感覚に陥る筈です。

しかし、実際の物流倉庫では何が起こっているのか?というと。

仮にこの組織の値入率が60%。平均元売価が7,000円だったとすると??

→5000万(在庫オーバー分)÷(1-60%)=1億2,500万円の元売価在庫オーバー。
→1億2,500万円÷7000円(元売価平均)≒18000点

ということになり、当初の在庫予算の予定より約18000点の在庫点数が増えたということになります。

これを1M20Cのシングルラックに30本かけするとすると?

→約18000点÷30≒600本

600本のシングルラック分を倉庫に余計に置かねばならない可能性があるということです。

 

とのことである。

600本のシングルラックといえばかなりの量だし、これを捌くには相当の人手が必要になる。どんな分野でもそうだが、自動化が進んではいるものの、最後の部分は人間でないと仕上がらない。自分の関わる分野については多くの人はそれを想像できるが、他分野になると想像ができない。

倉庫だって自律型荷物運びロボットや、自律型整理専用ロボットが存在するわけではない。

また、受注が増えれば増えるほど、それだけ多くの人手と広い倉庫が必要となるため、ネット通販だってド素人が思うほど粗利益は高くないといえる。

モールに出店すればだいたい20~35%くらいの販売手数料が取られる。

 

自社ECを強化すればマサ佐藤氏が指摘したような倉庫の問題が発生し、その分だけ利益を削ることになる。

 

自社EC強化は重要な案件だが、一概に儲かるばかりではない。

多分、時効だと思うので(当方の勝手な判断)書くが、D2Cブランドの代表格ともいえるオールユアーズだが、赤字になったことがある。

理由はさまざまあるのだろうが、ちゃんと中の人から聞いたのだが、その理由の一つとして「自社ECに集中したため、倉庫拡張の問題や人手を増やしすぎたことがあった」とのことだった。

スタート時はAmazonにも出品していたが、ちょうどそのころ、Amazonへの出品がなくなり自社サイトのみでの販売だけに集中していた。

売れれば、利益率は当然そちらの方が高いのだが、小資本のオールユアーズという会社が、倉庫の拡張やそれに伴って人員を増やすと、赤字に陥ってしまったわけである。

次の年からオールユアーズはまたAmazonへの出品を再開している。

 

このように、華やかに見えるECに強いブランドでさえ、赤字に陥ることもあるということで、一概に「EC化率を高めたら勝ち組」とか「とりあえずEC化率50%を目指そう」とかそういう単純な問題ではないということがわかるだろう。

くれぐれもそのような者共に引っかかることがないようにご注意していただきたいと思う。

 

 

そんなオールユアーズの商品をAmazonでどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ